参院を「行政監視院」に
18世紀のフランスの政治家であるアベ・シェイエスは「そもそも第2院は必要であろうか。もし第1院に一致するならば、それは無用であり、一致しないなら害悪である」と指摘した。確かに理想的かつ完全な第1院が存在するのであれば、第2院は不要であり、両院の機能や行動が一致するのであれば、その存在価値はない。
これまで参院は、「不磨の大典」と言われる憲法によって監持されてきた。しかし、「参院無用論」まで登場する以上、今後、参院自体の廃止も含めて、歴史的経緯も踏まえながら、抜本的に再検討する必要があるだろう。
同時に、現段階においては、まず、日本の議会制民主主義の健全な発展のために、そして、「参院無用論」という究極の批判に対抗するために、参院議員自身が襟を正し、自己改革に取り組むべきではないだろうか。
かつて、民主党の中で、参院を「行政監視院」に変えるという思い切った提起がされたことがあった。これは、行政組織の業務を監視、評価するという、言わば「オンブズマン」のようなものだ。参院そのものを「行政監視院」にするためには、当然、憲法改正が必要である。
しかし、長期的視点で考えれば、大変ユニークなものであり、参議院改革の突破口として、考えてみる価値があるのではないだろうか。来る参院選に向け、それぞれの政党が利害得失を超越して、新たな「参議院改革」案をマニフェストにおいて提示することを期待したいものである。(敬称略)
※今回で本連載は一旦、お休みとします。ご愛読いただいた皆様に心から感謝申し上げます。有難うございました。
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丹羽 文生(ニワ フミオ)
1979年、石川県生まれ。衆議院議員秘書、作新学院大学総合政策研究所研究員等を経て、拓殖大学海外事情研究所助教。この間、東北福祉大学非常勤講師等を歴任。専門は政治学。著書に『保守合同の政治学』(共著、青山社)等多数。
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