製品ラインアップを「3つのエディション」に再編成へ
Apptioの新たなビジネス戦略においては、「IBMとのシナジー効果の発揮」が重要視されているようだ。既にIBMのテクノロジー・コンサルティングチームとの連携を強化し、トップアカウントへの営業活動を積極的に展開している。塩塚氏によれば、この動きは一定の効果が出始めているという。
また、製品・ソリューション面のシナジーでは、IBM Automationとの組み合わせを提案。前述したようにIBM ApptioやIBM Cloudabilityは、顧客のIT運用を経済性の面からサポートするツールであり、IBMの抱えるInstana ObservabilityやTurbonomicといったソリューションは、ITの安定運用と健全性を担保するものだ。これらを組み合わせることで、従来よりも顧客のIT運用、IT部門経営の高度化に貢献していくという。
たとえばTurbonomicは、FinOpsのライフサイクル「Inform」「Optimize」「Operate」のうち、OptimizeとOperateを得意とする一方、Cloudabilityは前半のInformとOptimizeが得意領域だ。これらを一緒に提案することで、これまでにない“包括的なFinOps”が実践できる。
とはいえ、これまでApptioはTBMの方法論を理解・共感してもらうことで、製品の全面採用につなげてきたケースは少なくない。そして、このTBMを理解するハードルは決して低いとは言えず、同様のアプローチを続けることで、一定の導入障壁が生まれてしまう課題があるだろう。
これはグローバルでも認識されていると塩塚氏。そこで導入のハードルを下げるため、ラインアップを再編成。具体的には、「エッセンシャル(Essential)」「スタンダード(Standard)」、それらの上位エディションという3つに整理を進めている。
エッセンシャルは、ITファイナンスやTBMの実践に必要な“最低限の機能”を備えており、ほぼカスタマイズなしで導入が可能だ。最短2週間で利用を開始できるとしており、既に国内でも利用ユーザーがいるという。まずはエッセンシャルで一歩踏み出してもらい、TBMのメリットを迅速に享受してもらう。将来的には、スタンダードや上位エディションへのアップグレードを促すこととなる。
塩塚氏は、IBM Automationのポートフォリオを俯瞰した場合にも、「エッセンシャル」や「スタンダード」のようなシンプルなエディションは親和性が高いと説明した。一方、TBMのフレームワーク「TBM Taxonomy」のVer 2.0が登場するなど、ベースとなる方法論自体も日々進化を続けている。
今やファイナンスだけでなく、顧客や従業員エクスペリエンス、サステナビリティなど、多岐にわたる要素が絡み合っている状況下、リスクやコンプライアンスにも考慮する必要があり、TBMではこれらの要素も含めた“ビジネス価値の創出”を見据えている。こうした幅広いニーズに対応したい際に、上位エディションが有効だという。