コンカー前代表の三村真宗氏は3月4日、従業員エンゲージメント向上を支援する「株式会社U-ZERO」を2024年6月に設立したことを発表した。コンカーで実践した働きがい向上の知見をもとに、AIを活用して従業員の声を収集・分析し、経営に反映するSaaS型のAIソリューションとコンサルティングサービスを2025年5月より提供開始するという。
三村氏は、外資系企業を経て、コンカーの日本進出にともない2011年に代表取締役社長に就任。以降、退任する2023年末まで務め、同社の事業拡大、および「働きがいのある会社」ランキング(中規模部門)において7年連続1位の獲得に貢献した。働きがいのある企業として知られる同社だが、社長就任当初は「更迭への恐怖から数字を重視した経営をしてしまった。その結果、社内の混乱や業績低迷に陥っていた」と振り返る。そこで2013年1月に、全社員で合宿を行い5年後の夢を分かちあうことに。そのときに設定したのが「米国外でNo.1の業績になる」「日本のIT企業で最も働きがいのある企業になる」の2つだ。同社は5年かけていずれの目標もクリアする形となった。
三村氏は社員の働きがいを高めることで、業績向上や社員の幸福につながったと分析する。こうした経験をもとに「世の中の企業にも広げていきたい」という思いから、書籍等で情報発信をしてきた。しかし、三村氏は「認知はされるようになったが改革に至っていない」と指摘する。コンカー社長を退任する際は事業ではやりきったという思いがある一方で、日本企業の働きがい改革が道半ばであることに後ろ髪をひかれる思いがあったという。退任後、多くの企業からそうした相談を受けることも後押しとなり、U-ZEROを立ち上げ、社員エンゲージメントの向上に寄与するSaaSツールを提供するに至ったと説明した。
U-ZEROは、組織エンゲージメント改革につながるAI製品やサービス群として「U-ZEROエンゲージメントスイート」を提供する。第1弾として、2025年5月に次のサービスを提供開始する予定だ。
- コンストラクティブフィードバック:従業員の声をAIインタビュアーによる質問で拾い上げてまとめ、組織の課題や強みを可視化するクラウドサービス
- チームシナジーモニタリング:従業員の声をAIインタビュアーによる質問で拾い上げて組織間の課題を明らかにし、「組織の壁」の解消につなげるクラウドサービス
- フィードバックモニタリング:企業におけるフィードバックがどれくらい活発に行われているのか可視化するクラウドサービス
- パルスサーベイ:従業員のストレス状況やモチベーション状況をAIが分析し、従業員のメンタルヘルスの課題の早期発見につなげるクラウドサービス
同サービスは、社員の「声」を収集することに重きを置く。従来、フォーム入力などでVoE(ボイスオブエンプロイー)を収集することが多いが、同サービスではAIアバターとの対話形式で行う。音声データをテキスト化し、AIが解析して、集約。経営層がダッシュボードを見ることで自社の課題を把握したり、部門ごとでの改善策の策定等に活かしたりすることができるという。さらに、人事部門と管理職の業務をAI活用で補助する「エンプロイーエクスペリエンス」の改善を図る機能も開発中で、2026年中に追加することを目指すとしている。

最後に三村氏は次のように意気込みを語った。
「製品の構想・デザイン段階からAIを使うことで開発を進め、至るところでAIを活用している。加えて、プロダクトだけでなく、トータルソリューションとしてコンサルティングと人的サービス、そしてパートナーのエコシステムを提供していく。組織戦略としては、外資系的に最初から大手にアプローチしていく。当面はコンカーの経営手法をプロダクト化していくが、社内に開発者がいるので提供プロジェクトを通じて、お客様のニーズをどんどん取り入れて製品として強くしていきたい」(三村氏)

会見には、富士通 取締役執行役員 SEVP CHRO 平松浩樹氏も出席。同社の管理職研修では三村氏からフィードバック文化を学んできたというが、「マネジメントスタイルやコミュニケーションの文化を変え、エンゲージメントを向上していくことは大変な時間と労力がかかるということに悩んでいた」と話す。そうした課題に対して、AIを活用したU-ZEROのサービスに期待を寄せる。国内8万人の社員に向けて、今後段階的に導入していく考えを明かした。

続いてデロイト トーマツ コンサルティング 代表執行役 神山友佑氏が登壇。企業のカルチャーおよびDXにおける課題分析を行い、ソリューション提案、コンサルティングサービスの提供において協働する予定という。さらに神山氏は「お客様と我々が数年間かけて実現していくプロジェクトの現場に、会社と会社を橋渡しするソリューションとしてU-ZEROのサービスを使わせていただきたい」とコメント。既に、品川区職員の管理職を対象にしたフィードバック文化の研修も共同で実施したことを紹介した。

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