サイバーセキュリティの古豪OPSWATが、2026年6月17日に都内で事業戦略説明会を行った。東京でのツアーイベント「OP/X Tokyo 2026」開催に合わせて来日していた、創業者兼CEOのベニー・ザー二ー氏も登壇した。
皆さんがご存じのとおり、セキュリティの世界はパラダイムシフトの真っ只中にある。AIやLLMが自動でサイバー攻撃を生成しつづけ、Claude MythosなどのフロンティアAIが簡単かつ高速に未知の脆弱性を発見してしまう。また、IoTデバイスなどを標的に、充電ケーブルを偽装したハッキングデバイスが市場に流通するなど、我々は「どんな脅威から、何を優先的に、どう守ったらよいのか」未だかつてないカオスな状況に立たされている。
特にMythosが出現した際には、日本でも金融庁が緊急声明を発出するなど、異例の動きが各政府機関や産業界で見られた。重要インフラを担う企業・機関が一瞬で脆弱性を突かれ、システム停止に追い込まれてしまう可能性があるのだから無理もない。OPSWATもまた、こうした重要産業に製品を提供する企業だ。同社は、守るべき重要インフラ産業に新たに「宇宙」を加えた。

そして、LLMやAI、データを保護するSecurity for AI、IT環境をAIのスピードと規模で保護するAI for Securityの両面で、同社のプラットフォーム「MetaDefender」の強化・拡張を進めている。

特に大きな動きとしては、予測型のマルウェア検知エンジン「Predictive Alin AI」の開発が挙げられる。実行前のゼロデイ攻撃などを、ファイルを開いたりサンドボックスで実行したりする前に検知・解析し、事前にブロックできるLLMベースのアーキテクチャとなっている。既存のAVエンジンは、「悪意あるコンテンツを予測する」という観点では、著しく精度が落ちてしまうという課題があったようだ。

また、ミリ秒単位での検知・解析により、システムフローを妨げずにリアルタイムでファイルを保護できるほか、オフライン環境でも動作するため、厳格なセキュリティ環境にある重要インフラ産業でも問題なく導入可能とのことだ。対応ファイルについては、今後順次拡大していく予定だとした。

続いて、プラットフォーム上で新たな製品「MetaDefender Aether」が国内でも提供開始された。ネットワークの境界において従来VM(仮想マシン)の検知を回避するようなマルウェアに対しても有効な、命令レベルのCPUおよびOSエミュレーションによる高度な動的解析(サンドボックス)と、脅威インテリジェンス・脅威ハンティング機能を統合したゼロデイ検知ソリューションだ。

サンドボックスの情報と脅威インテリジェンスを、「Aether AI」がブレインとなって統合的に分析し、高い精度で脅威を評価・判断するという。

MetaDefender Aether 構成レイヤー
- 脅威レピュテーション(検知率 48.7%):OPSWATのグローバル脅威インテリジェンスデータに基づきファイルを評価。既知の悪意あるファイルは即座にブロック、信頼されたファイルを優先的に処理
- サンドボックス(検知率 83.4%):より詳細な検査が必要なファイルは、アダプティブサンドボックスに送られる。120種類以上のファイルタイプに対応。先述のCPUとエミュレーションにより、完全な実行パスを明らかにする。VMの検知を回避するマルウェアの挙動も検知し、侵害の痕跡を発見すると脅威レピュテーションのレイヤーにフィードバックを行う
- 脅威スコアリング(検知率 99.3%):複数の機械学習(ML)エンジンにより、行動シグナル、異常パターン、侵害の痕跡を分析し、分析結果の信頼度を反映したスコアリングを算出する
- 脅威ハンティング:類似性検索により、1億件以上の解析済みマルウェアサンプルのデータベースに対して、行動パターンのフィンガープリントをマッピング。ファイルを既知の脅威、攻撃キャンペーン、攻撃ツールキットに自動分類する。未知のファイルは新たな脅威インテリジェンスへと変換される
続いて同社 日本法人でカントリーマネージャーを務める髙松篤史から、日本市場の動向と事業戦略について説明があった。
日本においては現在、公共・金融・製造・社会インフラの4分野に特に注力していると髙松氏。公共では、既に全国自治体の約70%がOPSWAT製品のユーザーであるほか、直近では省庁、警察での導入が拡大しているとのことだ。続いて金融業では、メガバンクやネット銀行、カード会社などを中心に導入されているという。
そして近年、製造業からの引き合いが急増しているようだ。重要産業となった半導体や、電機、重工業、製薬業界が主な例として挙げられた。さらには、運輸、航空、電力、ガスなどの社会インフラにおいては、外部メディアからの持ち込みメディア(USBメモリ、SDカードなど)をスキャンする端末製品「Kiosk(キオスク)」などの導入が順調に進んでいるという。
IT製品の領域では、グローバルと同じくDeep CDR(Cloud Detection & Response)、先述のPredictive Alin AI、MetaDefender Aetherなどのファイルセキュリティに特に注力していくとのこと。そしてOT製品領域では、Kioskのほか、ネットワーク間の通信を分離・保護するゲートウェイ製品「Netwall」の需要が高まっているとした。加えて、F5やA10、Sky、ソリトンシステムズなどといった他社の製品とのアライアンス連携も強化を進めている。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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