IBM買収後のApptio、日本市場での成長戦略は?製品は? シナジー発揮で新たなステージに進めるか
TBMとFinOpsの認知に課題、事業成長のドライバーは

IBMに買収されたApptio、2023年11月に塩塚英己氏を日本法人の代表取締役に迎えると、2024年5月にはIBMに事業を統合した。IBMは、Apptioの買収で「TBM」によるプレゼンス強化と、顧客企業のデジタル変革支援を目指す。一方のApptioは、IBMの強力な営業チャネルとグローバルでのサポート体制を活用することで、さらなるビジネス成長を加速させることを狙う。とはいえ、日本ではTBMやFinOpsの認知度はまだ低く、その普及が課題だ。IBMにおけるTBMやFinOpsのビジネス戦略について、塩塚氏に話を訊いた。
Apptio、IBMとの統合で新たなステージへ
Apptioは、企業のIT投資管理を支援するソフトウェアを提供する企業。IT支出をビジネスの視点で捉え、投資対効果を最大化する手法である「TBM(Technology Business Management)」の実践に必要なツールとフレームワークを核として、FinOpsによるマルチ/ハイブリッドクラウド環境の最適化も支援する。
IBMによる同社の買収は、2023年8月に完了。2023年11月1日、Apptio日本法人の代表取締役に就任したのは塩塚英己氏だ。同氏は、日本IBMで製造業やサービス部門、コンサルティング、BPO事業などで要職を歴任し、2021年からはデータ・AI・自動化ソフトウェア製品の日本における事業責任者を務めている人物。現在は、Apptio事業部長を専任している。
買収後、まずはApptioの契約形態をIBMの形態に変更するなどの手続きを進めると、2024年5月にはApptioの事業をIBMに統合。その後、新規の顧客提案などを積極的に推進する中、2024年夏頃からIBMの既存顧客へのApptio導入が大きく進展したという。
TBMやFinOpsをバックボーンとした方法論の普及、それを実現するためのソリューションの両輪を回すというビジネスモデルはユニークなものだと塩塚氏。IBMがソフトウェアの「as a Service型」のビジネスモデルに変革する中、既にSaaSビジネスとして運用されていたApptioの事業運営ノウハウを吸収したいとも述べる。
事業統合後、Apptioにはグローバルで100名を超える開発エンジニアが追加投入された。増強した開発リソースを活用することで、IBM製品との連携強化・機能統合を進めている最中だ。日本でも、Apptioの事業体制は統合以前と比較して約1.5倍にまで拡大。プリセールス、ポストセールス、カスタマーサクセスの各部門で増員しており、Apptio導入後の利用定着・促進に注力している状況だという。
これまでApptioの製品は、TBMやFinOpsの実践を目的とした顧客に多く採用されていた。一方IBMと合流してからは、たとえば「IBM Cloudability」とクラウド財務管理ツールである「IBM Turbonomic」を組み合わせることで、より包括的なFinOpsの実現が可能になるだろう。塩塚氏は「IBMの既存ソリューションとのシナジー効果を狙い、Apptio製品とIBM製品を併用することで、より包括的なIT管理に取り組むケースが増えています」と述べる。
2024年夏以降、ビジネスパートナーとの協業も積極的に推進。IBMが構築していたパートナーエコシステムにApptio製品を追加している。グローバルでは、Apptioのパートナーネットワークを拡充しており、EYやKPMG、デロイトなどのコンサルティングファームとの連携強化が公表された。
特にApptioの強みであるTBMなどの方法論は、コンサルティングファームの各種サービスと親和性が高く、IBMはこれらの方法論をコンサルティングサービスに組み込む動きを加速させる狙いだ。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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