エージェンティックAIは銀行業務変革にどう貢献するか? nCinoが発表した5つのエージェント
「nCino Summit Japan 2025」レポート
役割ベースの5つのAIエージェントを発表
AIはインテリジェンスが宿る場所である。2025年5月にnCinoは、Banking Advisorの提供を開始した。これは銀行員が実務で使えるよう、銀行業務に特化した生成AIスキルスイートとして開発されたもので、すでに多くの金融機関が利用しているとデズモンド氏は話す。次のAIのフロンティアはエージェンティックAIだが、本格的な活用は始まっていない。nCinoでは、顧客が段階的にAI活用を進めることを想定し、構造化データと非構造化を合わせて行内のデータの一元管理ができるデータ接続レイヤーを整備した。
そして、当初の予定よりも早く、2025年11月に提供を開始したのが、銀行業務に携わるプロフェッショナル達を支援する役割ベースのAIエージェント「Digital Partners」である。AIエージェントのユースケースを選ぶ際、注目したのは特定の役割に従事する担当者の業務のやり方である。顧客のnCinoの利用体験を分析し、実行頻度が高く、定期的に繰り返すタスクを対象に、以下5つの役割別AIエージェントを構築した。いずれも銀行員の置き換えを狙って提供するものではなく、業務効率を妨げるタスクからの解放を意図して提供するものになる。
- Executive Digital Partner:経営幹部に意思決定のための戦略的インテリジェンスを提供する
- Analyst Digital Partner:信用アナリストやアンダーライターのリスク評価を支援する
- Service Digital Partner:顧客関係マネジメントを強化し、クロスセルやアップセルの機会の特定を支援する
- Processor Digital Partner:書類、コミュニケーションスケジュール、コンプライアンス要件の検証を実施し、ワークフローのボトルネック解消を支援する
- Client Digital Partner:顧客にセルフサービス型のバンキング体験を提供する
デズモンド氏によれば、米国では、AIの活用の実験を始めた銀行も登場したという。またAIエージェントの共同開発を打診してきた銀行、準備を始めた銀行も現れた。それぞれで状況は違っていたとしても、実現したいゴールはどの銀行も同じだろう。まず、スモールスタート、スモールサクセスが可能な領域を探すところから始めてみることを推奨した。
また、このAIエージェント活用は、パートナーエコシステム全体で追求するべき収益機会とnCinoでは捉えている。まずはインフラパートナー、次に相互にデータをやり取りすることになるアプリケーションパートナー、さらに顧客のテクノロジー導入をリードするシステムインテグレーター、全てが顧客とnCinoにとっての重要なパートナーになる。
この記事は参考になりましたか?
- 冨永裕子の「エンタープライズIT」アナリシス連載記事一覧
-
- エージェンティックAIは銀行業務変革にどう貢献するか? nCinoが発表した5つのエージェ...
- SAPの構造化データ専用モデル「SAP-RPT-1」登場 LLMが解けないビジネス課題を解...
- 選挙への介入だけではない「誤情報/偽情報」問題 4つの対策、ガートナーのアナリストが提言
- この記事の著者
-
冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
