“全銘柄停止”の悪夢から5年──CIOが「4代目株式売買システム」で見据える“攻めのJPX”への道筋
復旧時間を150分から90分に:システムへの過信を捨てたレジリエンス向上の軌跡
“攻めのJPX”へ:「Target 2030」に向けたCIOの戦略
富士通との関係性を象徴する出来事として、田倉氏はarrowhead4.0稼働後のパーティーでの一幕を振り返る。田倉氏が「arrowheadは、我々と富士通さんの『誇りと責任感』のたまものだ」とスピーチしたところ、富士通の現場リーダーから訂正が入ったという。
「『田倉さん、誇りと責任感と“愛”ですよ』と言われたのです。確かに、自分の仕事に責任感と誇りを持ち、さらにそこに『愛』がなければ、これだけの品質は生まれない。この言葉には深く納得しました」(田倉氏)
実際に稼働から1年以上が経過したが、arrowhead 4.0は過去の世代と比較しても高い品質で稼働を続けており、不具合は極めて少ないという。
JPXは長期ビジョン「Target 2030」において、「グローバルな総合金融・情報プラットフォーム」への進化を掲げている。伝統的な取引所としての安定稼働が求められる“守り”の領域に加え、デジタル技術を活用した新たな価値創造となる“攻め”の領域にも注力しているところだ。
そのカギを握るのがデータ活用とクラウドである。これまでは専用回線を持つ特定の市場参加者や顧客にのみデータを提供してきたが、今後はクラウド上のデータ基盤「J-LAKE」や外部プラットフォーム(SnowflakeやAWSなど)を活用し、より広く、多様なユーザーへ情報を届けることを目指している。
たとえば、証券会社のバックオフィス業務では、様々なところから来るデータを人手で集約・加工している。これらのデータをクラウド上で集約し、構造化した状態で提供できれば、業界全体の業務効率化やBCP(事業継続計画)にも貢献できるだろう。田倉氏は「こういった取り組みこそが、まさにこれまで十分に満たされてこなかったニーズに応えるイノベーションの一例だと捉えています」と説明する。
今こそIT部門が輝くとき──仕事に“誇りと愛”を
ビジネスを伸長させ、持続的な社会貢献を実現するために、AIやデジタル技術の活用はあらゆる企業にとって不可欠なものになっている。その結果、かつてはヒエラルキーの底辺と揶揄されることもあったシステム部門が、今や経営の意思決定を支え、ビジネスを推進する中心的な存在になりつつある。田倉氏は最後に、IT部門で奮闘するリーダーたちへ次のようにエールを送った。
「ITは今や会社の推進力そのものです。言われたことをやるだけでなく、そのシステムが経営目標の何を実現するためのものなのか、目的を深く理解し、責任感を持って取り組むこと。そしてそこに『誇りと愛』を持つことが、より良い仕事につながっていくと信じています」(田倉氏)

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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