三菱UFJトラストシステムは3ヵ月で「開発支援AI」を内製化 未経験の若手エンジニアが奮闘
「内製化率を上げてノウハウを蓄積する」危機感から“AI駆動開発”に舵取り
三菱UFJ信託銀行と日本マスタートラスト信託銀行を中心としたシステム開発を担う三菱UFJトラストシステムは、開発力強化を目指して「生成AI」を活用した開発支援エージェント「AIDE(エイド)」を自社開発した。AWS(Amazon Web Services)の「Generative AI Use Cases JP(GenU)」を活用し、若手エンジニア主導でわずか3ヵ月という短期間でのリリースを実現している。その背景にある危機感、そしてMVP(Minimum Viable Product)開発を通した人材育成の挑戦とは。
開発体制に危機感 三菱UFJトラストシステムは「内製化」へ
三菱UFJ信託銀行を中心に、金融機関向けのシステム開発・運用を担っている三菱UFJトラストシステム(以下、MUSK)は、デジタル推進部にバイモーダルIT室を設立。従来の堅牢なシステム開発(モード1)、柔軟かつ迅速な開発(モード2)の両立を掲げ、システムの開発や研究開発を行っている。
そのMUSKが生成AIを用いた開発支援エージェント「AIDE」の開発に踏み切った最大の理由は、外部環境の変化にともなう「開発力の空洞化」への強い危機感にあった。同社では開発内製化を経営方針に掲げているとして、同社 デジタル推進部 バイモーダルIT室を率いる分目竜太郎氏は、「内製化率を上げて技術力を高める、そして新しいことにチャレンジするための余力も捻出する。そのためには生成AIの活用は必須だと考えました。昨今、ビジネスパートナー(BP)もAI駆動開発にシフトしており、『AI活用』が当たり前になっているからこそ、そのスキルやノウハウを内部に蓄積する必要があります」と話す。
システム開発の現場において、生成AIを活用したコーディングやドキュメント作成、いわゆる「AI駆動開発」は急速に普及しつつある。開発を委託するパートナー企業がAIの実装を進める中、発注側であるMUSKがその技術やプロセスを理解していなければ、将来的に開発の主導権を失いかねない。この“技術的な主導権”を確保し、自社の内製化率を高めていくためにも、早期に自社固有の「AI駆動開発基盤」を整える必要があった。
また、単なるツール導入に留まらず、社内のエンジニアやPM(プロジェクトマネージャー)を育成するという目的もある。製品を導入するだけでは得られない、LLM(大規模言語モデル)の特性やプロンプトエンジニアリングの勘所、RAG(検索拡張生成)構築のノウハウについて、自社開発を通じて蓄積することに重きを置くという判断だ。そこでMUSKは、金融機関のDX支援などを行うTrustをPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)および技術アドバイザーとして迎えつつ、実装そのものは2名の若手エンジニアが中心となって行う体制を敷いた。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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