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生成系AIがバックオフィス業務に与えるインパクト──ウイングアーク1st CFO 藤本泰輔氏の視点

テクノロジーを活用するマインドがなければ競争に負ける

 生成系AI(Generative AI)が急速に浸透し、企業ITへの導入が加速している。AIを活用したソリューションのなかでも、注目を集める生成系AIはビジネスにどれだけのインパクトを与えるのだろうか。特に変革が叫ばれ続けているバックオフィス業務におけるITのあり方について、ウイングアーク1st株式会社 取締役 執行役員CFO 管理本部長の藤本泰輔氏に聞いた。

法改正とDXで要請高まる「バックオフィス」のレベルアップ

──これまで財務からITまでバックオフィスに係る幅広い分野に携わられたご経験から、「DX」におけるバックオフィスに係る課題をどのように捉えていますか。

 バックオフィスと呼ばれる管理部門は、常に現在の業務を円滑に進めることに注力しています。ビジネスでは新しいことを始め、次のステップへと進むことが必要となる場面が多く出てきますが、何かシステムなどを変えて不具合が発生すると管理部門の責任が問われる可能性もあるでしょう。

 こうした事情から、管理部門はしばしば現状維持に傾倒してしまう嫌いがあります。しかし、最近では法改正や制度変更など、避けては通れない変化も生じてきているため、管理部門も積極的に対応せざるを得ない状況が生まれていますよね。

 つまり、「バックオフィスDX」の推進が求められており、これにより経営のスピードや質の向上、顧客への価値提供などに貢献できる余地も生まれていると思います。最近では、生成AIのような新しいテクノロジーをどう取り込んでいくかも課題になっています。

──どのような形で「バックオフィスDX」が経営へ貢献できるのでしょうか。

 たとえば、お客様との契約や取り引きなどに関わるやり取りを短縮できれば、ビジネスをより前進させることができます。契約書ならばリーガルテックと呼ばれるようなサービスを使うことで法務や営業に係る工数を削減でき、契約締結までの時間を大きく短縮できるでしょう。

 最近は改正電子帳簿保存法やデジタルインボイスが話題となっていますが、当社の経理部門では、2013年から電子帳簿保存法への対応を進めています。これにより、お客様と営業担当の間で発生する見積書や発注書のペーパーレス化にも取り組め、コロナ禍でも問題なくリモートワークに対応できました。今では、管理部門の担当者がオフィスに出社することは少なく、まさにバックオフィスDXを進めたからこその成果だと感じています。とはいえ、真の意味での「DX」には至っていないため、より一層のレベルアップが必要だと感じています。

──コロナ禍でのビジネススタイルの変化が、バックオフィスにも大きな影響を与えていますね。

 そうですね、当初は非接触が求められていたこともあり、特にペーパレスが優先されていましたが、5類感染症に移行してからは優先度が変わっています。今はハイブリッドワーク環境下での効率化にあわせて、コミュニケーションの質が問われるようになってきました。

ウイングアーク1st 取締役 執行役員CFO 管理本部長 藤本泰輔氏
ウイングアーク1st 取締役 執行役員CFO 管理本部長 藤本泰輔氏

 また、経営者は2023年10月からのインボイス制度導入や、2024年から電子帳簿保存法の猶予措置がなくなることに意識を向けています。日本政府が推進していることもあり、本格的なデジタル化に舵を切らざるを得ないと感じているのでしょう。とはいえ、さきほど述べたように変革を進めたいトップと現状を維持したい現場の間には、“意識のギャップ”が存在します。組織全体としてビジネスのスピードを高めていく、この機運をどのように高めることができるかが管理部門においても課題となっています。

投資効果の最大化「データ活用」の重要性が一層高まる

──組織横断での取り組みがDX推進の鍵と言われますが、貴社におけるバックオフィスの役割はいかがでしょうか。

 当社では、DX推進部門とITインフラ部門が主体となってDXに取り組んでいます。特に帳票やBIといったサービスを提供していることもあり、デジタル技術を成長のドライバーとしようという文化が醸成されていることも特長ですね。社内で自社製品を使うことでプロダクト自体を改善できる上に、提案の幅も広がるというメリットがあります。また、営業などの業務部門が積極的にSaaSなどを取り入れているため、管理部門ではそれらを精査して適切に運用管理することでガバナンスを効かせる役割を担っています。しっかりと統制できなければ部分最適に陥ってしまうからです。

 たとえば、ビジネスチャットのSaaSはいくつもありますが、部署ごとに別々のものを導入してしまうと部署を横断した取り組みにおいては、どこから情報を入手すべきかわからなくなってしまいますよね。このような問題はどの企業でも起きていると思います。この観点を広げて考えてみると、基幹システムから末端の業務まで切れ目なく、一気通貫できる仕組みを構築していくことが必要でしょう。

──効率化のためSaaSを導入していたらコストが膨らんでしまった……という声も聞きます。

 CFOとしては、投資効果を最大にすることが責務です。つまり、限られた経営資源を最適配分し、最大のリターンを得なければなりません。その上でSaaSを使うメリットを考えると、自社での運用管理の負担を下げられることが挙げられるでしょう。一方で従量課金制のサービスを利用するとき、コストの増大に注意を払わなければなりません。

 ITシステムへの投資は、業務の効率化に加え、データ生成やデータ連携による“経営上の優位性”を獲得することが目的です。当社も2023年9月には、新たな基幹システムの稼働を予定しており、売り上げ向上やコスト削減などにつながると期待しています。

 たとえば、これまで販売とマーケティングがシステム上連携できておらず、顧客情報をうまく活用できませんでしたが、これらを統合して連携させていきます。また、請求書など紙の書類に関する情報入力には、AI-OCRなどを使って効率化しつつ、そのデータを活かせるような運用に取り組んでいる最中です。このとき管理部門は、業務部門と顧客間の受発注、レポート業務を効率化させることで、よりスピード感のある経営へと寄与できるでしょう。

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生成AIなど最新テクノロジーで“高度な業務”にシフトし、競争力を確保する

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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