【SUBARU辻氏×IHI福岡氏】稀有なデジタル領域の女性役員2人が“未来のCxO”に贈る「心得」
番外編:「Enterprise IT Women's Forum」レポート(前編)
チャンスがきたら「YES」 自分で可能性を狭めないで
酒井:ここからは、会場の皆さんからの質問に答えていきたいと思います。
──CIOやCDOになったきっかけやターニングポイントを教えてください。
辻:ターニングポイントはいくつかありますが、前職での出来事が印象に残っています。4000億円規模の製造業で、当時は女性の役職者が一人もいなかったんです。日本IBMから転職してきた私は、男女は対等という感覚で働いていたので、きっと浮いていたんでしょうね。
ある日、先輩の女性社員が心配して「そんなに頑張ってもこの会社では女性は絶対に課長になれないから、頑張りすぎないほうがいいわよ」と親切に言ってくれたんです。でも私はそれを聞いて「もう絶対に頑張ろう」と思ったの(笑)。このままでは女性は誰も管理職になれない。だったら私がモデルケースになろうと。
むしろ、長男の嫁で二児の母という立場が、私の強みになると確信しました。「仕事と家庭の両立は無理」とは言わせない。誰もが挑戦できる道を切り拓こうと決意したんです。
福岡:私の場合は自分で壁を作っていました。結婚して子どもがいて、しかも週末婚。そんな環境で管理職なんて無理だと決めつけていたんです。だから管理職試験を勧めてくれた上司にも、「私には無理です」と。それでも「受けなきゃダメだ」と強く言われて。
今、振り返ると、ここで人生が変わりました。仕事の幅が広がり、裁量も自由度も、やりがいも増えました。皆さんにお伝えしたいのは、チャンスが来たら、迷わず「YES」か「はい」と答えてください。自分の可能性を狭めないでほしいです。

CIOは“チーフ・癒し系・お母さん”? 公私ともにプロマネを
──プロジェクトを円滑に進めるために意識していることはありますか?
辻:そもそも円滑なプロジェクトなんてあったかな(笑)。私は、CIO──Chief(チーフ)・Iyashikei(癒し系)・Okasan(お母さん)として、まず組織の中の見えない壁を壊すことから始めました。週2回1時間半の円卓会議では、肩書きに関係なく誰もが議題を挙げられて、自由に発言できる場を作っています。説明してくれた人には必ず全員で温かい拍手を送り、「否定的なことは言わない」というルールを徹底しています。
そしてもう一つ。メンバーがプライベートも含めて心から幸せに暮らしているか。これが私の一番の関心事です。仕事だけにのめり込みすぎると長く続きません。「公私ともにプロマネしよう」と伝えています。
福岡:心理的安全性は大事ですよね。私もまずはその人の良いところを褒めることから始めて、意見しやすい環境づくりを心がけています。このポジションになると、「福岡さんのおっしゃる通りです」と言われることが多くなるのです。いや、「福岡さん、そうじゃありません」と言ってくれと。
もう一つ大事にしているのが、アメリカのチームとの仕事で学んだマインドです。何か問題が起きたとき、アメリカのメンバーは「Unfortunately(たまたま残念ながらそうなってしまった)」を枕詞に報告するんです。一方、日本のメンバーは「申し訳ございません」と頭を下げてしまいがち。自分の責任でもないことまで謝る必要はありませんよね。「そこは、Unfortunatelyでいいのですよ」と伝えています。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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