2026年9月10日~11日の2日間にわたり、Linux Foundationの傘下組織であるAgentic AI Foundation(AAIF)が主催する国際カンファレンス「AGNTCon+MCPCon Japan 2026」が都内で開催された。日本での開催は初となる。
AAIFとは、エージェンティックAIの進化と普及が進むことを踏まえ、特定の企業による囲い込みを防ぐことで健全な環境を実現し、エージェント間の相互運用性や安全性を確保すべく立ち上がった組織だ。現在は250以上の企業・団体が会員として所属する。本イベントでは2日間にわたり、エージェンティックAIを本番環境で大規模に運用するためにクリアすべき課題のほか、セキュリティや認証、ガバナンス(統制)、さらにはAI×外部ツール、AI×データの安全な連携に欠かせないMCP(モデルコンテキストプロトコル)といった各テーマについて、70名以上のスピーカーにより展開される様々なセッションや分科会、展示が行われた。参加企業は700社以上に及んだ。
開幕を飾る基調講演では、AAIFのキーメンバーたちが登壇。バイスプレジデントのアンジー・ジョーンズ氏は、同組織の日本コミュニティ拡大に意欲を示し、通常は毎年1月・6月のみに限定されているアンバサダー募集を、日本向けに早期から受け付けると発表した。
続いてエグゼクティブディレクターを務めるマジン・ギルバート氏は、AAIFの活動進捗と、4つの重要発表を共有した。
1. 第6のコアプロジェクト「Agent Router」始動
新たなコアプロジェクトとして、「Agent Router」が発表された。同組織としては、6つ目のコアプロジェクトとなる。
AAIF 現在のコアプロジェクト
- Model Context Protocol:Anthropicが開発し寄贈した、AIアプリケーションと外部のツール/データソースを安全かつシームレスに接続するための国際標準プロトコル
- goose:Block(旧Square)から寄贈された、コードの提案だけでなく、任意のLLMでインストール、実行、編集、テストなどの開発ワークフローを拡張・自律実行できるオープンソースのフレームワーク
- AGENTS.md:OpenAIから寄贈された、コーディングエージェントの挙動やプロジェクトの構造・ルールを定義・共有するためのMarkdown形式の標準仕様
- agentgateway:異なるエコシステムをまたいで、AIエージェント、モデル、ツール、各種APIの間を安全かつスケーリング可能な形で相互接続できるようにするゲートウェイ・プラットフォーム
- Agent2Agent(A2A):Googleから移管されたプロトコルで、異なる企業やフレームワークで構築されたAIエージェント同士が、安全にタスクの委譲やアウトプットの受け渡しを行うための標準仕様。相互運用のための共通言語を提供
- Agent Router:AIやエージェントトラフィックのための、ベンダーニュートラルなゲートウェイ。16以上のモデルプロバイダーやMCPサーバーへのアクセスを統合した共通APIインターフェースを提供する、認証・レート制限・オブザーバビリティ(可観測性)を備えたプラットフォーム
2. ワーキンググループの一般公開
認証・認可、エージェント決済、エージェント発見など、リファレンスアーキテクチャや標準化に取り組む各ワーキンググループを、会員・非会員を問わず一般公開すると発表した。
3. 財団の急成長
設立9ヵ月でメンバー企業数が260社を突破(本イベント開催日時点で269社)。Linux Foundation史上最速の拡大スピードだという。参加企業・団体の産業・業種は14分野に及ぶ。また、新たにソフトバンクグループが参画を表明した。
4. Sandbox Stage プロジェクトの受付開始
成長・インパクト段階のプロジェクトに加え、新たに開発初期段階のオープンソースプロジェクトを受け入れ開始した。
最後にギルバート氏は、参加者たちにコミュニティへの参画を訴えたほか、アンバサダー、ワーキンググループ、プルリクエスト提出などを絶賛募集中だと呼びかけた。
続いて登壇したのは、Anthropicのデヴィッド・ソリア・パラ氏。同社における、世界で初めてのMCP開発に携わった人物の一人だ。同氏は、MCPやAIエージェントを取り巻くここ数年の進化を振り返る。
2024年、AIエージェントによるツールの呼び出しが技術的に可能となった。しかし、当時はまだ長時間のタスク実行はできず、実用性はあくまでもデモレベルだった。ところが2025年になると、コンパイラやテストなどで自動修復が可能なコーディングエージェントが実用化され、瞬く間に世界中で普及していった。そして2026年、AIエージェントはSaaSや内部システムと簡単に接続できるようになり、いよいよ本格的な実用化が進みつつある。
MCPエコシステムも急速に普及している。同氏によれば、Claude上でのMCPツール呼び出し数が、すでに累計10億回を突破したという(日本時間 2026年9月10日時点)。また、MCP SDKの月間ダウンロード数も5億回以上に達していると報告があった。
直近18ヵ月の動きも紹介された。大きなハイライトとして挙げられたのは、AnthropicやGoogle、OpenAI、Microsoftなどのビッグテック同士の協働により、MCPの完全なステートレス化が実現した点だ。
今後12ヵ月のロードマップとして、ソリア・パラ氏は以下3つの重点分野を発表した。
- Agentic Messaging:数日間、数週間、あるいは数ヵ月間かかるような長時間タスクを、非同期で実行・返答可能にする機能
- Skills over MCP:MCPサーバー経由でスキルを提供し、ツールとスキルをパッケージ化して企業内の一元管理データベースを構築できるようにする拡張機能
- Authorization & Identity:エージェントの識別、誰の指示で動いているのか、誰の代わりに動いているのかの特定、ポリシーやオブザーバビリティの強化
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)の分野を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。※取材のご案内等は個人のメールアドレスか、EnterpriseZine編集部の問い合わせ窓口にお願いいた...
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