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冨永裕子の「エンタープライズIT」アナリシス

エージェンティックAIは銀行業務変革にどう貢献するか? nCinoが発表した5つのエージェント

「nCino Summit Japan 2025」レポート

Operation Analyticsが提供するビジネス機会のインサイト

 nCinoのAIには、同社がOperation Analyticsと呼ぶnCinoユーザー専用のダッシュボードもある。このダッシュボードは、大きく2つのデータを利用するものだ。1つは、プロダクトアナリティクスのデータで、通常の利用の裏側で、エンドユーザーそれぞれが業務で利用するページ、クリック、ドラッグ&ドロップなどの操作に関するデータを収集している。もう1つはビジネスの実績データである。融資業務であれば、実行までにどのぐらいの時間がかかったか。月当たり何件の融資を実行できたかなどのデータも収集している。2つを統合すると、ワークフローの非効率的な場所の特定や、同じnCinoユーザーでベンチマーク対象として適した他の銀行との比較分析が可能になる。

図2:Operation Analyticsが提供する銀行業務に特化したインテリジェンス 出典:nCino [画像クリックで拡大]

 たとえば、ある銀行の幹部が業務最適化を考えていたとする。Operation Analyticsにログインしてもらい、今年度に処理した法人融資案件が1,000件超。同時に、全ての融資案件中、即日承認されたものはわずか39件、平均承認時間は10営業日だったことがわかった。ここで終わればよくあるBIダッシュボードだが、Operation Analyticsは75%の案件が即日処理できると示してくれる。融資案件の実行スピードは、貸付日数の増加、すなわち貸付利息がどのぐらいになるかと関係する。収益機会予測を金額換算して示してくれるのであれば、経営幹部にとっての意思決定の材料になる。

 nCinoプラットフォームを使い始めると、マニュアルタスク中心のプロセスから、デジタルで共同作業を行う職場への移行が始まる。それだけでも効率化は可能だが、Operation Analyticsを通して、より広範なデータにアクセスできるとわかると、自行だけでは気づくことの難しかった新しい機会を発見できる。効率化によるコスト低減の機会もあれば、収益増加の機会も得られる。デズモンド氏は「ビジネス機会の金脈は、普段の業務の中にあることを理解してほしい」と語り、Operation Analyticsがその糸口となるインテリジェンスを提供すると説明した。

 変革とは、既存の業務を再構築するプロセスである。講演を締めくくるにあたり、「今回は見送ろう。今まで馴染んできたやり方が私たちのやり方だからと、現状維持を選択する余地は残されていない。競合との差別化のためには何をするべきか。その一歩を一緒に考えたい」とデズモンド氏は呼びかけた。変化を選択することが、新しいビジネス機会の獲得、そしてそのさきの成功につながる。nCino自身も前述のDigital PartnersのようなAIを活用した機能を洗練させていく取り組みを続ける。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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