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インド現地取材で見えた“オフショアの変化”──「静かな巨人」HCLTechからひも解く

単なる委託から共創へ、日本企業も追随できるか

 AIやクラウドの浸透が企業ITを再定義しつつある今、システムやアプリケーションの設計・運用の在り方も変わってきた。長年オフショア先としても重用されてきたインドにおいては、HCLTech(HCL Technologies)の動向が注目されている。ソフトウェアの開発やハードウェアの設計に強みを持ち、欧米では長年にわたり大手企業の“開発・運用の実行部隊”として信頼を得てきたが、日本市場における存在感は比較的控えめだった。だが今、その「静かな巨人」が、日本企業の開発・運用の在り方に新たな再設計を迫っている。本稿ではHCLTechへの現地取材を踏まえ、この変化にどう向き合うべきかを探る。

1998年の日本進出から25年以上、状況にも変化

 約14億人を抱える大国となったインド。その成長は著しく、「IT大国」と呼ばれることも少なくない。Tata Consultancy ServicesやInfosysなど、米テック企業と肩を並べるほどの企業価値をもつ企業も多く、その一角にHCLTechも位置する。同国では、1970年代には外貨獲得の国策としてソフトウェア産業に光が当たると、経済自由化に向けた規制緩和と共にIT産業の地位が向上。インドを軸とした「グローバル・デリバリー・モデル」が確立すると、IBMやMicrosoftといったグローバル企業の開発・研究拠点が設けられ、そこに従事する従業員規模も本国をしのぐほどの勢いだ。

 その源泉には、豊富な労働力があることはもちろん、数十年の間に蓄積されてきたノウハウやナレッジがある。多くの米テック企業がガレージ(物置)から生まれたように、前述したHCLTechも1976年に創業されており、その2年後には国産8bitコンピューターを開発。以降、受託開発(オフショア)とM&Aにより業績を伸ばしながら、特に米国市場では大手企業との大型契約をいくつも獲得しており、直近ではガートナーのマジック・クアドラントにおいても評価[1][2]されるなど、その業績は堅調に成長を続けている。同社創業者の後継者であり、会長であるロシュニ・ナダー・マルホートラ(Roshni Nadar Malhotra)氏は、「インド国内における人口ボーナスは強みであり、理系人材の多さからも業界を問わずに期待を寄せられている。(AIの台頭により)より高度なスキルやテクノロジーが求められている中、生産性という観点からも、日本企業とは協力関係を構築できる」と現地取材にて述べているように、同社は着実にクラウドやAIといった先端領域における開発・運用スキルをオフショアの中で獲得し、ケイパビリティを拡大している。これはインドのIT産業全体でも同様だ。

HCLTech ロシュニ・ナダー・マルホートラ(Roshni Nadar Malhotra)氏
HCLTech ロシュニ・ナダー・マルホートラ(Roshni Nadar Malhotra)氏

 事実、既に同社はグローバルに220以上のデリバリー拠点、60超のイノベーションラボと呼ばれる研究開発・共創拠点を有している。つまり、グローバル企業は従来のように単なるオフショアではなく、同社がもつ製品設計プロセスや業界特有のドメイン知識などを頼り、上流工程から“伴走者”として重用しているということだ。一方、日本市場においては大きく状況が変わっていない。HCLTechは1998年に日本へと進出しており、NECとの協業などの動きはあったものの、その存在感が大きく増しているとは言い難いだろう。2000年問題の解消において一定の成果をあげたインド企業は多いものの、(日本企業においては)“労働力の調達”という認識から大きく変わっていない。とはいえ、専門人材の不足に課題を抱え、システム環境が複雑性を増している中、HCLTechのような企業から得られるはずの価値を享受できていないことは、DXやAI活用を掲げているようなエンタープライズ企業からすれば、手札を増やせていない状況ともいえる。

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日本企業は「オフショア」の在り方を再設計できるか

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この記事の著者

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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