アイデンティティ管理サービスを提供するOktaは、業務アプリの利用動向を調査する年次調査「Businesses at Work 2023」の結果を発表した。
本調査は、Oktaの17,000社以上のユーザー企業が活用する、7,400以上のアプリケーションと連携する「Okta Integration Network」 (OIN)の匿名化されたデータに基づいたもので、2021年11月1日から2022年10月31日までのデータを分析。2015年から毎年実施しており、今回が9回目となる。
成長分野はコラボレーション、セキュリティなど5分野
Oktaの顧客企業は様々なアプリを利用しており、今回の調査で昨年同様に1社平均89個のアプリを使用、従業員2,000人以上の大規模組織では、前年の平均195個から8%増の平均211個のアプリを利用していることが分かった。
色のついた各アプリの円の大きさは、顧客数の規模を表す。右上の第一象限の中にあるアプリは、顧客数とユニークユーザー数の両面での成長率が平均以上の「成長リーダー」。左上の第二象限は、ユニークユーザー数で平均以上の成長率があったアプリ。右下の第三象限は、顧客数で平均以上の成長率があったアプリ。左下の第四象限は、顧客数とユニークユーザー数の両面での成長率が平均以下のアプリとなる。
今回、右上の第一象限に入った「成長リーダー」は、15個のアプリ。様々な種類のアプリがあり、大きく分けて以下の5つのカテゴリーに分類される。
- コラボレーションアプリ(Figma、Miro、Asana)
- セキュリティアプリ(1Password、LastPass、Zscaler、KnowBe4、Cisco Umbrella)
- 開発者アプリ(Sentry、Datadog、GitHub、PagerDuty)
- セールス&マーケティングアプリ(HubSpot、Freshworks)
- ビジネス購買アプリ(Amazon Business)
顧客数の規模によるランキングに注目すると、顧客数でトップのアプリは依然としてMicrosoft 365で、その後をAWS、Google Workspace、Salesforce、Zoom、Atlassian Product Suite、Slack、DocuSign、KnowBe4が続く。1位から9位までのランキングは昨年と変わらないが、GitHubが昨年より2つポジションを上げて、10位になった。また、Jamf Proが今回初めて15位にランクイン。
また、今回の調査で初めて、日本国内独自の人気業務アプリのマトリクスが発表された。 マトリクス表の右上の第一象限に入った国内の「成長リーダー」アプリは、Salesforce、Google Workspace、Microsoft 365。突出しているのはSalesforceで、ユニークユーザー数で前年比133%の伸びを示している。
AWSはユニークユーザー数で前年比80%の伸びを記録。Boxの顧客数とユニークユーザー数による前年比成長率は、SlackやZoomよりも高い。
顧客数の規模では、Google Workspaceがトップで、その後をMicrosoft 365、AWS、Slack、Box、Salesforce、Zoomが続く。
最も急成長した業務アプリはKandji
今回、最も急成長した業務アプリ(顧客数ベース)のトップ10には、セキュリティアプリ、コミュニケーションアプリ、人事アプリ、企業旅行アプリ、開発者アプリ、コラボレーションアプリなど、多様なアプリがランクイン。
最も急成長したアプリとなったのは、Kandjiで、顧客数の成長率が前年比172%増。KanjiはAppleのモバイルデバイス管理アプリで、IT管理者が繰り返し行う作業を自動化するもの。Kandjiの急成長は、ITチームがより少ない労力でより多くのことを行おうとする中で、自動化が強く求められていることを示唆している。
前回急成長した業務アプリのトップ10のうち3個のアプリが、今回もランクインした。昨年1位だったNotionが今回は前年比113%増で第4位。昨年2位だったTripActionsは名前をNavanに変更し、前年比100%増で第6位になった。昨年4位だったFigmaは、前年比81%増で第10位にランクイン。
進むアプリの複数導入、Microsoft 365をZoomやSlackが補完
毎年、OktaのMicrosoft 365が、Microsoft 365スイートとは別にどのようなベストオブブリードアプリ(例えば、Zoom、Slackなど)を採用しているのか調査している。今回は、OktaのMicrosoftのユーザー企業の36%が4つ以上のベストオブブリードアプリを使用していることが分かった(5年前の20%から上昇)。
OktaのMicrosoft 365のユーザー企業の48%(昨年は45%)がZoomを利用し、36%(昨年は33%)がSlackを利用していたことが判明した。さらに、OktaのMicrosoft 365のユーザー企業の42%(昨年は38%)は、Google Workspaceを利用した。
多要素認証(MFA)ではWebAuthnが伸びる
ソーシャルエンジニアリングとクレデンシャルフィッシングの攻撃を阻止するためにMFAの重要性が認識されるようになった。しかし、単純にMFAを導入すれば攻撃を阻止できるのではなく、フィッシング耐性などに強いMFA要素を導入することが重要。
今回の調査結果を見ると、Oktaのユーザー企業は、セキュリティ質問のような安全性の低いMFA要素に頼ることが少なくなっている。
WebAuthnを含む、より安全性が高いMFA要素であるセキュリティキーや生体認証の利用は、顧客数で前年比46%増、ユニークユーザー数で前年比211%増と、急速に増加している。
安全性の高い所有ベースの要素であるOkta Verifyは、現在88%の企業に導入されており、2年前と比較して6ポイント増加してる。
しかし、安全性の低いMFA要素である電子メールの利用も増加している。パンデミック以前は、MFA要素のために電子メールを使用している企業は2%未満だったが、現在では12%に上昇し、顧客数で前年比58%増となった。
AWS&GCPの両利用は増加、AWS&Azureの両利用は減少
マルチクラウドの動向も進んでおり、「成長リーダー」として、Terraform Cloud、 MongoDB、 Atlassianなどがある。
- Terraform Cloudは、顧客数で前年比93%増、ユニークユーザー数で192%増
- MongoDB Atlasは、顧客数で前年比68%増、ユニークユーザー数で前年比125%増
- GCPは顧客数で前年比40%増、ユニークユーザー数で前年比60%増
- 顧客数ではAWSが引き続きトップ、顧客数は前年比27%増、ユニークユーザー数は前年比50%増
Oktaのユーザー企業の39%は現在OIN(Okta Integration Network)を通じてクラウドプラットフォームを導入、そのうち14%は2つ以上のクラウドプラットフォームを導入している。
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AWSとGCPの両方を導入しているお客様は、2年前の2.6%から3.0%に増加
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Microsoft AzureとAWSは、2年前の2.4%から現在では2.2%に減少
開発者アプリでは、Postman、LaunchDarkly、Sentry
- APIテストツールのPostmanは、顧客数で前年比78%増、ユニークユーザー数で168%増
- 機能管理ツールのLaunchDarklyは、顧客数で前年比74%増、ユニークユーザー数で97%増
- モニタリングツールのSentryは、顧客数で前年同期比53%増、ユニークユーザー数で128%増