
三井不動産は、2024年4月に新たなグループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」を策定。その戦略を支える“インフラとしてのDX”を推進すべく、DXビジョンを公表した。同ビジョンの核心は、デジタルを駆使した「不動産ビジネスの変革」だ。今回は、三井不動産のDX本部副本部長を務め、DX人材戦略をリードする執行役員・宇都宮幹子氏に、多様な視点を取り入れたDXとは何か、どのように推進しようとしているのか、テックタッチCEOの井無田仲氏が聞いた。
システム開発もマンション開発も「プロジェクトマネジメント」
井無田仲氏(以下、井無田):宇都宮さんは現在、三井不動産の執行役員としてDXを推進されています。ただ、元々のバックグラウンドは、ITではないそうですね。
宇都宮幹子氏(以下、宇都宮):私は1991年に新卒で三井不動産に入社したのですが、最初の4年間はスタッフ部門を経験し、そこから女性としては初となる地方転勤で仙台支店に行き、マンションなどの住宅開発や開発用地の仕入れを担当しました。
2000年に東京に戻り、法人や個人のお客様の資産の活用提案を行う営業を8年ほど経験すると、2009年にはホテル運営会社に出向しています。そこでは経営企画や人材育成、広報、顧客対応、情報システムなどを主に担当しました。Webサイトや予約システムの更新を担当したり、顧客データ分析によるマーケティングを行ったりと、出向先で初めてITに関わる業務を経験しました。
その後、2015年に三井不動産に戻り、そこから4年間はIT部門でグループ長としてシステム開発に関わり、主に決裁・会計システムの統合リプレイスプロジェクトをリードしました。そして、2019年に再び個人向け営業部門に異動して部長に就き、2023年にDX本部副本部長となりました。

大学卒業後、1991年三井不動産株式会社に入社。スタッフ部門、営業部門、資産マネジメント部門、IT部門などを経て2021年4月に同社初の女性執行役員に就任。
井無田:最初に事業部門からシステム部門に異動したときは、大変だったのではないですか。
宇都宮:私にとっては、システム開発もマンションの開発もゼネコンがITベンダーに変わるくらいで、プロジェクトマネジメントという意味ではほぼ同じです。
ただ、「目に見えるか見えないか」は大きな違いですね。マンションは作業進捗が目に見えますが、システムはベンダーの申告でしか進捗がわからないため、100%信用してもいけません。そうだからといって、すべて疑っても信頼関係が崩れてしまう。そこに難しさがありました。
井無田:たしかに、そうですね。もう1点、御社のIT部門は、エキスパート採用(中途採用)を積極的に行われています。様々なバックグラウンドを持つ方がいるチームを、どのようにマネジメントしたのでしょうか。
宇都宮:「細かいところは部下に任せ、部下ができないことをサポートする」という姿勢で入りました。ITについては、彼ら・彼女らのほうがよくわかっていますから、自分ですべてを把握して指示するのではなく、自分ができないところは任せてしまったほうがうまく進みます。
たとえば、私のようなビジネス人材は、業務要件や業務フローを見ることはできます。それをITにどう落とし込むかについては、IT人材に任せたほうがいい。そういった分業体制で進めました。
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井無田 仲(イムタ ナカ)
テックタッチ株式会社 代表取締役慶應義塾大学法学部、コロンビア大学MBA卒
2003年から2011年までドイツ証券、新生銀行にて企業の資金調達/M&A助言業務に従事後、ユナイテッド社で事業責任者、米国子会社代表などを歴任し大規模サービスの開発・グロースなどを手がける。「ITリテラシーがいらなくなる...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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中釜 由起子(ナカガマ ユキコ)
テックタッチ株式会社 Head of PR中央大学法学部卒。2005年から2019年まで朝日新聞社で記者・新規事業担当、「telling,」創刊編集長などを務める。株式会社ジーニーで広報・ブランディング・マーケティング等の責任者を経て2023年にテックタッチへ。日本のDX推進をアシストするシステム利...
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