CoupaのCommunity.aiと購買プロセスの革新
CoupaがAIについて語るとき、重視するのが「コミュニティ」という言葉だ。Coupaでは、自社のAIを「Community.ai」と呼び、支出データと購買プロセスのデータをAIエンジンと組み合わせることで生み出される価値を、利用企業とその取引先の両方に提供することに力を入れてきた。CoupaのCommunity.ai提供のコンセプトは、「ビジネス支出のガイド役を担う」というもので、同社では以下の3つに重きを置いて機能開発を進めている。
- 5兆ドルを超える顧客共創型の支出データ
- 業界最高レベルのプライバシー、セキュリティによりデータを保護
- 強力かつ精度の高いAIモデル
意外にも、「すべてのクラウド事業者/SaaS企業が、顧客データのAI目的での使用許可を持っているわけではない」と小関氏は指摘する。製品の歴史が古く、オンプレミス版からクラウド版へと展開してきた場合、今のようなデータ活用を想定した利用規約になっていないこともある。また、早く使いたいという気持ちが勝ち、利用規約を読み込むことなく利用を開始し、後になってから制限に気づくこともある。Coupaの場合はそれがない。「顧客の許諾を得て、購買データを利用できる製品であることは、Coupaの強み」と小関氏は語った。
CoupaにおけるAIの歴史を振り返ると、2009年の「All Customer Benchmarking」機能が最初だ。これは「あなたの会社では、このプロセスにこれだけの時間がかかっていて、ここにボトルネックができているけれども、他社ではこうですよ」を示すもので、次に出た「Coupa Advantage for Pre- Negotiated Contracts」は、Coupaの購買力を活かし、Coupa価格でモノの調達できるようにする機能になる。その後も、業界別のベンチマークが可能になるなど、機能強化を進め、現在に至っている。
その機能強化の歩みは、AIテクノロジーの進化と連動してもいる。比較的初期に出た「Process Insights」や「Pricing Insights」は、プロセスや価格を基に他社とのベンチマーク結果を示すもので、コスト最適化のための機能になる。その後、機械学習の登場でより多くのデータを扱えるようになり、これらの機能は「ここを改善すると、利益へのインパクトが大きくなりますよ」と、改善機会の提案をするまでになった。さらに、深層学習のテクノロジーを適用し、不正リスクの検知やキャッシュの最適化のように、ユーザーが目的意識を持って行う分析も可能になっている。