トランプ関税で露呈した、日本企業の「税務機能」の弱さ──主導するのは財務部門?自社の税務を再定義せよ
「EY Finance Summit 2026」レポート Vol.2
小手先の改善で終わるな、税務機能を再定義せよ
ここまでを踏まえて、税務・財務部門は何を目指せばよいのか。間違いない事実として、葉氏は「オペレーティングモデルの変革が急務である」と改めて強調した。
変革の優先手段として上位に挙げられるのは、先述したAIを活用した社内自動化の推進と、データ・AIに強みを持つプロバイダーとのコソーシングだ。実際、外部との協働に踏み出した企業からは、「高付加価値業務への注力にシフトできた」「法規制対応や税務リスク管理の俊敏性が向上した」といった成果が報告されているとのことだ。
企業ごとに変革の現在地は様々だが、全体として「税務機能の再定義」に関する相談はグローバル企業を中心に急増していると山口氏。「“現状+α”程度の改善では、長くは続かない。長期的な目線で理想像を先に設定してから、施策を設計していくことが望ましい」と語る。それに合わせ組織形態も、税務部門の独立、コンプライアンスと企画の機能分離、税目別のチーム再編など、多くの顧客が自社の実態や目的に応じた設計を進めている最中だという。
続いて進谷氏は、税務の目指す姿を「ディフェンス(守り)からオフェンス(攻め)へ」という言葉で表現した。従来の税務では、税務申告書の作成や税務調査対応といったディフェンス面が重視されてきたが、これからはビジネス、すなわち企業成長にどれだけ貢献できるかがポイントになるという意味だ。
では、攻めの税務とは何か。具体的に求められるのは、サプライチェーンの見直しが必要な局面で税務インパクトや財務諸表への影響を短時間で分析・提供できる体制、M&Aや組織再編の場面でインセンティブの活用可否を、実効税率管理を通じてアドバイスできる機能だと進谷氏。その土台として、まず各国の税務データを収集・分析できる基盤を整えなければならない。
これらの挑戦においても、やはりAIの活用とコソーシングは鍵になるとのことだ。また、個社単位でのAI開発と投資はリスクが大きく、EYのような外部と連携してナレッジを共有するビジネスモデルが有効だと付け加えた。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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