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生成AIの企業活用

IBM watsonxが打ち出した生成AI基盤モデルの戦略──AIファーストを加速する3つのコンポーネント

日本IBM 竹田千恵氏/田中孝氏インタビュー

 IBMが発表した「watsonx」は、生成AIと基盤モデルの戦略的活用を促進すると同時に、コストと信頼性の問題も総合的に解決するAIプラットフォームである。基盤モデルの活用が不可欠な生成AIの展開を促進し、ユースケースに特化したソリューションへと導く。「企業は生成AIの実装にあたり、特定の基盤モデルの選定とカスタマイズが必須。watsonxは、そのプロセスを総合的にサポートする仕組みを提供する」とIBMのwatsonx担当の竹田氏、田中氏は明かす。

IBM watsonx:AIファースト時代における基盤モデル活用と総合的な運用戦略を促進

日本アイ・ビー・エム株式会社 理事 テクノロジー事業本部 Data and AI テクニカルセールス watsonx Client Engineering 竹田千恵氏<br /><br />日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 Data and AI エバンジェリスト 田中孝氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 理事 テクノロジー事業本部 Data and AI テクニカルセールス watsonx Client Engineering 竹田千恵氏

日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 Data and AI エバンジェリスト 田中孝氏

 2023年5月に行われた年次カンファレンス「Think 2023」で、企業の最先端AI活用の取り組みを促すため、IBMはIBM watsonx(以降、watsonx)を発表した。watsonxの末尾の「x」は、掛け算的に企業の活用拡大や取り組みをスケール(加速)させたいという意味が込められている。IBM watsonxの提供に至った背景として、田中孝氏は「AIファースト」へのトレンドの変化を指摘した。

「Think 2023」でのwatsonxの様子は動画で公開されている。出典:https://www.youtube.com/@ibmresearch
「Think 2023」でのwatsonxの様子は動画で公開されている。出典:https://www.youtube.com/@ibmresearch

 「これまでは既存のビジネスアプリケーションにAIを追加的に組み込み、ビジネスを変革するアプローチだったものが、今後はAIを使う前提でビジネスを再設計するAIファーストに変わることになるでしょう」と田中氏は述べ、現在はAIファースト時代に向かう過渡期にあるというIBMの予想を紹介した。

 AIファーストへの転換を促すテクノロジーの中核にあるのが基盤モデルである。これまではビジネスが想定するユースケースごとにAIモデルを開発する必要があった。対して、基盤モデルを使うアプローチでは、これまで同様に機械学習の手法を使うものの、汎用的なモデルの開発後、ユースケースに合わせて追加学習を行い、目標とする精度の達成までチューニングを行う点が異なる。企業にとっては、自社でゼロからモデルを開発する必要はなく、外部の組織が開発した基盤モデルの選択から取り組みを始めることができる。

 時短効果が期待できる反面、モデルをビジネスアプリケーションにデプロイするまでのプロセスが変わってくる。まず、選択した基盤モデルが自社で想定するユースケースに適しているかを検証しなくてはならない。次に、不適切な入出力を認めないよう、信頼性を担保することも必要だ。さらに、昨今の基盤モデルの規模は巨大化する傾向を踏まえると、規模の大きいモデルを選択した場合の計算環境に要するコストも比例して高くなることも認識しておきたい。そうなると、基盤モデルを利用する前提の環境やサポートが必要になる。watsonxはそのための製品として登場した。

図1:watsonxで提供する3つのコンポーネント 出典:日本アイ・ビー・エム
図1:watsonxで提供する3つのコンポーネント 出典:日本アイ・ビー・エム [画像クリックで拡大]

 現時点におけるwatsonxのコンポーネントは、企業がAIモデルを選択し、カスタマイズして運用するための「watsonx.ai」、カスタマイズのための学習データを集約して管理するデータストアになる「watsonx.data」、開発したモデルをモニタリングし、高度なガバナンスで運用するための仕組みを提供する「watsonx.governance」の3つがある。3つのコンポーネントは、クラウド、オンプレミスを含むハイブリッドな環境で活用でき、現時点ではwatsonx.aiはIBM Cloud上のSaaSとして、watsonx.dataはIBM CloudもしくはAWS上のSaaS及びソフトウェア製品として提供する。watsonx.aiとwatsonx.dataは2023年7月に提供開始済みで、残るwatsonx.governance は2023年後半の提供開始を予定している

図2:従来の機械学習と基盤モデルを活用したAIの両方を支援 出典:日本アイ・ビー・エム
図2:従来の機械学習と基盤モデルを活用したAIの両方を支援 出典:日本アイ・ビー・エム [画像クリックで拡大]

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マルチモダリティが特長のwatsonx.aiの基盤モデルライブラリー

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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