国産液冷技術で挑む高密度GPUサーバーの冷却革新
計算能力をつかさどるCPU/GPUの高性能化に伴い、搭載されるサーバの消費電力・発熱量は飛躍的に増加している。それにより、DC1棟あたりの電力需要も急増し、冷却効率の改善・向上も喫緊の課題となっているのだ。従来の空冷方式では対応困難な熱密度に対し、NTTデータは液冷・水冷技術の積極導入に舵を切った。
2024年11月に千葉県の野田市に開設された「Data Center Trial Field」では、水冷ラックや液浸冷却装置など複数の冷却方式を実環境に近い形で検証可能な環境を整備している。日比谷総合設備と桑名金属工業の協力のもと、データセンターの冷却設備を再現し、複数の液体冷却の装置・サーバーを同時稼働できる環境を提供しているのである。

これらの技術革新を基盤に、NTTデータはグローバル市場での競争・協業戦略も積極的に展開している。つまり、国内技術の優位性を確保しながら、国際市場での影響力も同時に拡大しようとする二正面作戦を推し進めているのだ。

ハイパースケーラーとの協業で加速するAIインフラの拡充
NTTデータの1.5兆円投資戦略において、グローバル市場での競争・協業戦略は極めて重要な位置を占めている。アメリカ、インドをはじめとする海外各地でのデータセンター設立計画が次々と発表され、グローバル展開を加速させているのだ。一方で、AWS、Microsoft、Google、Oracleといったハイパースケーラーは、その圧倒的な規模とリソースを活かし、グローバル市場における存在感を一層高めている現状がある。
進藤氏は「海外市場においては、ハイパースケーラー向けのAIデータセンター需要が圧倒的な規模で拡大しています」と市場動向を語る。
そうした中で、NTTデータはハイパースケーラーとの協業による国内市場での独自のインフラ技術開発にも注力している。Oracleとの提携による「Oracle Alloy」を導入し、クラウドサービス「OpenCanvas」の拡張をおこなう。またAWSとの生成AI活用・ハイブリッドクラウド共同開発など、戦略的な協業を展開している。
一方で、国内のデータ主権確保を目的とした高信頼性データセンターの地方拠点構築も並行して推進中だ。
この「協業」と「独自性」の両立こそがNTTデータ戦略の核心となっている。グローバル市場ではハイパースケーラーとの連携で規模の経済を追求しながら、国内市場では「データの主権」を維持し、日本企業のニーズに応える基盤提供を実現しようとしているのである。
こうした「データの主権」の確立と並行して、企業のクラウド基盤の仮想化市場で混乱している「システムの主権」という課題にも積極的に取り組んでいる。この2つの「主権」確保こそが、NTTデータの戦略の最大の特徴といえるだろう。