2023年7月6日、日本オラクルは新年度の事業戦略を発表した。
はじめに、オラクル・コーポレーションの2023年度の事業概要を振り返ると、日本円にして約7兆円を売り上げるなどクラウド事業がけん引する結果が表れている。グローバルIT企業の株式時価総額と株価上昇率を並べてみても25位ほどに位置するとして、日本オラクル取締役 執行役 社長 三澤智光氏は「日本オラクルでも好調な決算となっており、ソフトウェアライセンス事業の伸長、クラウド事業が拡大が貢献した」と説明した。
ミッションクリティカルシステムのモダナイズなどにおける「OCI(Oracle Cloud Infrastructure)」導入はもちろん、ガバメントクラウド移行支援における地方自治体向けのISV、地場パートナー企業、公共団体という3つのステークホルダーへの働きかけも功を奏したと振り返る。また、サステナビリティ経営への支援策、エコシステムの拡充にも取り組んだとして「今年も引き続き注力したい」とした。
「就任以降、レガシーモダナイゼーション、ミッションクリティカルシステムの近代化が重要だと唱え続けてきた。塩漬けにしておくことは明らかに間違いであり、新しい時代においてヒト・モノ・カネの重要データを活用できる状態にしておくことが日本経済の伸長において必須である。また、セキュリティリスクが高まる中で定期的なパッチ適用がしやすい環境を整えることも重要だ。加えて、エンタープライズのアプリケーションを劇的に変化させていくキードライバーは『AI』であり、5年~7年でアップグレードするような従来のタイムスパンでは追随できないため、進化を享受し続けられるシステムを提供していきたい」(三澤氏)
続いて、同社における2024年度の重点施策として、1つ目に「日本のためのクラウドを提供」と挙げた。日本ユーザーのための専用クラウド提供し、ガバメントクラウドへのコミットメントなど従来施策の拡充を推進するという。
競合クラウドベンダーができなかったことを実現していくことが同社のコンセプトの一つであるとして、Dedicated Regionでの提供をはじめ、Alloyでは「Managed by Japan」を実現できるといい「シェアされるクラウドではなく、専用のクラウドを提供していく」と三澤氏。既に野村総合研究所(NRI)では、リテール証券会社向けバックオフィスシステム「THE STAR」が稼働している。また、ガバメントクラウドについては、本年度後半から本格的推進が始まると言及した。
さらに大規模なミッションクリティカルシステムの近代化について、そのワークロードを厳格に稼働できる点がオラクルの強みだと説明。セキュリティについても埋め込まれている(Embedded)ことが当たり前だという認識で構築しているとして、他社クラウドベンダーと比較してもTCO削減に貢献できる価格体系だと自信をみせる。
「すべてのサービスをパブリッククラウド上から提供し、『Dedicated Region』や『Alloy』、あるいは『Sovereign Cloud』として柔軟に提供できる」(三澤氏)
次に「Oracle Fusion Applications」について、これまでのERPにおける技術的負債からの脱却を図り、AIの価値を享受できるシステムとして構築されたものだと紹介。SaaSとして提供されるため自動アップデートが行われ、追加コストが必要なくなるだけでなく、AIなど技術変革の価値をスムーズに享受できるものだという。
そして、2つ目の重点施策として「お客様のためのAIを提供」を掲げ、下図を提示しながらSaaS/PaaS/IaaSにおける特長に言及。OpenAI社のような優れた生成AIを作るためには膨大なコストがかかる状況下、GPU能力を最大限活用できる「RoCE v2 RDMA Network」による超大規模スケールかつ最適なGPU配置をOCIで実現できるとした。
「お客様自身が優れたモデルを作り出すということではなく、ベンダー側で用意して活用していただく。その際により手軽に最適なアウトプットを得られるようにしていく」として会見を締めくくった。