米セールスフォースが2026年9月15日から17日まで、年次イベント「Dreamforce 2026」を開催している。米現地時間9月15日午前に開催されたメインキーノートでは、エージェント型の新たなUI「AIforce」が大きく取り上げられた。関連して、8月の第2四半期の決算発表で詳細が注目されていた、Anthropicとのパートナーシップ「Claudeforce」の内容も明らかになった。
新しいユーザー体験「AIforce」の提供
同社 CEOのマーク・ベニオフ氏は、2026年に入ってから市場で囁かれることが増えた「SaaSpocalypse(日本ではSaaS is Deadとして知られる)」論について、「これはソフトウェアの終焉についての話ではなく、“人間にすべての作業をやらせるような”ソフトウェアの終焉についての話」と否定した。
AIは、人間とソフトウェアとのインターフェースを大きく変えた。このような激変はこれまでもあったことだ。コマンドラインからGUIへ、GUIからWebへ、Webからモバイルへ、私たちはUIの変革を幾度となく経験している。今回発表されたエージェント型インターフェース「AIforce」は、“生きているよう”に動くUI設計がとられており、その特長を表すキーワードとして「インテリジェント&動的」「セキュア&統制が効く」「自分で構成できる」「Zero Data Retention」「今ある環境で動く」といったものが挙げられた。
このアップデートの布石となったのは、2026年3月に行われた「Slackbot」のローンチイベントである。(SalesforceのUI「Lightning Experience」の開発責任者として知られる)共同創業者のパーカー・ハリス氏は、「これからはSalesforceにログインすることはないかもしれない」と、今を予測するような発言で関係者に強い印象を与えた。4月の開発者向け年次イベント「TDX 2026」で発表された、「Headless 360」も大きな影響を与えている。
Headless 360の登場で、MCPサーバーやAPI経由でSalesforceをエージェント型インターフェースに接続できるようになった。しかし、実際に自分好みの快適なアプリケーション環境としてパーソナライズすることは、技術者はさておき、一般のエンドユーザーには非常にハードルが高い。これを簡単な操作だけでできるようにする、そのためのパッケージとして開発されたものが、AIforceだ。
AIforceは、Headless 360の“進化系UI”に相当すると考えていいだろう。AIforceの設計思想には、これまで当たり前だった「全員が同じUIのソフトウェアを使う」ことから脱却し、一人ひとりのユーザーが自分専用のライブインターフェースを持てる世界への移行を促す意図がある。そして、今回のDreamforceで新しいエージェント型UIとして発表されたのは、「Claudeforce」「Slackforce」「Agentforce Coworker」の3つだ。
ヘッドレスの良さを残しながらも、SalesforceをClaude Coworkで使いたいユーザーはClaudeforce、Slackで使いたいユーザーはSlackforce、従来通りのLightning画面で使いたいユーザーはAgentforce Coworkerとして利用できる。現時点では3つの選択肢しかないが、今後新しいUI(サーフェス)の選択肢を増やしていく計画があると示された。
「Claudeforce」がSalesforceユーザーにもたらす“UI変革”
Salesforceユーザーに向けては、3つの選択肢が提供されることになった格好だが、それぞれでソリューションが少しずつ異なる。Agentforce Coworkerは、8月に一般提供を開始。Slackbotの進化形にあたるSlackforceは、SlackbotとSlack Surfacesという新機能を組み合わせたものになる。
そして、Claudeforceは正式にはAnthropicとのパートナーシップの名称であり、ソリューションの第一弾として「Salesforce in Claude」と呼ばれる37種類の事前構築済みスキルへのプラグインが提供される。これは前述したパッケージとして、営業向けのユースケースから提供するものだ。AIforceによって複雑でコストのかかる連携作業なしでMCPサーバー、API、CLIツールからのSalesforceアクセスをClaude Coworkに提供可能になる。そのため、Claudeforceのセットアップは、管理者のトグルの切り替え1つで終えることができ、権限を与えられたユーザーは初日からSalesforceをClaude Coworkで利用可能に。Salesforce in Claudeに一度接続すれば、ユーザーごとの個別セットアップも、新たな権限モデルの構築も、アカウントごとの再監査も必要ない。
たとえば、営業担当者がClaude Cowork上で「私の商談の状況を教えて」と依頼したとする。Claudeは、アカウント、商談、メール、通話の書き起こし、ミーティングの議事録、その他Slackの中にありそうなデータを網羅的に整理し、インサイトを表示。次にとるべきアクションを示してくれる。
当然ながら、AIがそうした“アクショナブルインサイト”を提示するためには、信頼できるデータソースへのアクセスが欠かせない。とはいえ、ClaudeからSalesforceへの無制限のアクセスを許しているわけではない点が特徴だ。特に、規制業界ではデータアクセスに係る要件が厳しい。そこで、セールスフォースは「ZDR(Zero Data Retention)」を組み込み、Claude側でSalesforceのデータを利用しつつも、学習させることのない仕組みを整えた。なお、Salesforce in Claudeは、約40社がパイロット利用中だ。
ベニオフ氏は、Salesforceの製品体系を「Interface」「Agents」「Apps & Semantics」「Data」の4層構造にあらためたとして、これらが揃うことで初めて企業変革を成し遂げられると訴えた(AIforceは最上位のInterfaceレイヤーに位置づけられている)。
【関連記事】
・セールスフォースが発表した新ハーネス 6つの機能を統合、AIエージェントの一元把握・管理・制御が可能
・セールスフォース、乱立するエージェントとトークンコスト増加に挑む「MuleSoft Agent Fabric」新機能
・セールスフォース「Agentforce Coworker」、日本市場で一般提供開始
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
