オブザーバビリティが注目される3つの要因
オブザーバビリティは、急速に認知度を高めている。この要因として、DXの取り組みの中で進められている「クラウドモダナイゼーション」、爆発的に利用が進む「AIの活用」、高度化する「セキュリティ脅威に対する防御」の3つを挙げるのは、Dynatrace CEOのリック・マコーネル(Rick McConnell)氏だ。これら3つの取り組みが進むほど、企業が扱うデータは爆発的に増え、それを支えるITの仕組みも複雑化の一途を辿る。「増え続けるデータと、それらを扱うソフトウェアを手作業で管理することはもはや不可能です」と警鐘を鳴らした。
データの増加にともない、利用するツールも多岐にわたるようになった。また、多様化する顧客ニーズに対応し、顧客体験を向上させることも重要な課題となっている。これらに対応するために、オブザーバビリティのソフトウェアを導入することは「オプションではなく必須になっている」とマコーネル氏は指摘する。
オブザーバビリティを導入することで、コストの最適化やリスクの軽減を実現し、イノベーションを推進できるという。たとえば、航空機を利用する際には、フライトに関する様々な情報を提供するモバイルアプリケーションを活用するだろう。そのアプリケーションがうまく動かなければ、顧客の満足度は低下してしまう。そのためアプリケーションに何かトラブルが発生すれば、航空会社は直ちにそれを解決しようとする。数十人の人たちがログを解析し、その結果についてオンラインで会議をするなどして原因を探る。その結果、トラブル解決までの一連のプロセスで、特定のアプリケーションが機能していないことが分かり、さらにその調査を進める。このように、解決には何時間もかかるだろう。
この状況下で航空会社が求めることは、トラブル発生時の迅速な解決とトラブル発生頻度の低減だ。そして、その結果として顧客体験を向上し、顧客の満足度を上げたいということ。こうした問題を解決するためにDynatraceを導入している航空会社があるとマコーネル氏は言う。この航空会社では、Dynatraceの導入前は社員数十人が時間をかけて問題の解決に当たっていたが、導入後にその生産性が大きく上がった。またエンドユーザーの顧客体験も向上し、その上でコスト削減も実現したという。
問題の可視化だけでなく、AIで対処を自動化する
これらの課題はどのように解決されたのか。解決に導いたDynatraceの特長の一つとして、アプリケーションに関わる膨大なデータを自動で集めて、それを分析できる点がある。多くのオブザーバビリティのツールが、ログなどを集めてそのデータをダッシュボードの形で提供する。しかし「何が起きていて、何が問題かまでは教えてくれません。Dynatraceはデータを集め可視化するだけでなく、AIエンジンを用いてデータを分析し、どこに問題があるかを見極めます」とマコーネル氏。
また、アプリケーションユーザーの期待値が高まっていることがオブザーバビリティの重要性を高めている一つの要因ともいえる。たとえば、銀行のアプリケーションを利用するユーザーは、そのアプリの使いやすさを他の銀行のアプリケーションと比較するわけではない。既に気に入って使っているゲームや音楽ストリーミングのアプリケーションと比べ、使いやすいかどうかを判断するのだ。
その上で、オブザーバビリティのメリットが発揮されるのは、組織が大規模で複雑化している場合だ。Dynatraceは世界全体で約1万5000社の大規模企業をターゲットとしており、特に注力する企業は約2,000社だという。日本にもこの2,000社に含まれる企業が多数ある。「日本企業は今IT環境をモダナイズしようとしており、クラウドに移行するための支援を求めています。そして、完璧に機能する環境を実現したいとも考えています」とマコーネル氏。同氏が日本のCIOと会話する中でも、環境をモダナイズし、利用するソフトウェアが常に正常に動くようにしたいといった強い要望を感じるという。