デジタルはリアルの価値を補強できる
井無田:2024年4月に発表されたグループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」にあわせて策定された、新しいDXビジョンでは、「すべての事業部門にDXを掛け合わせる」という方針が打ち出されています。そもそも、不動産というリアルアセット(実物資産)のビジネスに、なぜDXが必要なのでしょうか。
宇都宮:オフィスビル、商業施設やスポーツエンターテインメント施設など、多様なリアルアセットを持ち、お客様に体験価値を提供する、そこが弊社の最大の強みです。たとえば、三井ショッピングパークアプリや三井ショッピングパーク公式通販サイト「&mall」のオムニチャネル戦略は、お客様が“リアルの場”で体感する価値をさらに高めます。その一方で、「その場に行かないと価値は体験できない」という一面もあります。住宅事業各社のサービスをメタバースと生成AIを活用して提供する「三井でみつけて」というWEBサイトでは、バーチャル空間でレジデンスの内装や夜景までも見ることもできます。
リアルビジネスの幅が非常に広いため、デジタルで一つひとつの価値をどのように高めていけるかを模索中です。
井無田:成果を測ることが難しい領域ですね。
宇都宮:そうなのです。今はDXのプロジェクトごとにKPIを設定していて、毎年進捗を『DX白書』として公表しています。たとえば、業務系のシステムでは「業務時間○○時間・△人分効率化」、主なWEBやアプリではMAU(月間アクティブユーザー数)などを計測しています。一方、事業変革の分野では、「デジタルがどれくらい売り上げに貢献できたか」という点は測りにくいところがありますね。
井無田:難しい分野ですね。しかし、難しくとも常に新しいことに挑戦されています。
宇都宮:三井不動産は昔から、「日本初」というプロジェクトをたくさん手掛けており、他社がやったことのないことにどんどん挑戦しようという文化があります。新しいことに投資を惜しまず、まずやってみて、それからどんどん改善していこうというマインドが強いのです。
井無田:それはイノベーションを起こすために欠かせないマインドですし、DXとの親和性も高いですね。
ダイバーシティを推進し、誰もが公平に活躍できる環境づくりを
井無田:今後実現したいことはありますか。
宇都宮:全社のDX推進はもちろんですが、ダイバーシティの推進も私のミッションだと思っています。多様な人材が公平に活躍できる環境を作っていきたいです。
特に、女性が活躍できる環境については、グループ全体でかなり意識されてきましたが、まだまだ当たり前にはなっていません。
また、DX本部のメンバーはキャリア採用が中心でバックグラウンドも多様です。誰もが「おもしろい仕事ができる」「成長できる」「この会社に入ってよかった」と思える環境をこれからも作っていきたいですね。