モデルからエージェントへ、“生成AI”活用の焦点がシフト
国内外でAIのビジネス活用が進んでいる。カンファレンスチェアの平手智行氏は、「業界や業種特化のもの、汎用的なものの両方があるが、ビジネスの現場では、AIを試す段階から“使う”段階に確実にシフトしている」と指摘。AIはGoogle自身も含めた多くの企業でビジネスを変革する力を秘めている。Googleが何十年にもわたり、AIプラットフォームの開発に注力してきたのは、まさにビジネスを変革する力があるという信念からだ。事実、検索からYouTube、Google Map、Androidまで、数十億人が利用するGoogleのプロダクトにAIを実装し、ユーザーの利便性向上に取り組んできた。
Google Cloudが企業向けに提供する、AIプラットフォームも充実してきた。2023年末には基盤モデルGeminiを発表し、2024年5月には日本国内でのGemini 1.5 Proの一般利用が始まっている。Gemini 1.5 Proは、テキストやコード、音声、画像、動画などのマルチモーダルな処理が可能で、1,000ページを超えるPDFの書類、あるいは約2時間分の動画を一度に取り込める大規模なコンテキストウィンドウを備えている。これは、ビジネスの現場で必要となる大量かつ多様な情報を扱えることを意味する。
マルチモーダルなAIモデルの登場にともない、企業における生成AI活用の焦点も変わろうとしている。平手氏は「モデルの活用方法に注力するフェーズから、生成AIエージェントを活用するフェーズへと急速に移行している。AIエージェントは特定の目標を達成するため、複数のタスクを組み合わせて実行可能だ。LLM単体では、メールの下書き、議事録の要約、商品のレコメンドなど、業務フローから分離した部分的なタスクのサポートにとどまっていた。AIエージェントと既存のアプリケーションが連携すれば、業務フローのカバー範囲が広がり、これまで以上の業務効率化や新しい顧客体験の提供が可能になる」と説明した。
そこでGoogle Cloudが提供するのは、Geminiも利用できるVertex AIだ。これは、AIモデルと生成AIエージェントの構築からトレーニング、デプロイまでをエンドツーエンドでサポートする統合プラットフォーム。エンタープライズ要件を満たしたセキュリティやガバナンスを担保しつつ、企業の生成AI活用を促すソリューションを提供している。このVertex AIを利用し、顧客向けサービスへの生成AI実装を進めている企業の1つがLINEヤフーだ。