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交通系ICに一石を投じた「タッチ決済」という選択肢──三井住友カードが挑むMaaS構想の現在地

「180の交通事業者が一つのクラウドでつながる」 移動と消費をつなぐデータ活用の在り方

タッチ決済が地域活性化に? 移動と消費行動をデータでつなぐ

 stera transitがもたらす価値は、タッチ決済の利便性にとどまらない。移動と消費の行動データを結びつけて分析することで、地域の実態をより精緻に捉え、観光や街づくりに活かすための新たな基盤を提供する試みも行っている。

 石塚氏は、「観光統計の多くはアンケートベースで実施されており、実態と乖離しているケースが少なくありません」と従来の観光統計の限界に言及。「我々は、国籍や交通利用履歴といったカード決済データを膨大にもっています。これにより、いつ、誰が、どこで何をしていたのかといったリアルな動きを分析できる環境を整えられると考えています」と語る。

 こうした分析を可能にするツールとして、同社は交通事業者向けダッシュボード「Custella Transit」を開発。利用者の属性や駅周辺の消費動向を可視化できる仕組みを交通事業者に向けて提供している。ただし、交通事業者の中には、データの読み方や使い方のトレーニングを受けた経験がない人も多く、データを活用するための一定の知識を得るところからサポートする必要があることを石塚氏は指摘する。そのため、三井住友カードではただBIツールを交通事業者に提供するのではなく、分析支援や人材育成も含めて包括的にサポートしているという。

 さらに、持続的な地域活性化には自治体レベルでの体制づくりが欠かせない。「地域デジタル化担当のポジションは各地に設けられつつありますが、専門知識を持った人材はまだまだ限られています。外部委託に頼りきると継続的なコストがかかるため、核となる人材を育成し、その人が地域内でナレッジを伝播できる仕組みを作ることが重要です」と強調する。

 MaaSプラットフォームの現在地について尋ねると、「まだ入口の扉をノックした段階」と石塚氏は現状を語る。「首都圏にもまだstera transitを導入していない交通事業者が存在します。まずは『どこでも使える』状態にすることが先決だと考えています。同時に、日本では“タッチ決済で電車やバスに乗れる”という事実がまだ広く知られていないのが実情です。インフラ整備と認知向上の両立が直近の課題ですね」と話す。

 この課題に対し、三井住友カードでは多面的な施策を講じている。会員向けの利用促進キャンペーンをはじめ、街頭広告やリアルイベントでの体験会などを展開。体験会では、カードをかざすだけで改札を通過できるスムーズな体験に対し、利用者からは「それだけでいいの?」と驚く声が上がるという。実際に体験することで、タッチ決済という移動手段の選択肢に可能性を感じる来場者も多いと石塚氏は話す。

 加えて同氏は、長期的な視点から人口減少社会における公共交通の持続可能性にも言及した。

 「テレワークの普及によって公共交通機関を利用する機会が以前よりも大幅に減少しつつありますが、交通インフラそのものが失われると、本当に移動を必要とする人々が困ることになります。タッチ決済とICカード、それぞれの良さを活かしつつ、多様なニーズに応えられる環境を整えることで、地域の交通インフラを守っていくことが重要だと考えています」(石塚氏)

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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