システム開発もマンション開発も「プロジェクトマネジメント」
井無田仲氏(以下、井無田):宇都宮さんは現在、三井不動産の執行役員としてDXを推進されています。ただ、元々のバックグラウンドは、ITではないそうですね。
宇都宮幹子氏(以下、宇都宮):私は1991年に新卒で三井不動産に入社したのですが、最初の4年間はスタッフ部門を経験し、そこから女性としては初となる地方転勤で仙台支店に行き、マンションなどの住宅開発や開発用地の仕入れを担当しました。
2000年に東京に戻り、法人や個人のお客様の資産の活用提案を行う営業を8年ほど経験すると、2009年にはホテル運営会社に出向しています。そこでは経営企画や人材育成、広報、顧客対応、情報システムなどを主に担当しました。Webサイトや予約システムの更新を担当したり、顧客データ分析によるマーケティングを行ったりと、出向先で初めてITに関わる業務を経験しました。
その後、2015年に三井不動産に戻り、そこから4年間はIT部門でグループ長としてシステム開発に関わり、主に決裁・会計システムの統合リプレイスプロジェクトをリードしました。そして、2019年に再び個人向け営業部門に異動して部長に就き、2023年にDX本部副本部長となりました。
井無田:最初に事業部門からシステム部門に異動したときは、大変だったのではないですか。
宇都宮:私にとっては、システム開発もマンションの開発もゼネコンがITベンダーに変わるくらいで、プロジェクトマネジメントという意味ではほぼ同じです。
ただ、「目に見えるか見えないか」は大きな違いですね。マンションは作業進捗が目に見えますが、システムはベンダーの申告でしか進捗がわからないため、100%信用してもいけません。そうだからといって、すべて疑っても信頼関係が崩れてしまう。そこに難しさがありました。
井無田:たしかに、そうですね。もう1点、御社のIT部門は、エキスパート採用(中途採用)を積極的に行われています。様々なバックグラウンドを持つ方がいるチームを、どのようにマネジメントしたのでしょうか。
宇都宮:「細かいところは部下に任せ、部下ができないことをサポートする」という姿勢で入りました。ITについては、彼ら・彼女らのほうがよくわかっていますから、自分ですべてを把握して指示するのではなく、自分ができないところは任せてしまったほうがうまく進みます。
たとえば、私のようなビジネス人材は、業務要件や業務フローを見ることはできます。それをITにどう落とし込むかについては、IT人材に任せたほうがいい。そういった分業体制で進めました。