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待ったなし!「新リース会計基準」対応への一手

「強制適用」の新リース会計基準──EYと考える、義務を“戦略”に変える分岐点

迫るタイムリミット、対応のポイントは?

全てのリースが資産に? 新基準の最重要ポイントは……

 新リース会計基準における最大の変更点は、オフバランス処理が認められていた「オペレーティングリース」が原則として、すべてオンバランス(資産・負債計上)の対象となることだ。この変更は、企業の財務諸表に大きな影響を及ぼす。たとえば、航空会社がリースで調達している航空機、小売業が賃借している店舗など、これまで財務諸表に記載してこなかったものがバランスシート上で資産・負債として計上される。

 加えて、新リース会計基準がもたらす直接的な影響について、吉田氏は「総資産に対する自己資本の割合、いわゆる『自己資本比率』が悪化することでしょう」と話す。総資産が膨らむことで資産効率を示す指標は低下し、有利子負債が増加したように見えることで自己資本比率は悪化する。これは投資家からの企業評価に直結するため、経営層はIR戦略の見直しを迫られることにもなるだろう。

 しかし、より実務的で困難な課題は、いわゆる「隠れリース」を特定することだと吉田氏は指摘する。これは契約上「リース契約」ではなく、「サービス提供契約」などとなっているものの中に、実質的に資産を長期間専有して使用する権利が含まれているケースを指す。たとえば、「サービス提供契約で1億円を支払うけれども、そのうち5000万円は実質的に物を借りていることと同様」といったケースだ。これまでは契約の条項が重視されてきたが、今後は“契約の実態”に基づいてリースかどうかを適切に判断する必要がある。

 そして問題となってくるのは、隠れリースを「誰が、どうやって洗い出すのか?」という点だ。吉田氏は、「契約の詳細を一番理解しているのは事業部門の方ですが、必ずしも会計処理に明るいわけではありません。一方、経理担当者は、契約内容を見て『これは実質リースに該当するかもしれないから確認が必要だ』と気づけますが、すべての部署の契約をチェックすることは実質不可能でしょう」と、その難しさを語る。

 この隠れリースを洗い出す初期段階で漏れが生じると、後工程で監査法人から指摘を受けるなど、新リース会計基準への対応プロジェクト全体が大幅に手戻りするリスクが潜んでいる。「(新リース会計基準の導入まで)わずか1年半しかありませんので、時間は限られています。適時、適切な数値作成のプロセスを構築するとなると、企業の複雑性にもよりますが、適用開始時期の半年から1年前にはシステム導入が終わっている必要があります。そのため、手戻りが生じないように初期のアセスメントと調査導入計画の立案が重要です」と語るのは、EY新日本有限責任監査法人で公認会計士も兼務する南教雄氏。初期の体制構築と綿密な計画の重要性を強く訴える。たとえば、情報システム部門においては、クラウドサービスや外部ベンダーとの契約の中に隠れリースがないか、当事者として洗い出す責任があることを認識しなければならない。

失敗しない導入プロジェクト 情報システム部門が果たすべき中心的役割

 「正直、もう危険信号という状況です」──南氏は、対応が遅れている企業への危機感を募らせる。新リース会計基準への対応は、単なる会計処理の変更ではない。リース契約の特定、会計処理の計算、そして継続的な管理に至るまで、業務プロセスとそれを支えるシステムの全面的な再構築をともなうからだ。そこで同氏は、成功に向けた導入プロセスを下記4つのフェーズで説明してくれた。

  1. インパクトアセスメント(影響度調査):まずは、全社にどのようなリース契約(隠れリースを含む)が存在するのかを把握する。財務に与える影響を試算する最初のステップだ
  2. プランニング(導入計画):調査結果に基づき、具体的な調査導入方針を決定し、プロジェクトの全体計画(体制、スケジュール、予算)を策定する
  3. 導入準備:新しい業務プロセスの設計、システムの選定・開発、データ移行などを進める
  4. 最終的な導入:新しいプロセスとシステムでの導入を開始し、運用の定着化を図る

 このすべてのフェーズにおいて、プロジェクトの中核を担う存在となるのが情報システム部門だ。IT部門が主体的に検討すべき論点は多岐にわたる。

 まずは「システムの選定」。市場にはIFRS対応で実績のあるパッケージソフトウェアは存在するが、SAPなどの自社で利用しているERPを改修する選択肢もある。「小売業や飲食業では、既存の賃貸管理システムでなければ、日々の管理が難しい場合があるでしょう。一方、新リース会計基準に対応した会計処理は、シンプルなアプリケーションがあれば十分に対応可能です」と南氏。自社の業務要件や情報システム部門のリソースを再評価し、経理部門と一体となって最適なソリューションを選定する必要がある。

 「何が自社にとって最善なのかを経理任せにせず、情報システム部門として主体的に考えていく必要があります」(南氏)

EY新日本有限責任監査法人 FAAS事業部 財務会計アドバイザリー アソシエートパートナー/公認会計士 南教雄氏
EY新日本有限責任監査法人 FAAS事業部 財務会計アドバイザリー アソシエートパートナー/公認会計士 南教雄氏

 システム選定が終われば、「データ管理体制の構築」が待っている。これまで紙やPDFでバラバラに管理されていた契約書を、会計処理に必要なデータとして一元的に管理する仕組みが不可欠だ。AI-OCRなどを活用したデータ化をはじめ、社宅情報のようなプライバシーに関わるデータへのアクセス権管理など、検討すべき課題は多い。

 そして、最も重要なのが「業務フローの再構築」だ。事業部門で発生するリース契約情報をどのようなプロセスで収集し、経理部門がレビューし、システムに登録するのか。この一連の流れを、IT部門はシステムの視点から最適化し、円滑な情報連携を実現するための役割を担う。南氏は、「リースは関係する部署が多岐にわたるため、会計・経理任せではない、『ITがリードしていくんだ』というくらいの心意気で進めていくことが大切です」と述べる。

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義務対応で終わらせない 「リース会計改革」が拓く経営の未来

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この記事の著者

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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