米Oktaは、現地時間9月24日から26日にかけて年次カンファレンス「Oktane 2025」を開催した。この記事では、Okta CEOのトッド・マッキノン氏が登壇し、「AIセキュリティとは、アイデンティティセキュリティである」と語ったメインキーノートから、この主張の意図とOktaとAuth0の強化ポイントを紹介する。
AIエージェントの適用拡大とセキュリティを両立させる方法とは?
講演の冒頭、トッド・マッキノン氏は、「AIは私たち全員にとって大きな機会である。インターネットの登場以来、最大のプラットフォームシフトであり、モバイル、クラウド、ソーシャルよりも大きなインパクトをもたらす。その可能性は計り知れない」と指摘した。

一方、AIの進化に伴い、企業は大きな悩みを抱えてもいる。それはイノベーションとセキュリティを両立させることだ。AIを積極活用するか、それともセキュリティを万全にするか。ともすれば両極端になってしまうが、やるべきことは明らかだ。両方を実現するしかない。では、どうすれば妥協せずに適切なバランスを取れるのか。Oktaのアプローチは、Okta Secure Identity Commitmentで定めた以下の4つの柱を基本としている。
- 市場をリードするアイデンティティ製品とサービスの提供
- Oktaの企業インフラの強化
- 顧客のベストプラクティスを推進
- 業界水準の向上
この長期的なコミットメントに基づくOktaの取り組みは約2年前から始まった。そして、それはセキュリティ強化だけにとどまらず、AIの潜在的な能力を活かすための強化に約2万時間を費やしてきたという。マッキノン氏は、「Okta Secure Identity Commitmentは、AIセキュリティとAIの未来への鍵を握る」と主張する。この発言の背景には、2025年8月に起きたSalesloftとDriftに関するセキュリティインシデントでの学びがある。Salesloftは営業活動の効率化のためのツール、Driftは会話型アシスタントを提供している。この2つを連携させると、提案資料やトークスクリプトの自動作成が可能になる。ハッカーグループの標的になったのは、Driftが企業のSaaSアプリケーションへの接続で使用していたアクセストークンで、その窃取は大規模な情報漏洩に発展した。
このインシデントから得た学びをマッキノン氏は2つ挙げた。1つはOktaが企業インフラの強化に取り組んできた成果を証明できたことだ。Okta自身は、インフラ設計に防御対策を事前に組み込んでいたため、このセキュリティインシデントを未然に防ぐことができた。これは不幸中の幸いだったと言える。もう1つは、AIエージェントの積極活用をためらう理由に気づいたことだ。AIエージェントを支えるインフラに脆弱性があると、本来の能力を十分に発揮できないだけでなく、適用拡大の阻害要因になってしまう。
AIエージェントは個人、チーム、企業に変わって行動する。ソフトウェアのような存在であり、システムアカウントのような存在であり、人間のような存在でもある。その進化は著しい。過去5年間で、人間の処理時間に換算すると2時間になるものを、AIエージェントは自力で完了できるまでになった。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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