レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(以下、レノボ)は2025年5月20日、AI時代に対応したエンタープライズITを実現する新しいデータストレージソリューション21製品を発表した。これは同社史上最大規模となるストレージ製品ラインナップの刷新であり、AIワークロードやデータモダナイゼーションへの対応を強化するものである。発表会には、レノボ ストレージセールス担当バイスプレジデントのDavid Mooney氏が登壇し、新製品群の詳細と戦略について説明した。
AIとサイバーセキュリティ、電力効率と高密度化を追求

Mooney氏は冒頭で、AIとデータセキュリティが今日のストレージ業界における2大トレンドであると強調した。「CIOはAIへの投資と同時に、サイバーセキュリティ対策にも注力しなければならない。これらを両立させ、従業員の生産性を向上させることが、持続可能な顧客体験の実現につながる」と述べ、今回の新製品群がこれらの課題解決に貢献するとした。
発表されたポートフォリオは、ストレージ、ソフトウェアデファインドストレージ(SDI)、AI技術、仮想化技術を包括的に含み、企業がオンプレミス環境で独自のデータを活用したAI開発(RAGや推論など)を安全かつ効率的に行えるよう支援することを目的としている。

新製品群は、電力効率と高密度化を重視して設計されている点が大きな特徴である。Mooney氏は、「半導体やI/O技術の進化に伴い、製品はより電力消費量が増加し、高密度化する傾向にある。新製品はこれらの課題に対応し、データセンターのサステナビリティ向上に貢献する」と語った。
具体的には、従来の10K HDD搭載デバイスと比較して最大97%の電力削減と99%の密度向上を実現するモデルも含まれており、データセンターの省スペース化とTCO(総所有コスト)削減に貢献するという。
ThinkSystem DMシリーズおよびDGシリーズ

ユニファイドストレージアレイのフラグシップモデルであり、ブロック、ファイル、オブジェクトストレージに対応し、ONTAP OSを搭載している。前世代と比較して最大2.4倍のパフォーマンス向上を実現するとともに、省電力性と高密度性も大幅に向上しており、データセンターのスペースや電力に制約のある企業に最適である。また、過去6〜9ヵ月でリリースされた最新のセキュリティ機能を搭載している。
ThinkAgile V4シリーズ

ソフトウェアデファインドストレージ(SDI)の全く新しいプラットフォームであり、HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)を新たなソフトウェアソリューションで展開し、高密度化と高性能化を実現する。SDIソリューションのライセンスコスト削減にも貢献する。
ThinkAgile Converged Solution for VMware

Broadcom社のVMware vSphere Foundation(VCF)ソフトウェアに対応したコンバージドソリューションである。HCIをディスアグリゲート(分離)した構成で、VMware環境のインフラコストを最適化しつつパフォーマンスを向上させる。VMwareのサブスクリプションモデル移行によるコスト増に悩む企業に対し、既存のvSphereスタックを維持しながらコスト削減と長期的な戦略検討の余地を提供する。Mooney氏は、「VMwareがサブスクリプションモデルへ移行した結果、コストが上昇したと感じているお客様に向いている。インフラ全体、vSphereスタックから上を全て維持しつつ、コスト削減も行い、長期的な戦略を考える余裕を得ることができる」とコメントした。
AI スターターキット

DGプラットフォーム上に展開される、NVIDIA GPUサーバー、スイッチ、ソフトウェア、NIMブループリントなどを活用したソリューションである。オンプレミスに大量の非構造化データを保有し、自社データを活用したAI開発(RAG、推論など)を安全かつシームレスに行いたい企業向けである。また、HCI環境(Nutanix、VMware、Microsoft)で既にAI活用を開始しており、データ量の増大や消費電力の増加に課題を抱える企業に対しても、高密度・省電力なAIソリューションを提供する。
液体冷却式HCIアプライアンス

ThinkAgile HX/VX/MX 650 V4をベースとした、業界初の液体冷却HCIアプライアンスである。高負荷なAIワークロード処理効率を向上させ、前世代比で最大25%の省電力を実現する。「GPT-in-a-Box」ソリューションとして、フルスタックの生成AIシステムを再現可能な形で提供し、電力コストを削減しながらデータ駆動型のAI推論を高速化する。
Mooney氏は、製品ポートフォリオ全体を通じてデータセキュリティが最重要視されている点を繰り返し強調した。「私たちが販売しているのは、データそのもののセキュリティである。ソフトウェアスタックだけでなく、ハードウェアレベルでのセキュリティ、そしてハードウェアのデリバリーシステム全体でデータの安全性を担保している」と述べ、Lenovo XClarityシステム管理ソフトウェアによる包括的なセキュリティ機能や、AIを活用した自律型ランサムウェア保護機能、改ざん防止スナップショット、ソフトウェアベースの暗号化といった具体的な対策を紹介した。
レノボは、今回の新製品群投入により、企業がAI時代におけるデータ活用の課題を克服し、ITインフラのモダナイゼーションを加速できるよう支援していく方針である。Mooney氏は、「これらのソリューションによって、お客様はAI活用をスムーズに開始し、データの価値を最大限に引き出すことができるようになる」と締めくくった。
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア