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トランプ関税で露呈した、日本企業の「税務機能」の弱さ──主導するのは財務部門?自社の税務を再定義せよ

「EY Finance Summit 2026」レポート Vol.2

AIは税務の高度化に必要だが、多くの企業は”Excelの呪縛”からも解放されていない

 ここからは、冒頭に進谷氏が言及したAIなどテクノロジーの活用について議論が行われた。まず葉氏は、国内外の企業に対し「今後2年間でAIが税務部門に最も大きな影響を与える分野は何か」と尋ねた調査の結果を示した。そこでは、以下の3分野が上位を占めた(図3)。

  1. データ取得とクレンジング
  2. 効率的な税務コンプライアンスを実現する自動化の推進
  3. 分析とシナリオプランニング
図3
図3

 「これらは決して先進的な企業だけの取り組みではなく、グローバルで競争力を維持するための必須手段となっている」と葉氏。ただし、AIを使いこなすために必要なデータの不足、人材の不足、そして最新テクノロジーに対するセキュリティの懸念が、導入障壁として立ちはだかっている点は否めない。

 なお、税務業務におけるAIの活用は、大きく2つの領域に分かれるという。1つ目は業務プロセスの効率化、2つ目はナレッジの集約・活用だ。ここでEY税理士法人の山口君弥氏が、それぞれの領域で既にAIを税務に活用している事例を紹介した。

 まずは業務プロセスの効率化について。EY税理士法人が提供するJ-CFC(外国子会社合算税制)業務のサービスでは、そのプロセスにAIを取り入れているという(図4)。これまで、海外の子会社から各国言語でまとめられた財務諸表をシステム上で収集した後は、手作業で情報を抽出していくのが当たり前だった。しかし、このサービスではAI-OCR(光学的文字認識)と生成AIを組み合わせ、情報抽出から集約・ワーキングペーパーへの自動転記までを一気通貫で自動化している。

図4
図4

 次に、ナレッジの集約・活用では以下3つの事例が示された(図5)。

  1. AIによる帳票の異常検知・分析
  2. 税務相談AIチャットボット
  3. 機械学習(ML)を用いた固定資産改修に係る費用・資産計上判定
図5
図5

 これらは、単なる工数の最適化だけでなく、税務機能の品質向上にも資する取り組みだ。現在の技術進化レベルでも十分に実現が可能である。

 とはいえ、多くの企業が試験的なAI導入は組織内のどこかで推進していても、税務部門で本格的に導入できる段階にはないことも事実。山口氏によれば、課題となっているのはやはりデータとナレッジの整備だという。そこがクリアできない限り、どうしても検討が行き詰まってしまうケースが多い。これに対し同氏は、「税務専門のAIを本格開発することは一企業の力だけでは難しく、EYのような外部のプロフェッショナルとの協働が現実的な解決策ではある」と述べた。

 関税対応の領域でも、輸入通関データを活用してリスクや機会を抽出するプロジェクトが増えているようだ。原岡氏は、チャットボットや機械学習などといったテクノロジー活用の議論が様々なクライアントと活発に行われていることを明かした。

 ただし、やはりそうした技術論の前にはデータとプロセスの整備という課題が立ちはだかる。進谷氏は、多くの日本企業が抱える“Excelの呪縛”を指摘する。30年以上積み重ねたExcelのワークファイルが1,000~2,000本にも膨らんでおり、新入社員がその仕事術を習得するだけで相当な時間を要しているような状況だ。そこで、AIやテクノロジーをいきなり導入するのではなく、「まずはExcelを半分か、3分の1くらいの量まで整理してほしい」というExcelワークファイル効率化についての要望が多いという。

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小手先の改善で終わるな、税務機能を再定義せよ

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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