AI時代だからこそ、レガシーな技術が活きる──データ人材はAIとの対話で“人間性”を失ってはならない
AI活用が当たり前となった今、技術者が認識すべき2つのリスク
AIコーディングツールの普及で、開発者は自らコードを書く立場から、AIエージェントに指示を出す立場へ移りつつある。だが、はたしてあらゆる場面でAIに頼ることは正しいのだろうか。2026年7月22日、「SAS Innovate on Tour Tokyo 2026」の開催に合わせて来日したSAS Institute(以下、SAS)のジャレッド・ピーターソン(Jared Peterson)氏に話を聞いた。同氏が語ったのは、AIが開発現場を変えた境界線と、「数字は常に正しくなければならない」という哲学、その上で企業がAIをどう使うかだった。
AIが発展する一方で、レガシーな技術が求められている
アナリティクス部門のソフトウェア開発者としてキャリアをスタートした、ジャレッド・ピーターソン(Jared Peterson)氏。チームマネジメントの経験を重ね、現在はグローバルエンジニアリング組織を率いる。「SAS 9」「SAS Viya 3.5」「SAS Viya 4」にまたがるR&D部門の全体を指揮する同氏は、自身を「根っからの開発者だ」と語る。
そんな同氏は2026年2月、自身のブログ記事※にて今年のトレンド予測を発表。その筆頭に「レガシー技術の再来」を挙げた。レガシーな技術が貴重なものとして重宝されるようになり、AIを統合していないこと自体を売り文句にするベンダーが現れても驚かない、といった内容だ。詳細について聞いてみると、「昨今は、いわゆる『ガラケー』をあえて使用する人や、『ゲームボーイ』『NINTENDO 64』といった昔のゲーム機を復刻してくれと期待する声などが散見される」ことが、この考えの発端にあるという。
このことを、昨今のAI活用の広がりと照らし合わせて考えると、人々は「AIが果たす役割について、これまでとは異なる視点で対話する準備ができている」ことを意味すると同氏は述べる。生成AIをはじめとした高性能技術も大きな注目を浴びる一方で、過去のシンプルな技術も需要を高めている。これはつまり、AIによる生産性向上に期待をすると同時に、失職の恐れなど“新たな自身のリスク”に関心を抱きはじめ、レガシーな技術の重要性を捉えなおす人が増えているとも読み取れる。
「AIがもたらすプラスの可能性と同時に、果たしてそれを安心して使ってもよいのかというマイナスの懸念がつきまとう。SASは50年にわたって可能性と安全性を追求してきた歴史があります。ですから、今はこの2つの懸念における仲裁・調整役となる絶好のチャンスだと考えています」(ピーターソン氏)
また、最先端技術とレガシー技術については、ソフトウェア開発の世界においても重要な役割を果たす。今の時代、「両方の世界を融合させる」ことが求められるとピーターソン氏。AIモデルの最新動向や、開発者がそれを使ってどう生産性を上げられるか把握することは不可欠。しかし、そうした技術を使い、最も成功を収める開発者とは、プログラミング言語や技術の根底にある仕組みを深く理解している人たちだ。
たとえば「Pythonが実際にどう動いているか」「C言語の仕組みを理解しているか」といった、ある種の温故知新的な本質理解が重要になる。なぜなら、AIエージェントに頼りすぎると、実際のコード実装から遠ざかってしまい、「ソフトウェアが本来どう構成され、どう機能しているのか分からない」というリスクに直面するからだ。いわゆる「10倍の生産性を持つ開発者(10xデベロッパー)」と呼ばれるようなエンジニアは、システムの真の仕組みやコンピュータサイエンスの基本原則を深く理解している。
※「Retro vibes to futuristic leaps: 4 predictions for the year ahead」(sas, 2026年2月3日)
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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