![アバナード株式会社 代表取締役社長 鈴木淳一氏](http://ez-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/21411/21411_00.jpg)
アクセンチュアとマイクロソフトの合弁会社であるアバナードは、グローバル調査「AIの価値に関するインサイトレポート2025」の結果を発表した。同社代表取締役社長の鈴木淳一氏が、2月6日の会見で日本企業におけるAI導入の現状と課題について説明を行った。
日本企業のAI導入状況:意欲は高いが実効性に課題
初めに鈴木社長は、グローバル調査の結果を報告。88%の企業がAIへの対応の遅れによる競争力低下を懸念しており、導入の加速を図っているという。88%の企業はフルカスタマイズではなくパッケージ型のAIソリューションの活用を検討。特に91%の企業が従業員の代替を目的としたコスト削減のためにAIを活用する意向だ。しかし、その投資効果の実際の測定はほとんど行われていないのが現状だ。
さらに、45%の企業がAIのビジネスケース作成に取り組んでいるものの、40%は依然として概念検証(PoC)段階に留まっており、本格的な展開には至っていない実態が明らかになった。
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続いて、鈴木社長は日本企業の調査を報告した。日本企業のAI導入率は69%と世界平均の50%を上回っている。また、71%の企業が2025年中にAIの本格導入を計画しており、93%が生成AIプロジェクトへの予算を最大50%拡大できると回答している。
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しかし、この積極的な姿勢の一方で、深刻な課題も浮き彫りとなった。98%の企業がレガシーシステムのモダナイゼーションを急いでいるものの、45%の組織が依然としてビジネスケース作成段階に留まっている。AIによる意思決定については94%が実施しているが、その結果を完全に信頼しているのは16%に留まり、世界平均の26%を下回る結果となった。
責任あるAIへの取り組みは減退
特に注目すべき点は、「責任あるAI(レスポンシブルAI)」への取り組みが前年比9%減少していることだ。この原因について鈴木社長は以下のように分析する。
「競合他社に遅れを取ってはならないという切迫感から、各社がまずは環境を整備することを急いでいる面がある。その結果、責任あるAIへの定義が曖昧な中で、データの正確性や適切性への不安が生じている」(鈴木社長)
さらに、43%の組織が包括的なAIガイドラインを策定しているものの、急速な技術変化への対応に苦慮している実態が明らかになった。また、組織全体でのAI活用トレーニングを必須としている企業はわずか24%にとどまり、43%の企業が特定部署のみにトレーニングを限定し、22%の組織では従業員へのトレーニング受講を義務付けていない状況だ。
AIの効果測定は世界平均を下回る
AIの効果測定については、25%の企業が実施中で、40%が今後1年以内に効果測定を予定している。しかし、これは世界平均の53%を下回る水準だ。効果測定を実施している企業では、意思決定精度の向上、業務プロセスの改善、収益・利益の拡大、業務時間の短縮を主な指標としている。
AIに関する人材育成と組織対応に大きな課題があることも明らかになった。94%の企業がAIによる職務代替を見据えた人材育成を重視し、72%が最新テクノロジーの活用促進に向けたトレーニング投資を予定している。しかし、AIを活用した業務プロセスの統合とチェンジマネジメントを重視する企業は67%と世界平均(77%)を下回る。さらに、AIとの協働における従業員の心理面・社会面の変化に対する組織の対応力に自信があると回答した企業は29%にとどまり、世界平均(40%)を大きく下回った。
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ここから導かれるのは、日本企業が技術導入には積極的である一方、人材育成や組織変革が追いついていないという現状だ。
こうした調査結果が示す課題に対し、アバナードは複数の段階的なアプローチを計画している。具体的には、システムの分散化に対してはMicrosoft Dynamics365を活用したシングルインスタンスERPの導入とデータ統合基盤の整備を、データ活用の弱さに対してはAzure OpenAIとCopilotを活用したリアルタイム経営分析の実現を提案していく方針だ。
今後の方針として、従来のエンタープライズ市場中心から、より広い成長市場、特に成長市場と同社が位置づける、中堅・中小企業へのアプローチを強化する方針を示した
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