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PM歴20年超の橋本将功が示す“情シスプロジェクトあるある”とその打ち手

「馴れ合い状態」のベンダーを一掃するには?攻めのIT戦略を叶える“良いベンダー”を見抜く3つの視点

第3回:“エース”に自社を担当してもらうための対策とは

 DXをはじめとするITプロジェクトを進めるにあたっては、多くの企業が外部ベンダーと協力していることでしょう。しかし「付き合いのあるベンダーがあまり良い提案をしてくれない」「新しくベンダーを探したいが、良いベンダーを見つける方法がわからない」など、ベンダーに関する悩みを抱えているプロジェクト担当者の方も多いのではないでしょうか。連載「PM歴20年超の橋本将功が示す“情シスPMあるある”とその打ち手」では、プロジェクトマネージャー(PM)として20年以上キャリアを積んできた筆者が、プロジェクトの「あるある失敗パターン」から編み出したコツやヒントを情報システム部門の方々にお届けしています。連載3回目となる本稿では、良いベンダーの見つけ方はもちろん、ベンダーとの良い関係を構築する方法も紹介します。

人材不足の中、プロジェクトのパートナーをどう見つける?

 DXや新規事業を進めるにあたった最も大きな障壁が「人材不足」です。IT部門から選出されるプロジェクト推進リーダーをはじめとした「内部」での人材不足はもちろん、「外部」のITベンダーでも適切な人材が足りず、本来あるべき形でプロジェクトが回っていないという状況は、今やどの企業でも見受けられます。2024年1月に帝国データバンクが実施した『人手不足に対する企業の動向調査』では、正社員の人手不足割合を業種別に見たときのIT企業の割合は全体の77%に上り、トップになっています。

正社員の人手不足割合(上位10業種)
人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)』(2024年8月22日、株式会社帝国データバンク)より引用
[画像クリックで拡大]

 筆者自身も、経営者や事業部長などのポジションを務める方々と会話する中で、「良い人材はいないか」「どこか良いベンダーを知らないか」と毎日のように聞かれます。この「良い人材」「良いベンダー」という表現からわかることは、企業が求めている人材には当然ながら数のみならず“質”も求められているということ。ITプロジェクトの取り組みは、それを担う人材に求められる専門的な知見やスキルのレベルが高く、人数だけ揃えても成功する見込みは低いといえます。

 新規事業やDXによる企業間競争がますます激化する昨今、企業が生き残っていくためには、ITプロジェクトをともに進めるパートナーとして「いかに良いベンダーを見つけ、良い関係を築いていくか」が大きなカギを握ります。そこで今回は、発注者側とベンダー側の両方でプロジェクトマネージャーとして経験を積んできた筆者が、実体験を踏まえてそのポイントをお伝えします。

受発注の関係が馴れ合い状態になっていると、提案や開発の品質が低いために自社の戦略に大きく影響する可能性がある

まずは既存ベンダーとの関係を見直すべし

 まず、良いベンダーを探すための第一歩は「既存ベンダーとの馴れ合い関係を見直すこと」です。人間関係と同様に、企業間でも付き合いが長くなることで緊張感が薄れ、お互いに期待するものが限定されるようになります。これは関係性の安定につながるため、一概に悪いこととはいえませんが、特に変化の激しいITの領域ではしばしばマイナスに働きます。

 既存ベンダーと馴れ合い状態になると、発注者側はベンダーに対して期待を抱かず予算や役割を限定して委託するようになります。これが当たり前になってしまうと、新しい技術や開発手法などを新規事業やDXを進める手段として活用したり、事業戦略に活かしたりすることができなくなるのです。一方ベンダーは、発注者から委託される定常的な業務をこなして売上を確保することのみを意識するようになるため、リスクを取って発注者の事業に貢献する付加価値の提案を行ったり、それを可能にするための人材の育成や採用等の企業努力をしたりしなくなるでしょう。

次のページ
「ドキュメントのカバー率」は馴れ合い度を図る指標

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PM歴20年超の橋本将功が示す“情シスプロジェクトあるある”とその打ち手連載記事一覧

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この記事の著者

橋本 将功(ハシモト マサヨシ)

パラダイスウェア株式会社 代表取締役
早稲田大学第一文学部卒業。文学修士(MA)。IT業界25年目、PM歴24年目、経営歴14年目、父親歴9年目。 Webサイト/Webツール/業務システム/アプリ/組織改革など、500件以上のプロジェクトのリードとサポートを実施。「プロジェクトマネジメントの民主化」の実現...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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