230億円規模へ成長見込みの電子契約サービス市場、見据える勝ち筋
日本発のリーガルテックであるLegalOn Technologiesは、2024年10月10日にDocusignとのパートナーシップ締結を発表。それにともない、DocusignのAPIを活用した電子契約モジュール「サイン(電子契約)」(以下、サイン)を、AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」内で12月に提供開始するとした。協業の経緯について、谷口氏は「グローバル市場への進出と、日本市場へのコミットという2つの側面がある」と明かす。
LegalOn Technologiesは、累計約179億円と、リーガルテックとしては国内1位の調達額を誇る企業だが、現在はその裾野を世界に広げるべく展開を進めている最中だという。その中で、既にグローバルで展開しており、高い実績を誇るDocusignと協業することには大きな意義があると谷口氏は強調した。
また、Docusignを協業相手に選んだもう1つの理由として挙げられていた「日本市場へのコミット」については、国内のデータセンター稼働という側面が大きい。谷口氏は「自社の契約書のデータが国内に保存されているかどうかを気にする顧客は多い」とし、そのようなニーズに応えるためにも、Docusignとの協業がベストと判断したと語った。
今回の協業で、LegalOn Technologiesは新たに電子契約サービス市場に参入したが、そもそも、この市場は直近でどのような推移をたどっているのか。2022年に発表されたITRの調査[1]によると、2021年度に約157億円規模だった市場は、2022年度には約230億円規模にまで拡大する見込みとされていた。2024年現在では、さらに市場が伸長している状況だ。
市場拡大の要因としては、自治体や不動産での契約などの新規用途が拡大していることが考えられると谷口氏。一方、今後の市場動向については「コモディティ化が加速するのではないか」と指摘する。現状、新規用途が拡大している業界には既存ベンダーが競って参入しており、技術動向としても長期署名フォーマットが約10年前に標準化されて以降、注視すべき新しい動きは特にない。
「そのような状況下、市場で勝ち筋を見出すには、法務業務を行ううえで必要な一連の作業をスムーズに連携し、ストレスなく実行できるサービスの提供が大きなカギになってくると考えています。つまり、細々したソリューションの提供から、様々なユニットで構成された1つのプラットフォームの提供へと進化していく必要があるということです」(谷口氏)
[1]「2021年度の電子契約サービス市場は前年度比56.1%増、不動産取引における完全電子化の法施行と自治体での導入の進展により、2022年度は同46.1%増を予測 ITRが電子契約サービス市場規模推移および予測を発表」(アイ・ティ・アール:ITR, 2022年10月27日)