デル・テクノロジーズは4月25日、ビジネスでのAI活用を支援するための日本における組織体制の紹介と、サーバーおよびストレージ製品群の機能アップデートに関する記者説明会を開催した。
説明会の冒頭、デル・テクノロジーズ UDS営業本部 本部長 兼 AI事業推進部長 五十嵐修平氏が登壇し、企業のAI活用を支援する組織立ち上げの背景から説明した。

グローバルにおいて、デル・テクノロジーズがAIを活用する上で最も重要だと考えているのが「データ」だという。「当社ではマルチクラウド戦略や近代化されたデータセンターなどをビジネスの主軸に据えている」と五十嵐氏は話す。
デル・テクノロジーズでは、自身を“AIの実験所”として位置付け、グローバル規模で製品の開発やサプライチェーン、営業業務などにAIを活用し、そこで蓄積されたナレッジを顧客向けサービスに展開している。このようなAI活用を推進する取り組みの一つに「THE DELL AI FACTORY」があると五十嵐氏。これは、データからユースケースにつなげるための仕組みを顧客とともに作っていくためのサービスで、これまではグローバルの中でも大手企業やAIに関する先進的な取り組みを行う企業を中心に展開されてきたという。五十嵐氏は「今後はこれを日本の企業にも使いやすく分かりやすい形で提供していきたい」とした。
また同氏は「様々な業務でAIを活用しているが、それぞれ異なるAIモデルやデータが必要となる」とし、AI活用の流れについて「まずは部門横断でPoCを行い、成果が出てきたら企業全体でそれを活用できるためのプラットフォームが求められるという流れがある。この仕組みを顧客とデル・テクノロジーズが一体となって進めていくことが重要だと考えている」と語る。
このような役割を担う組織として、日本のAIスペシャルチームが紹介された。日本のデル・テクノロジーズ社内の各分野における有識者を集い、グローバル・日本のリーダーと連携しながら、日本のエンタープライズの顧客にAIソリューションをインテグレーションして提供する仕組みを構築するという。

具体的な取り組みとしては、海外でAI活用の成功体験を日本に示し、展開することを見据えているという。エコシステムやサービス領域でのユースケースを創出するとともに、「デル・テクノロジーズ自身も日本企業の課題をまずは認識する必要がある。同チームは、こうした情報を社内で集約・共有し、当社が持っているソリューションの中で最適なものを顧客に届ける役割を担っていく」と五十嵐氏は説明した。
続いて、同社 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部長 森山輝彦氏が、同社が注力するデータセンターの詳細を説明した。

森山氏はAI活用におけるデータセンターの課題として、電力の消費が著しく全体で見るとコスト上昇につながること、新たなテクノロジーを取り入れることによる運用の複雑さ、生成AIによるサイバー攻撃の脅威などを挙げた。「守らなければいけないデータをどういう仕組みで守っていくべきなのか、攻めと守りを同時に考えなくてはいけない状況になっている」と指摘する。
システム面の課題に加え、ITに関わる人材不足の課題も深刻化する中、こうした課題を解決するためのキーワードとして、同氏は「シンプル化」「モダナイズ」を挙げた。「当社は、より少ないエネルギーで最大限のパフォーマンスを出せるインフラストラクチャを提供するだけでなく、運用も簡素化できるよう、提供するインフラストラクチャにAI技術を組み込んで運用のシンプル化を図っていく」と説明する。
また、同社はゼロトラストアーキテクチャも提唱しており「サプライチェーン全体でセキュリティのマネジメントを行いつつ、守るべきデータを最も効果的な方法で保護することで、レジリエンスを向上する」とした。
森山氏は、AI時代において、今動いているミッションクリティカルな既存ワークロードを支えつつ、新しいワークロードにも対応していくことの重要性を指摘。そこで同社が提唱するのが「分離型ストレージ アーキテクチャ」だ。
ストレージの潮流に関して、10年ほど前はサーバー・ネットワーク・ストレージの3層構造が主流だったところに、接続や運用管理における複雑性を回避するニーズの高まりから「ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)」が台頭してきた。しかし、HCIはシンプルな構成ではあるものの、クローズドな環境下で特定のベンダーの戦略に左右されやすいという懸念が表面化してきたと森山氏は話す。加えて、HCIにおいてサーバー・ネットワーク・ストレージのいずれかを増やしたい場合、その他の不必要なリソースも同時に増やさなくてはいけないため、「AIの時代では、顧客のニーズによってはコンピュートとストレージのバランスが極端に異なるケースも多くなっている」と指摘する。
「今後、AIの活用がますます進み、今まで以上にデータの量が必要とされるとき、HCIでは限界が来ることに数年前から気が付いた。そこで、当社でこの課題に対応できる次のアーキテクチャを試行錯誤した結果、分離型のアーキテクチャを提唱するに至った」と森山氏は説明した。

この分離型アーキテクチャは、単に3層型に戻るということではなく、HCIのソリューションで培った運用の簡素化などの性能を維持しつつ、コンピュータやストレージなどのリソースはそれぞれスケールアップできるものだとした。加えて、よりオープンな形でエコシステムを維持しながらハイパーバイザーを推し進めることで、クローズドな単一のハイパーバイザーに依存しがちなHCIの課題を解消できるという。
森山氏は「この分離型アーキテクチャに関する詳細は、5月に開催される『Dell Technologies World 2025』でアナウンスできる予定だ」とした。