「超上流」のさらに上流にあるビジネスモデル検討フェーズ
要件定義をはじめとしたいわゆる上流工程以前のフェーズとして、昨今では、システムの方向性やシステム化計画を策定する「超上流」の重要性が広く認識されるようになった。社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)副会長の細川泰秀氏は、「実は、超上流のさらに上流がある。そのフェーズこそが重要」と指摘する。
それは、商品・サービス、顧客、資材、設備、資金、要員といった経営資源を活用して何をすべきか、ビジネスモデルを検討することだという。JUASでは、この超上流の前にあるビジネスモデル検討フェーズを「源流」と呼んでいる。細川氏は「源流のビジネスモデルに基づいて、情報システムの開発はもちろん、運用まで一貫して考えなければならない。それが、『日本型プロジェクト管理』における基本コンセプトの1つと考えている」とした。
そもそも情報システムは、その上位にある業務システムを支えるために存在する。そして、業務システムとは、経営のアイデア、ビジネスモデルを実現するためのもの。つまり、プロジェクトは、ビジネスモデル、業務システム、情報システムという3ステップで企画設計し、推進しなければならないということだ。
続いて細川氏は、日米のプロジェクト管理の違いについて解説。日本と米国では、社会制度や経営環境なども大きく異なる。特に直接的にプロジェクト管理に関係するのが、開発プロセスの違いだ。日本ではウォーターフォール型が主流であり、JUASの調査結果によれば実に90%以上を占める。対して、米国ではアジャイルや反復型(イテレーション)が比較的多く、そのほかの手法も混在している。
そして、米国との比較で細川氏が強調するのが、日本の情報システムの「品質の高さ」である。細川氏が提示した情報システムの月間停止時間に関する日米の比較データによると、日本の大企業が1.7時間/月であるのに対し、米国の大企業はその9倍以上の14.7時間/月。日本のほうが、格段に信頼性が高いことが分かる。
日本の優れた開発品質は、オフショア先でも高く評価されている。細川氏は中国のアウトソーシング研究所を訪れた際、中国のSEの間で日本向けオフショア開発の仕事が最も人気が高いことを知ったという。日本のプロジェクトは品質も納期も厳しいが、日本のシステムを手がけることが、会社のステータス向上や自身の高い評価につながるのだとか。
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