SUSEは4月4日、記者向けの市場戦略発表会を開催した。SUSE CEO ダーク-ピーター・ヴァン・ルーウェン氏とSUSEソフトウエアソリューションズジャパン株式会社 カントリーマネージャー 村上 督氏が登壇し、同社の戦略について語った。
ルーウェン氏は、SUSEの歴史と技術的な強みについて説明した。SUSEは1992年の設立以来、オープンソースのLinuxの代表的ベンダーとして実績を積み上げており、現在のエンタープライズ向けオープンソースディストリビューションで使用されているコードの多くはSUSEが作成したものだという。同社は技術の安定性を重視するため、株式を非公開にしているとのことだ。
プロダクトについては、2008年のOpenBuild Serviceの登場が大きな転機となり、オープンソースの世界でソースコードのオープン化によるビジネスの安定をもたらしたと自負している。その後、2014年にはSUSE Managerをリリースし、あらゆるLinuxのOSを管理できるようにした。2022年にはゼロ・トラスト・コンテナ・セキュリティベンダーのNeuvector open sourcedを買収し、同社の製品をオープンソース化した。2023年8月にはCIQ、Oracle、SUSEの3社によりOpenELAを設立した。ルーウェン氏はこの意義を「Red HatによるRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のソースコードアクセス制限によるLinux関係者の懸念を取り除いた」と語った。ルーウェン氏は、他社が自社の製品だけを重視するのに対し、SUSEは「Linuxの多様性を保持し、ユーザーを重視する」ことを強調した。
「SUSEは独自のポジションにあるからこそ、多くの関係者から大きな期待が寄せられています。例えばブロードコムによるVMwareの買収では、多くの関係者が不安を感じており、これまでのIT投資が無駄になるのではないかと危惧されています。これはIBMがレッドハットを買収した時の状況に非常に類似していると思います。こうした経験の中で、お客様は今後のプラットフォームを真剣に模索するという状況になっています。この点に関して、SUSEは非常に重要なポジションにいると自負しています」(ルーウェン氏)
続いて村上氏が日本での今後の展開について説明した。グローバル・システム・インテグレーター(GSI)や国内システムインテグレーターとのディストリビューション体制の確立、CSP、MSP、IHV、ISV、および組み込みベンダーとの戦略的な協力による消費ビジネスの拡大を行うという。
また村上氏は日本での市場展開として、製造、金融、リテール、通信業界をサポートしていると述べた。最近の日本の実績としては、Tier 1の自動車部品メーカーの事例がある。コンテナ化セットアップの効率を40%向上させ、広範囲に分散したアプリケーションの容易な管理を実現した。多数のエッジデバイスをSUSEデプロイでき、モジュール化と自己修復ソフトウェアにより、中断のない工場運用をサポートしている。これにより、エンジニアは高付加価値なソリューションの開発により多くの時間を費やせるようになったという。
さらに、日本の大手銀行では、複数サービス間の柔軟なリンクを提供し、新サービスの迅速な実装をサポートしている。また、大量の取引を処理することが可能となったという。
SUSEは、SUSE Adaptive Telco Infrastructure Platform (ATIP) 3.0やSUSE Edge 3.0、SUSE Rancher Prime 3.0といった新製品を投入している。今後、通信業界やエッジコンピューティング、Kubernetesの分野で存在感を高めていく考えで、さらに具体的な戦略については、今後のカンファレンスで発表していく考えだという。