民主主義世界のAI主権を勝ち取れ!元NATO事務総長/元デンマーク首相が新共同体「D7」創設を訴える
独裁と覇権主義にテクノロジーの主導権を握られてよいのか? 民主主義陣営は団結と信念を試されている
新たな民主主義陣営の同盟「D7」を結成せよ
ラスムセン氏は、民主主義国家が未来を勝ち取るために果たすべき3つの責務を提唱した。
第一に、防衛と抑止へ投資すること。これは対立のための抑止力強化ではなく、独裁的なリーダーは弱き者の脆弱性につけ込み利用しようとするからこそ、日本とEUはハードパワーを強化しなければならないという意味だ。「平和とは抑止されるものなのだ」と同氏は指摘する。
第二に、「民主的なテクノロジー主権」を築くこと。グローバルでの戦場を生き残るためには、技術的な依存が不可欠だ。安全な半導体のサプライチェーン、共通のイノベーションと標準、信頼と共有が可能なデジタルインフラを確保しなければならない。民主主義国家は、デジタル時代における自由を守るための技術基盤を構築すべきだと同氏は訴えた。
そして第三に、新しい時代のための民主主義同盟を構築すること。ロシア、中国、北朝鮮といった独裁国家側は、ますます協力関係を深めている。民主主義側も強い決意をもってこれに対抗しなければならない。
そこでラスムセン氏が提唱するのが、G7ならぬ「D7(Democratic 7)」の創設だ。構成国・地域は、日本、EU、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国。「日本はこの同盟の中心的な存在となるべきだ」と同氏。そして日本とEUは、自由で開かれ、繁栄かつ安定した民主的な社会のモデルを代表する存在だと改めて強調した。
自由や平和と同じく、テクノロジーは勝ち取るもの
ラスムセン氏は、最初の問いである「未来は、誰のものか」を改めて聴衆に投げかけた。ある人々は、「最も多くのデータを支配し、最も速いチップを持ち、最も大きいAIモデル、最も深い計算能力、そして巨大な産業規模を持つ者が未来を決定づける」と主張する。
しかし、「テクノロジーだけでは未来は決まらない」と同氏は反論する。未来を決めるのは“価値観”だという。そして、その価値観とは民主主義、法の支配、イノベーション、平等な機会、透明性を愛する民主的な力の基盤とも言えるものだ。独裁体制は、こうした価値観が世界に広がることを恐れている。民主主義の団結を恐れている。
「独裁政治は『服従』を生み出すことはできても、『正当性』を生み出すことはできません。独裁は『信頼』を育むことはできません。そしてイノベーションの燃料となる、『創造性』や『開かれた議論』を育むこともできません」(ラスムセン氏)
もちろん民主主義社会は、お世辞にも“完璧”と言えるものではない。ある意味、あらゆる面で“不完全”だと言えるかもしれない。しかし、人類がこれまで目にした、経験した中では、最も偉大な進歩の原動力であり続けていることは確かだ。
世界は不確実性をより強めているが、ラスムセン氏は「民主主義陣営の団結によって、21世紀の新たな秩序を築けることを確信している」と力強く訴え、今、我々が下す決断が次の世代を定義することになると警鐘を鳴らした。
最後に改めて「未来は、誰のものか」──それは、“未来に備える人々”のものだ。未来に向けて投資する者、守る者、信じる者……。自由はタダではない、平和とは受動的に訪れるものではない。勝ち取るものだ。テクノロジーも同様である。勝ち取らなければならない。自分たちの価値観によってテクノロジーを導かなければならない。
断片化よりも協調を、躊躇ではなく力強さを、安住よりも勇気を。日本やEUをはじめ、民主主義を信じる者たちに向けて、ラスムセン氏はメッセージを送った。
この記事は参考になりましたか?
- EnterpriseZine Press連載記事一覧
-
- 民主主義世界のAI主権を勝ち取れ!元NATO事務総長/元デンマーク首相が新共同体「D7」創...
- 孫正義の「AIぶっ込み」どう思う? LINEヤフー川邊会長・元ヤフー社長 小澤氏が見るAI...
- Pure Storageが社名から「ストレージ」を消した日──Everpureへの改名が映...
- この記事の著者
-
名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
