共通目標のための行動が対立してしまうジレンマ
共通目標を持ち、目標達成に向けて協働するための組織である企業内で、さまざまな対立や不調和が生まれるのはなぜか? たとえば「現在から将来にわたって利益を上げ続ける」という企業の最終目標は、「売上アップ」→「売上改善」→「新商品開発」および「品質改善」といったようにブレークダウンされ、現場に下りてくる。
「新商品開発」のために、現場ではエンジニアチームを新商品に集中させたいと考えるだろう。しかし、「品質改善」のためにはエンジニアチームを既存商品に集中させることが必要だ。このように、ごくシンプルな目標達成のための行動からも、対立が発生してしまう。
ゴールドラットコンサルティング ディレクター日本代表の岸良裕司氏は、「我々は日々、こうしたジレンマを抱えている」と語り、「何らかの不調和が存在する場合、それは我々の認識のどこかが間違っている可能性を示唆している」というニュートンの言葉を紹介した。これは、TOC(制約理論)の創始者で『ザ・ゴール』の著者であるエリヤフ・ゴールドラット博士が好んで引用する言葉だという。
対立や不調和という望ましくない現象の根本原因が「間違った認識」にあるのならば、認識を正すことでジレンマを解消し、問題を解決できるはず。それを実現するのが、ゴールドラット博士が開発した「クラウド」(Evaporating Clouds)と呼ばれる問題解決手法だ。文字通り「雲」のようなモヤモヤをパッと「蒸発」させるように解消するという意味が込められている。
クラウドの構図は、図1のとおり。目的とその達成に必要な2つの異なる要望、それぞれの要望を満たすためのアクションの5つのボックスから構成される。図1の例では、「幸せでいる」が達成すべき目的で、そのためには「安全を確保する」と「チャレンジする」という2つを満たす必要があり、安全を確保するには「変えない」、チャレンジするには「変える」という行動が必要であることを示している。
ここでは、赤線で囲まれた部分の「変えない」と「変える」が対立している。また、「変えないと、チャレンジできない」、「変えると、安全を確保できない」といったように、クロスするラインが対立の関係にあることがわかる。「この対立の構造を理解することが、問題解決のための第一歩」と、岸良氏は説明する。
■■■ 岸良氏の講演資料はこちらのページからダウンロードできます。 ■■■