AIエージェントにどこまで任せていい?社内データとAIをつなぐ「データ連携基盤」が統制の役目担う
情シスに依頼殺到のデータ連携作業……AIによるサポート機能で“現実的な民主化”へ
生成AIの進化にともない、企業のAI活用は単なる情報検索や業務補助を超え、自律的にタスクを遂行する「AIエージェント」へとシフトしつつある。こうした活用を実務に定着させるうえで鍵となるのが、基幹システムやクラウドサービスとのデータ連携だ。一方で、AIの活用範囲が広がるほど、権限管理やデータガバナンスをどう維持するかは情報システム部門にとって避けて通れない課題となる。本記事では、19年連続国内シェアNo.1(※)で1万社以上が導入するデータ連携基盤「ASTERIA Warp」を提供するアステリアに、AI時代に押さえておきたいデータ連携の極意を聞いた。同社が2026年8月31日にリリースする新バージョン「ASTERIA Warp 2608」の新機能を中心に、AIエージェントを安全に運用するためのガードレール設計と、現場のデータ活用を両立させる具体的なアプローチを解き明かす。(※テクノ・システム・リサーチ「2025年ソフトウェアマーケティング総覧 EAI/ESB 市場編」による)
便利になる反面、リスクも……「運用の制御」が必須に
企業におけるAI活用は、チャット型の生成AIによる翻訳やアイデア出しといった用途から、業務の判断や処理を自律的に実行する「AIエージェント」へと広がりつつある。実務で活用するときに前提となるのが、社内システムとの連携だ。ERPやCRM、ファイルサーバーやクラウドストレージ、コミュニケーションツールなどに蓄積されたデータにアクセスし、更新まで行えなければ、業務プロセスとして成立しない。
アステリアでデータ連携ツール「ASTERIA Warp」のプロダクトマネージャーを務める東海林賢史氏は、オンプレミスからSaaSに至る流れを踏まえつつ、「AIもデータがなければ機能しない点はこれまでと変わりません」と話す。一方で、AIエージェントの普及によって課題の焦点は、連携の可否から運用の制御へと移りつつある。人が介在しないままデータにアクセスして更新できるようになることで、どのデータに触れさせるかだけでなく、AIが生成した結果をどこまで信頼し、どのように取り込むかという運用上の判断が問われているという。
そのうえで、単にAIに社内データを読み込ませるだけでなく、適切なコンテキスト(文脈)として渡すための前処理や、AIの出力結果を基幹システムに反映する際の後処理など、データ連携で必要なことは増えている。従来のように、人間が画面操作を行いシステムに入力するプロセスをAIで代替しようとすると、接続先のAPI管理や権限設定の複雑化が一気に表面化するためだ。
この変化に対して、企業のITインフラを担う情報システム部門は、リスクを理解した設計が求められている。とりわけ重要になるのが情報セキュリティだ。AIが機密情報にアクセスし、意図しない形で外部に出力してしまう可能性をどう抑えるかは、現場で具体的な対応が求められている。そのため、データへのアクセス範囲や操作権限をどのように制御するかが、設計上避けて通れない要素だ。
加えて、データの正確性に対する懸念もある。東海林氏は「会計システムに書き込まれる売上や利益の数字が間違っていたら監査でも指摘を受けるし、あってはならないことです。AIがハルシネーションで数字を間違えてそのまま取り込んでしまうと、収拾がつかないほど影響範囲が大きくなる懸念があります」と強調した。AIの出力をどの段階で検証し、どこまで自動処理に委ねるのか、それを前提とした運用設計が求められている。
“ガードレール”として機能する「データ連携基盤」の有用性
リスクを抑えながらAIを活用するための設計として有効なのが、AIと社内システムの間に「データ連携基盤」というレイヤーを挟む構成だ。AIに社内システムを直接操作させるのではなく、データ連携基盤をゲートウェイとして配置することで、アクセス制御や処理ルールを一元的に管理できる。東海林氏は、この構造そのものがAI活用における「ガードレール」として機能すると説明する。
アステリア株式会社 マーケティング本部 プロダクトマーケティング部
ASTERIA Warp プロダクトマネージャー 東海林賢史氏
ASTERIA Warpでは、データの取得条件や処理内容をあらかじめ定義しておける。AIが基幹システムに直接接続できる状態では、指示の誤りによって大量のデータアクセスが発生し、システムに負荷をかけるリスクがあるが、中間にASTERIA Warpを介在させることで、「何件ごとに、どの条件でデータを取得し、どう加工して渡すか」といったルールを情シス側で制御できる。接続設定もシステム側で一括管理でき、ユーザーやAIに詳細な接続情報を開示せずに利用させることが可能だ。
100種類以上の接続先を用意(引用:「ASTERIA Warp」)
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さらに、マッピング機能によってデータの制御と検証を行える点も重要だ。AIにデータを渡す前に、機密項目の除外やマスキングによる匿名化といった処理を確実に実行できる。また、システムへの書き込み時には、AIから送られてきたマスターIDが基幹システム上に実在するかを照合し、異常があればエラーとして処理する、といったデータバリデーションの仕組みも組み込める。
これらの統制を手作業のプログラミングで実装しようとすると、開発・運用の負荷が大きくなるうえ、AIが生成したコードを含め、処理の全体像が把握しづらく、ブラックボックス化につながる。その点、ASTERIA Warpでは処理フローがノーコードで可視化されるため、どのような条件でデータが取得・加工・連携されているのかを追跡しやすい。これにより、処理の再現性や統制を保ちやすくなり、AIを業務に組み込む際の運用管理を実務に乗せやすくなる。
AI機能搭載の「新版」リリース:フロー生成/AI-OCR対応も
アステリアは2026年8月31日、Warpシリーズの新バージョン「ASTERIA Warp 2608」の提供を開始する。今回のバージョンでは、「AIでデータ連携を簡単に(設計・作成時の強化)」と「社内システムと連携したAI活用を簡単に(実行時の強化)」という2つの観点から、設計・実行の両面で機能強化が行われているという。
中心となるのが、ベータ版として搭載される「AIフロー作成」だ。自然言語で「CSVのデータをデータベースに移行したい」といった指示を入力すると、AIが対話形式で要件を整理し、データ連携フローを自動生成する仕組みだ。生成されたフローはそのまま実行できるほか、必要に応じてノーコードで調整することも可能だ。
さらに、開発や運用中の疑問に対してチャット形式でAIが回答する「AIチャットボット」(ベータ版)も追加され、ユーザーの自己解決や開発効率の向上を支援。これにより、ゼロからフローを構築するハードルが下がり、開発の初期プロトタイピングにかかる時間を短縮できるだけでなく、既存フローの修正や運用中のトラブル対応でも、AIに質問しながら進められるようになる。AIが提示したベースラインや回答に対して人間が確認・微調整を加える協働スタイルが、開発から運用までの実務に取り入れられやすくなる。
実行フェーズにおけるAI活用の強化としては、「生成AIアダプター」の機能拡張が挙げられる。従来のテキストベースでの連携に加え、新たにファイルの直接送信が可能となった。帳票や請求書のPDFを生成AIに渡してAI-OCR処理を行わせたり、現場で撮影した写真を認識させて分類コード(メタデータ)を付与したりといった処理が可能になる。こうした非構造化データも業務フローに組み込めるようになる。
また、インフラ面では「フローデザイナー ブラウザー版」(ベータ版)の提供も開始された。従来のフローデザイナーはWindows専用のインストール型ソフトウェアであったが、ブラウザー版の登場により、インストール不要でWebブラウザーからフロー開発を行えるようになる。これにより、LinuxやMacといったOSの制約を受けずに開発できる。情シスにとっては、クライアント端末ごとのインストール管理やアップデートの負担軽減につながる。
一気に下がった“民主化のハードル” 現場主導の変革ドライバーに
新バージョンで提供されるAIフロー作成とフローデザイナー ブラウザー版の組み合わせは、単なる機能追加にとどまらず、組織の役割分担やDX推進の進め方にも影響を与えうる。それは、これまで構想として語られることの多かった「データ活用の民主化」を、現実的な取り組みへと変え始めている。
これまでは、ノーコードツールであるASTERIA Warpを利用する場合であっても、システムやデータ構造に関する一定のIT知識が必要であり、フロー作成は特定の専門人材や情シス部門に依存しがちであった。その結果、業務部門からのデータ連携依頼が情シスに集中し、対応の遅れがビジネスのボトルネックになるケースも少なくなかったという。東海林氏は「データ活用のツールを使える人が限られており、そういう人材がボトルネックになっていた」と従来の状況を振り返る。

しかし、自然言語によるAIの構築サポートと、ブラウザーを開くだけで手軽に開発を始められるようになったことで、ITの専門知識を持たない業務部門や現場のスタッフであっても、自ら必要なデータを集め、連携フローを構築できるようになる。東海林氏は、「専門性を持つ人材がボトルネックになっていた部分が、AIの力を借りて解消されてくる。ビジネスをデータドリブンで回すような流れというのが今後さらに強まるのではないか」と語り、現場主導でビジネスが加速する可能性を指摘する。
業務部門が自らデータ連携を行えるようになれば、情シスの承認を得ずに野良アプリや勝手なAI連携を作ってしまう「シャドーIT」の発生が危惧される。そこで情シスが、安全なガードレール(接続コネクションやアクセス権限)をあらかじめ定義・提供し、その枠組みの中で現場が自由に連携フローを組み立てるようにすることで、健全なガバナンスモデルを構築できる。
現場が主導して開発に参加できる環境を整えつつ、コネクションの事前定義やアクセス権管理といった仕組みによって、情シスが求める統制も維持。こうした両立が、組織全体でのWarp活用を進めるうえで重要になる。
「リスクはコントロールする」──決済の自動化を見据えた新機能
新バージョン「ASTERIA Warp 2608」には、AI機能の強化と並ぶもう一つの取り組みとして、ブロックチェーン技術を活用した日本発のステーブルコイン(日本円連動型デジタル通貨)に対応する「JPYC Gatewayアダプター」が搭載されている。一見するとAIとは異なる領域の機能にも見えるが、東海林氏はこれを、将来を見据えた機能だと位置付ける。
企業間送金や決済にステーブルコインを活用すると、従来の銀行振り込みと比べて手数料の削減や、24時間365日の処理が可能になるといった利点がある。さらに、AIが自律的に意思決定や業務実行を担うようになると、AIが決済処理を直接実行するケースも想定される。AIエージェントが外部サービスとの契約や取引を担うようになれば、決済の頻度は大きく増加する可能性がある。
東海林氏は「その都度、人間が手作業で銀行振り込みを行うわけにはいきません。将来的にAIが自発的に決済まで行うようなシーンが出てくるでしょう」と話す。そのような環境では、システム間で連携された自動決済基盤の存在が不可欠となる。JPYC Gatewayアダプターを介して、会計・財務システムとステーブルコイン決済を連携しておくことで、将来的な高頻度の自動決済にも対応できる財務DXインフラをあらかじめ整えておける。
AIへの期待と同時にセキュリティや制御への懸念も高まる中で、求められるのはテクノロジーを排除することではなく、適切にコントロールする視点だ。東海林氏は、これからAIの本格活用や社内システム連携、DXの推進を目指すITリーダーや情シスの読者に向けて、次のようにメッセージを寄せた。
「非常に強力なツールである以上、懸念を感じる場面もあると思います。しかし、正しいデータを流通させる基盤と、統制やガバナンスを効かせる環境が整っていれば、過度に恐れる必要はありません。データ連携基盤を間に挟み、AIが動ける範囲を適切に区切ったうえで活用していくこと。それが、AIの進化をビジネスの進化として取り込んでいくための現実的な方法だと考えています」(東海林氏)
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提供:アステリア株式会社
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