デロイト トーマツ グループ(デロイト トーマツ)は、日本の上場企業を対象とした「企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査」2022年版について、調査結果を発表した。
調査結果について、同社は以下のように述べている。
国内で優先的に対処すべきリスクは1位「人材不足」、2位「原材料・原油価格の高騰」、3位「異常気象・自然災害」
2022年は前回2位の「人材流失、人材獲得の困難による人材不足」が1位に順位を上げており、昨年に引き続き人材流動性の高まりを受けて、多くの日本企業が対応を急務としている意識が読み取れる(図表1)。特にサービス業では、コロナ禍からの需要回復が見込まれることから、前回29.8%であったのに対し、今回は60.7%と急増した。
また、「原材料ならびに原油価格の高騰」が前回5位から2位へ上昇し、半導体、樹脂、鉄鋼などの深刻な材料不足や、世界経済の回復にともなう原油の需要増や一部産油国の生産停滞もあり、COVID-19に加えて政治情勢の影響がサプライチェーンにも波及していることが見て取れる。特に製造業では前々回が8.5%、前回が30.0%であるのに対し、今回は44.5%と急激に上昇している。
一方で、前回1位の「異常気象、大規模な自然災害」は3位となり、前回の27.3%から今回19.7%と減少しているものの、災害リスクに対する企業の意識が引き続き高いことがわかった。
海外で優先的に対処すべきリスクは1位「中国・ロシアにおける政治情勢」、2位「グループガバナンスの不全」
昨今の不安定な国際情勢を踏まえた地政学リスクの高まりを背景として、「中国・ロシアにおけるテロ、政治情勢」が海外で1位となった(図表2)。特に情報・通信業においては、前回が0%であったのに対し、今回は25.1%となっており、地政学リスクの高まりは現実空間のみならず仮想空間におけるリスクにも大きな影響をもたらしていることがわかる。
日本国内で企業が経験したクライシスは自然災害関連、経済環境関連のクライシスが引き続き高い割合を示す
国内本社が2021年から2022年にかけて経験したクライシスの種類を確認したところ、「自然災害関連」が2021年は16.0%、2022年は14.6%、「経済環境関連」が2021年は8.5%、2022年は14.6%と、ともに最多となった(図表3)。各種経済活動の停滞や原材料、原油価格の高騰を受け、経済環境関連のクライシスに対する回答割合も引き続き高い割合を示している。特に小売・流通業においては、2021年が8.7%であったのに対し、2022年が21.7%となり、COVID-19による消費の巣ごもり化を受け、急速に拡大、変化する配送需要や、加熱する価格競争への対応についての危機感が現れたものと考えられるという。
引き続きリモートワークの推進が急務である一方で、原材料の調達先の分散を優先する動きも
優先して着手が必要と思われる対策については「リモートワークの推進」(38.3%)が引き続き1位となり、次いで「危機管理体制強化」(29.0%)、「ペーパーレス化の推進」(24.2%)、「業務プロセスの標準化」(21.0%)となった(図表4)。また、前回9.0%であった「原材料の調達先の分散」が14.6%と増加しており、原材料の調達先の分散といったサプライチェーンに関する対策が挙げられた。
デロイト トーマツ グループ パートナー 松本拓也氏の見解
昨今の不安定な国際情勢を踏まえ、地政学リスクへの対応に課題があると回答した企業が多く見受けられた。市況・為替・サプライチェーンなどへの影響など、地政学リスクが自社の事業にどのような影響を及ぼすのかを具体的に見極めたいというニーズが数多く寄せられているという。
また、国内・海外ともにDXおよびサイバーセキュリティに対応するデジタル人材やアフターコロナの需要増を見据えた人材の獲得競争が激化しており、賃上げに踏み切る動きもある。不確実な経営環境が続く中で、とるべきリスクテイクを検討・実行するなど、リスクマネジメント・クライシスマネジメントのあり方が問われているとしている。
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