レガシーシステムが根強く残る日本での戦略とは
Dynatraceがターゲットとするような日本企業が抱える最大の課題は、データが爆発的に増えてしまったことで、それらを扱うシステムが複雑化していることだ。そして、その中に古いレガシーシステムが残っていることが問題をさらに大きくさせる。
オブザーバビリティのツールは、クラウドの台頭と共に発展してきたが、クラウドだけを対象としたものではない。特に、Dynatraceのオブザーバビリティ機能はメインフレームのインフラも対象にしている。レガシーシステムの一部がクラウドに移行してモダナイズされている場合は、オンプレミスに残っているメインフレームと合わせて、ITシステムが問題なく稼働するよう、オブザーバビリティによって支援できる。「これは重要なポイントであり、Dynatraceのユニークな点でもあります」とマコーネル氏。まずは、オンプレミス環境でDynatraceのオブザーバビリティプラットフォームに慣れてもらい、次のステップでクラウドへも広げることが同社の戦略だ。「大手銀行などでは、ハイブリッドクラウド環境が今後も長く続くでしょう。そのようなIT環境の中で、オブザーバビリティの戦略を展開する必要があります」と言う。
Dynatraceのもう一つの優位性は、オブザーバビリティのためのすべてのデータを集約する統合されたデータストアがあることだ。集約されたすべてのデータの相関関係などをコンテキストとしてAIエンジンが分析することで、発生した問題の原因分析や対処を自動化できる。これにより、単にダッシュボードでシステムの状態を可視化するだけでなく、何か問題があればその解決策までを提示するのだ。これは他社がなかなか追随できないところだと、マコーネル氏は自信を見せる。
企業としては、ダッシュボードでリアルタイムにシステムやアプリケーションの状態を可視化するだけでなく、問題があったときの対処、また、問題発生を未然に防ぐための予防的な処理も自動化したいと考えている。それを実現可能なDynatraceは、大きな組織でシステム環境が複雑化しているほど、この点が高く評価されるという。
では、同社のAIは実際にどのような働きをしているのだろうか。マコーネル氏は、自動化を推進するための「3つのタイプのAI」を紹介した。1つ目が「Causal AI(因果AI)」。これは問題の原因を追及するためのAIで、根本原因を分析するもの。Dynatraceが最も注力しているAIだ。ログやトレースの情報、ユーザー情報などあらゆるオブザーバビリティの情報を見て状況を評価する。これにより、問題の原因を特定し、適切な対処方法を提示できるという。
2つ目が「Predictive AI(予測AI)」。これはデータの異常を検知し、次に起こりうる状況を予測するものだ。Predictive AIは、過去のデータパターンに基づいて異常を検知し、「同様のパターンが過去に発生しているため、インシデントの可能性がある」といった通知を行う。Causal AIで問題を解決し、Predictive AIでは問題を回避することに活用する。これら2つのAIは、10年以上にわたり活用されているDynatraceのプラットフォームにおける中核機能でもある。
そして、3つ目が「Generative AI(生成AI)」。Generative AIは学習データの質や与えるプロンプトにより、答えの精度が変わってくる。現時点で、Generative AIは質問の翻訳などに活用されることが多いが、Dynatraceでは、Causal AIとPredictive AIで得られた正確な情報を、Generative AIを用いてユーザーに分かりやすく伝えることを目指している。