フォーティネットジャパンは2026年5月28日、日本市場における事業戦略説明会を開催した。今年度の同社は、「サプライチェーン全体を守るセキュリティ」を市場へ提供することを大きなスローガンとして掲げた。
まず、フォーティネット(Fortinet)を取り巻く近年の市場動向としては、VPNの脆弱性がより深刻な問題となったことにより、ついに境界型防御の限界が現実となってきている点、それによるゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)やSASEのニーズの高まりといった動きが大きなシフトとして挙げられる。これに対し、同社も次世代ファイアウォールを基盤とした統合プラットフォーム「FortiGate」や、同製品と同じ独自OSを基盤とする「FortiSASE」といった製品で応えてきた。

同社でフィールドCISOを務める登坂恒夫氏は、SASEの導入形態には大きく「フルクラウド型」と「ハイブリッド型」があるとした。多くの企業が現実解としてクラウドとオンプレミスのハイブリッド環境に帰着しつつある中で、導入やコスト設計においても比較的難易度が低いハイブリッドSASEの需要が非常に高まっているとのことだ。
さらに直近の市場動向として、サイバーセキュリティ各社が“AI for Security / Security for AI”のニーズに応える製品を相次いで発表している点もパラダイムシフトを象徴する動きといえる。AIを活用した「エージェンティックSOC」への変革、さらには新たにアタックサーフェスとなったAIエージェントやAIシステムを保護するための製品・機能である。もちろん、フォーティネットもこのニーズに応える製品や機能群を既に複数発表している。
本題の事業戦略については、同社 社長執行役員である与沢和紀氏から説明があった。同社が今年度掲げる「サプライチェーン全体を守るセキュリティ」とは、いったいどういう意味か。
日本市場におけるフォーティネットは、よく比較対象として挙げられる他の大手セキュリティベンダーに比べて、中堅中小企業で非常に大きなシェアを有している点が特徴だ。たとえば、中堅企業は2025年時点で約50万社国内に存在するとされるが、そのうち「アンチウイルス以外のセキュリティ対策」が施されている企業の半分は、FortiGateを導入しているとのことだ。
この中堅中小企業からの高い支持率を引き続き伸ばしつつ、今後は大企業(エンタープライズ)への攻勢をさらに強めていこうというのがフォーティネットジャパンの方針だ。これにより、大企業からそのグループ会社、サプライヤーに至るまで、まさにサプライチェーン全体をカバーすることが可能となる。多くの競合他社がもともとはエンタープライズ中心に導入を広げてきたのとは逆のアプローチである。

そのために営業体制も最適化した。今後は、大企業に対してはフォーティネットのセールスとエンジニアがダイレクトに接点をもって支援する体制をとり、パートナーを通じた提供は主に中堅中小企業にフォーカスしていくという。それにあわせて、エンタープライズ支援のためのセールスとエンジニアの体制を大幅に増強していくと与沢氏は述べた。
フォーティネットの持ち味は「スピード」にあると与沢氏。大企業本体からグループ会社、さらには周辺のサプライヤーに至るまで、それぞれの企業規模やリソースといった事情も踏まえつつ、サプライチェーン全体にわたる一気通貫の支援をフォーティネットが伴走して手掛け、大規模なセキュリティ環境を素早く、かつ地に足のついた施策で顧客とともに実現していくとした。
そんな同社が技術的な強みとしているのが、あらゆる製品を独自の単一OS「FortiOS」上で提供している点だ。先述のSASEをはじめとするフォーティネット製品はもちろんのこと、「Fortinet Security Fabric」と称するオープンな連携基盤設計により、FortiOSを基盤として他社製品も統合して一元管理できる。運用効率化だけでなく、ネットワークの安定性などといったパフォーマンス面も高品質を維持できるとのことだ。

そんな技術基盤であるFortiOSの最新バージョン(FortiOS 8.0)では、Security for AI / AI for Securityどちらの製品・機能群も実装済みだ。もちろん、同社が従来から提供しているSD-WAN(拠点やクラウド間のネットワークをソフトウェアで一元管理・制御する技術)やOTセキュリティ製品もSecurity Fabricのエコシステムに含まれている。

サポート体制の具体的なメニューとしては、フォーティネット製品の設計から導入・構築、運用、さらには最適化、高度化に至るまでのライフサイクル全体を直接サポートするほか、各社に最適化されたOTセキュリティの実装・運用サービス、加えて日立とNECの合弁会社であるアラクサラネットワークスの買収によって新設された新ブランド「FortiSwitch-AX」により、単なるネットワークにとどまらないインフラ構築支援が可能になった点が強調された。製品はすべて自前で研究開発し、顧客ごとに最適なメニューと製品の組み合わせを用意しているという。

副社長執行役員の竹内文孝氏は、改めて同社のスローガンとなっているサプライチェーンセキュリティの話に戻り、その重要性について次のように述べた。
「サプライチェーン全体で価値を高めていくというのは、それを構成する大企業から中小企業、さらには各拠点や生産現場までの情報をつなげて、その情報を利活用することで新たなものを生み出していくということです。しかしこの情報の流れが阻害される、あるいは不安定になると、この価値を生むことが不可能となります」(竹内氏)
フォーティネットとしては、「リスクがコントロールできているからこそ、サプライチェーン全体で勢いを弱めずに新しい価値を生み出していける、攻めの経営判断ができる」といった状態を実現・維持できる情報流通基盤を提供していきたいと竹内氏。この考えに基づいて、従来から同社が強みとしているネットワークセキュリティに加え、AIセキュリティなどの新たな製品もリリースされている。

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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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