2027年「新リース会計基準」強制適用へカウントダウン マネーフォワード経理部から学ぶ「4つの要諦」
監査法人との連携は前倒し、決算繁忙期は回避する……2年前倒しの早期適用事例をひも解く
2年前倒しの早期適用に成功、その秘訣は? 留意すべき「4つの要諦」
マネーフォワードが新リース会計基準の早期適用を実現できた背景には、組織体制と徹底した「デジタル化」があった。同社はいくつものグループ会社を抱えているが、日本国内のグループ会社の経理業務は、基本的に親会社の経理組織が受託する形をとっている。これにより、会計システムや勘定科目、業務プロセスをグループ全体で統一できていた。通常、親会社が方針を決めても、各子会社の経理部門ごとにシステムや業務フローが異なれば、説明や調整だけでも膨大なコミュニケーションコストが発生する。また、自社のSaaS群でシステムを統一しているため、グループ全体の経理・財務処理を効率的に行える環境も整っていた。
さらにベトナムとインドにある海外子会社については、他社の会計システムを使用していたものの勘定科目を本社側で統一。現地スタッフの計算ミスを防ぐため、既存会計システムのリース対応モジュールを活用することで、データの信頼性を担保している。加えて、「マネーフォワード クラウド連結会計」を利用してデータを収集する際には、「セール・アンド・リースバックの有無」「変動リースの有無」など、見落としがちな項目を網羅した報告フォームを設計することで、手戻りのリスクを最小限に留めたという。
他にも債務管理システムから契約書や稟議書にアクセスできる環境が整っていたことも、スムーズなリース判定の実現につながった。「リース判定のために『契約書を共有してください』と伝えても貰えないことは起きがちだが、あらかじめ契約書をワンクリックで取り出せる環境があったおかげでスムーズに進められた」と松岡氏。これまで取り組んできた経理DXの成果が表れると話す。
「新リース会計」導入における“4つの落とし穴”
松岡氏は、自身の過去のIFRS導入経験、そして今回の早期適用プロジェクトを通じて、多くの企業が陥りやすい「落とし穴」について具体的なアドバイスを述べた。下記4つの観点は、これから適用準備を進める担当者にとって参考となるだろう。
1. 年度末決算との重複による「監査・開示リスク」
早期適用において最も懸念された点は、新リース会計基準の適用初年度の第1四半期決算作業が、前年度の年度末決算作業と時期的に重なったことだ。マネーフォワードの場合、11月決算のため、新基準適用の12月〜2月は前年度の決算作業で繁忙を極める時期にあたる。監査法人も同様に多忙であり、もし新基準にともなう変更箇所を監査法人が十分にチェックできないまま開示に至った場合、訂正報告のリスクが高まってしまう。松岡氏は「監査法人が繁忙期に入る前にチェックを依頼すべき」とし、決算期前の早い段階から台帳を提示し、監査手続きを前倒しで進めることを強く推奨する。
2. 方針決定の遅れによる「プロジェクト停滞」
新リース会計基準には解釈の余地がある項目が複数存在するものの、これを「AにするかBにするか」迷ったままズルズルと先送りにしてしまうことは避けなければならない。スムーズに現場の実務作業を動かすためにも、松岡氏は「プロジェクト担当者が『Aで行く』と早期に決断し、それを前提に走り出すことが重要」と説く。議論に時間をかけすぎず、決断を下して前に進める姿勢が期限内の完了には不可欠だ。
3. データ収集項目の定義漏れによる「手戻りの地獄」
リース管理台帳を作成する際、何百件もの契約書を確認してデータを入力した後に「開示に必要な情報が足りなかった」となってしまえば、大きな手戻りを招く。これを防ぐためには、最終的な開示後のゴールから逆算し、必要な項目を初期段階で網羅的に定義しておく必要がある。
4. 適用開始後の「変更プロセス」の欠落
会計基準の適用においては、適用初日にあたる「期首残高」を確定させることに全力を注ぎがちだ。しかし、本当に重要なのはその後の運用である。「新規のリース契約が発生した」「契約が変更・解約された」など、どのように情報を連携してリース管理台帳を更新するか、そのプロセス設計が抜け落ちてしまうことが多い。「期首に集中しがちだが、その後に発生する変更を漏らさないためのプロセス構築が何より重要」と松岡氏。運用を見据えた準備こそが大切だとする。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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