「データドリブン経営」への道を開く最初の一歩
企業がデータの高度な利活用を実現する上で、どうしても避けて通ることができない「MDM」の取り組み。小島氏は、企業がMDMに取り組む意義やその価値について次のように述べる。
「MDMを導入することで、多くの企業が直面している『データのサイロ化』『業務の分断』といった課題を解決し、企業のDXを支えるデータプラットフォームを実現できます」
たとえば、製造企業の多くは、企画、開発、調達、製造、販売・営業、アフターサービス、マーケティングなど業務ごとに個別にシステムを構築・運用しており、それぞれのデータが互いに連携することなく「サイロ化」した状態に置かれている。データの定義や形式、粒度、鮮度などもバラバラなため、それらをひとまとめにして集計・分析しようと思っても膨大な手間が掛かり、会社全体の経営状況をデータを基にタイムリーに把握することも叶わない。
そこで、社内に散在している様々なデータの形式、粒度、鮮度、項目名などを統一し、単一のマスターデータベースの下に集約して一元管理することで、データを基に素早く的確な意思決定を行える「データドリブン経営」への道が開ける。Stibo Systemsでは、こうしてMDMの取り組みを通じてデータドリブン経営を実現することこそが、企業がDXで目指すべき最終ゴールだとしている。
ただしMDMは、マスターデータベースを設計・実装するだけでは決して実現できない。システムを構築・導入した後に、マスターデータベースを継続的にメンテナンスし、データの正確性や鮮度、透明性を維持し続ける運用が何よりも重要になってくると小島氏は強調する。
「MDMの活動は『システムを導入したら終わり』というわけにはいきません。データは“生き物”ですから、日々の事業活動で新たに発生するデータをいち早く反映させたり、ビジネス環境の変化に迅速に追随するためにデータ項目の見直しを定期的に行うといった日々の運用作業を継続していくことが何よりも重要です」
目先の課題解決の先にある「期待効果」まで描く
では企業が実際にMDMに取り組む際、どのような点に留意すればプロジェクトを成功に導くことができるのか。小島氏は「Why」「What」「How」「Who」の4つのポイントを押さえることが重要だと説く。
「なぜ(Why)MDMを導入するのか。何(What)をマスターデータとして管理するのか。どんなソリューション(How)を選ぶか。そしてどんな人(Who)がMDMに関わるべきなのか。MDMを導入する際には、この4つのポイントをあらかじめ押さえておくことが重要です。本日はこのうち、WhyとWhoの2つのポイントを取り上げて解説したいと思います」
まずWhyについては、MDM導入の目的やゴールを予め定義し、これをステークホルダー間でしっかり共有しておくことが重要になってくる。そしてその際には、「どの視点に立って目的やゴールを考えるか」を意識すべきだと同氏は述べる。
「一般的には『商品コード体系を全社で統一したい』『商品情報を速やかに展開・更新したい』といった身近な課題の解決を目的に掲げがちですが、経営層からプロジェクトの承認を得たり、多様なステークホルダーの同意を得たりするためには、こうした目的だけでは弱いと言わざるを得ません。そこで、より中長期的な視点に立って、身近な課題を解決した先にある『期待効果』までを視野に入れたゴールを設定することをお勧めします」
たとえば、商品コード体系が統一された結果「正確な商品動向や売上が把握できるようになり、ひいては経営資源を正確に投入できるようになる」、商品情報を即座に更新できるようになることで「事業計画に即したビジネス展開が可能になる」といったように、事業全体により大きなインパクトを与え得る目標設定を行うことで、経営層からの理解も得やすくなる。
また、こうしたMDMの導入目的やメリットを「誰に対して、どのように説明するか」についても配慮する必要がある。MDMの導入・運用に携わるステークホルダーは、大別すると「プロジェクトのスポンサー」「システムを維持する部門」「データを登録する部門」「データを利用する部門」の4者が存在するが、たとえばスポンサーに対してはMDM導入による収益向上やコスト削減メリットをアピールする一方で、ユーザーに対しては業務効率化のメリットを訴求するといったように、各ステークホルダーの立場に即した導入効果を伝えることが効果的だという。
部門横断のCoE設立で、マスターデータの“門番”になる
一方Whoについては、MDMのプロジェクト体制の構築や、それを遂行する人材の選出がポイントとなる。一般的なMDMプロジェクトの体制は、システムの設計・構築を担当する情報システム部門や外部のSIerに加えて、システムのユーザーである各業務部門の担当者も交えて構成される。業務において必要とされるマスターデータや、それに関わる業務プロセスは各部門ごとに異なるため、担当者間の合議によって部門間の利害調整を行うためにこうした体制が組まれることが多い。
しかし小島氏によれば、こうしたプロジェクト体制は実際には利害の調整に手間取り、たびたび暗礁に乗り上げてしまうことが多いという。
「各部門はそれぞれ自部門のシステムやプロセスを念頭にマスターデータについて考えるので、部門間の意見の相違を調停するのはそう容易くありません。またこうした調整作業はシステム構築時だけでなく、運用を開始した後も続きます。マスターデータベースの管理対象データは時間とともに増えていきますから、部門から要求されるままにデータを登録していけば、MDMはあっという間にぐちゃぐちゃになってしまいます」
そこで同氏が推奨するのが、MDMの活動に特化したCoE(Center of Excellence)組織を設ける方法だ。各部門から「この人が自部門のデータについて最も詳しく、データの流れや目的を最も良く理解している」という人材を集め、CoEで部門間のデータに関する利害調整を集中的に行う。これによってMDMプロジェクトをスムーズに進行させるとともに、CoEでの検討内容をそれぞれの部門に持ち帰って現場にフィードバックしてもらうことで、「この人が同意した内容なのであれば、大丈夫だろう」という空気を醸成し、MDMに対する現場の同意や協力も得やすくなる。
またCoEの活動はシステムの構築時だけでなく、運用を始めた後も極めて重要だという。
「CoEがデータ項目の定義や調整などを一括して担い、マスターデータの『門番』としての役割を果たすことで、MDMが陳腐化することなく継続的に機能するようになります。弊社のお客さまの中には、マスターデータを基にしたワークフローの設計や実装もCoEが行うことで、MDM運用の内製化を実現されている例もあります」(小島氏)
複数社に点在していた情報をMDMで集約
Stibo Systemsは1976年にデンマークで設立されたMDMソリューション専業ベンダーで、これまで世界中で750社以上の企業のMDMの取り組みを支援してきたという。
その中には日本国内の大手企業も数多く含まれており、たとえば国内建材製造大手企業の事例では、複数のグループ企業にまたがる膨大な商品情報の一元管理や、紙ベースのカタログのデジタル化などを目指してStibo SystemsのMDMソリューションを導入。その結果、同社は精度が高い商品情報を多種多様なチャネルを通じてタイムリーに市場に提供できる「商品情報戦略プラットフォーム」を構築し、商品情報の完全性や一貫性、正確性などを向上させるとともに、その活用の幅も広げることができるようになった。
米国の大手食品メーカーの事例では、長年グループ企業やブランド、国・地域ごとに個別に製品情報システムを構築・運用してきたため、情報のサイロ化とそれにともなうブランド戦略の混乱という課題を抱えていたという。そこでStibo SystemsのMDMソリューションを導入し、グローバルで全ブランドの製品情報を一元管理できる仕組みを構築したことで、すべてのマーケティングチャネルを通じて統一したブランドイメージを効果的に打ち出せるようになった。
ヨーロッパの大手決済サービス事業者の事例でも、Stibo Systemsのソリューションを採用したことでMDMの導入メリットを享受できたという。同社はM&Aや企業統合を積極的に行ってきた結果、機能が重複する多数のシステムとそれらが管理するデータが社内に乱立する事態となり、データガバナンスが十分に機能しない状態に陥っていた。そこでStibo SystemsのマルチドメインMDMを導入し、SAP ERPの基幹システムと連携させることでデータのガバナンスと透明性を確保するとともに、システムを横断してデータを分析できるようになったことで新たなインサイトも見出せるようにもなったという。
「これらの企業は、MDM導入の目的を予め明確化した上でプロジェクトに臨んだことで、大きな導入効果を得ています。本日はそのほかにもMDM導入における様々なポイントを紹介しましたが、これらが『DXの最初の一歩』たるMDMに皆さまが取り組む際の一助となれば幸いです」(小島氏)
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