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プロジェクトの妨げとなる、さまざまな対立や不調和。ゴールドラットコンサルティング ディレクター日本代表の岸良裕司氏は、「PM Conference 2010 Summer」2日目の基調講演にて、これらを根本原因から解消し、共通目標の達成に向けたよりよい方法を導き出すことができる問題解決手法「クラウド」について説明した。
共通目標のための行動が対立してしまうジレンマ

共通目標を持ち、目標達成に向けて協働するための組織である企業内で、さまざまな対立や不調和が生まれるのはなぜか? たとえば「現在から将来にわたって利益を上げ続ける」という企業の最終目標は、「売上アップ」→「売上改善」→「新商品開発」および「品質改善」といったようにブレークダウンされ、現場に下りてくる。
「新商品開発」のために、現場ではエンジニアチームを新商品に集中させたいと考えるだろう。しかし、「品質改善」のためにはエンジニアチームを既存商品に集中させることが必要だ。このように、ごくシンプルな目標達成のための行動からも、対立が発生してしまう。
ゴールドラットコンサルティング ディレクター日本代表の岸良裕司氏は、「我々は日々、こうしたジレンマを抱えている」と語り、「何らかの不調和が存在する場合、それは我々の認識のどこかが間違っている可能性を示唆している」というニュートンの言葉を紹介した。これは、TOC(制約理論)の創始者で『ザ・ゴール』の著者であるエリヤフ・ゴールドラット博士が好んで引用する言葉だという。
対立や不調和という望ましくない現象の根本原因が「間違った認識」にあるのならば、認識を正すことでジレンマを解消し、問題を解決できるはず。それを実現するのが、ゴールドラット博士が開発した「クラウド」(Evaporating Clouds)と呼ばれる問題解決手法だ。文字通り「雲」のようなモヤモヤをパッと「蒸発」させるように解消するという意味が込められている。

クラウドの構図は、図1のとおり。目的とその達成に必要な2つの異なる要望、それぞれの要望を満たすためのアクションの5つのボックスから構成される。図1の例では、「幸せでいる」が達成すべき目的で、そのためには「安全を確保する」と「チャレンジする」という2つを満たす必要があり、安全を確保するには「変えない」、チャレンジするには「変える」という行動が必要であることを示している。
ここでは、赤線で囲まれた部分の「変えない」と「変える」が対立している。また、「変えないと、チャレンジできない」、「変えると、安全を確保できない」といったように、クロスするラインが対立の関係にあることがわかる。「この対立の構造を理解することが、問題解決のための第一歩」と、岸良氏は説明する。
■■■ 岸良氏の講演資料はこちらのページからダウンロードできます。 ■■■
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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