従来型プロジェクトマネジメントの限界
「なぜ、現場力を醸成するマネジメントが重要だと気づいたのか、私の経歴に沿って説明したい」。富士通 ソリューションビジネスサポートグループ 自律改善室プロジェクト部長の稲葉豊久氏は富士通にSEとして入社し、1991年よりプロジェクトマネジメント(PM)に携わって以来、一貫してPMのうまいあり方を追求してきた人物だ。
ツールやルールの整備など管理の標準化を行い、組織的支援をルール化し、さらにはプロジェクトの生産性を向上させるための支援ツールの斡旋などを行ったりしてきたという。
2002年より「現場を楽にする」ことを目指して様々な改革に取り組んできた稲葉氏だが、思惑とは裏腹に管理工数が逆に増加し、少しも現場は楽になっていないことに気づいた。「もはやこれまでのPMでは限界がある。現場力を向上させることが重要だ」と稲葉氏は実感したという。それが自律改善活動に取り組むきっかけとなった。
自律改善活動とは組織トップの意思・想いを受けたチームが、その実現に向けて自ら設定したも目標にむけて行動する。その過程での継続的な改善を通して、改善力=チーム力=組織力を高めていく小集団活動である。
この活動でキモとなるのが情報の共有する場の設置である。前日の振り返りや当日の作業などは毎日開くスタンディングミーティングで共有する。また、週に1度は作業のムリ、ムダ、ムラの改善策の検討会を開催。そこで話した内容はムダとりボードで共有する。
そのほかにもチームの目的や方針、目標などの情報は管理ボードで管理する。作業待ちやバラつき、滞留、遅延など情報は作業指示かんばんに記述し、個別の進捗や効率や生産性を測定する。このような工夫を通して情報を見える化し、毎日のチェックを習慣化する。