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データ活用時代のIT資産をAIにどう活かす? アシストの専門家3名が語る“統合基盤”の要件

個別最適を越え、データとAIの全体設計へ

谷川 耕一[著] / 北浦 汐見[写] / EnterpriseZine編集部[編]

 企業のDXが進み、AIの業務活用が本格化する中、データをどのように整備し、活用につなげるかが重要な経営課題となっている。長年、データベース分野で実績を築いてきたアシストは、製品ごとの専門性を生かしながらも「データ活用基盤」「データ連携基盤」「ナレッジ活用基盤」という3つの領域を横断することで、顧客支援の体制強化を図っている最中だ。本稿では、同社 DX技術本部で各領域を担うリーダーたちが、AI時代における企業課題、データとAIを生かすための基盤構築・運用のアプローチ方法などを語る。

クラウドと生成AIが促す「データ基盤の見直し」 現場で感じる変化とは

染谷尚秀氏(以下、染谷氏):2010年代に入り、データを手軽に可視化・分析できる手段としてセルフサービスBIが台頭し、多くの企業で導入が進みました。現在では、何らかの形でセルフサービスBIを活用している企業がほとんどではないでしょうか。しかし、いざ可視化・分析に着手しようとすると、「どのデータを使えばよいか分からない」「データが整備されていない」「必要なデータを入手できない」といったデータ側の課題に直面するケースが少なくありませんでした。こうした課題を解決するためにDWH(データウェアハウス)の構築に取り組むケースもありましたが、かつては多額の投資と長期にわたる構築期間を要するプロジェクトとなり、変化の速い事業部門のデータ活用要件にタイムリーに応えることは困難でした。

 この状況を変えたのが、Snowflakeをはじめとするクラウド型のDWHです。従量課金で小さく始められ、インフラ調達やサイジングの負担も抑えられるため、データ基盤を見直しやすくなりました。近年は、データ活用基盤の再構築としてBIツールよりも「DWHの見直しから着手したい」という相談が増えています。

アシストにおいて、長年にわたり企業のデータ活用を支援してきた「データ活用基盤」のリーダー技術1部 部長 染谷尚秀氏
長年にわたり企業のデータ活用を支援してきた技術1部 部長 染谷尚秀氏

 そして、生成AIやAIエージェントが活用されはじめた今、データ活用基盤に求められる役割も変わりつつあります。AIを業務で活用するためには、鮮度と信頼性を備え、適切に統制されたデータを“継続的”に利用できることが前提となりました。つまり、分析や可視化といった機能性に加え、AI活用を支える土台としてデータ活用基盤の重要性が増している状況です。

矢野一栄氏(以下、矢野氏):データ連携の観点から俯瞰したとき、業務システムは改修などにあわせて個別に構築(≒サイロ化)されてきた歴史があります。その結果、部署やシステムごとに異なるツールやスクリプトが使われ、連携処理が複雑化している企業は少なくありません。担当者の異動や退職によってアーキテクチャがわからず、変更できない状態に陥るケースも見受けられます。

 近年、こうした課題は、基幹システムの刷新やクラウド移行のプロジェクトで顕在化してきました。そもそもシステムの全体像、変更の影響範囲を把握できなければ、移行計画そのものがリスクとなります。また、最近では単一製品の導入ではなく、既存の連携処理を可視化し、全社横断のデータ基盤として再設計したいという相談が増えています。

 さらに、データ連携に求められる要件も多様化してきました。業務システム間でのデータ連携では正確性や安定性が求められる一方、AIやデータ活用でのデータ連携では、用途に応じた鮮度でデータを継続的に供給する仕組みが必要です。こうした異なる要件を踏まえ、データ連携基盤を設計・運用することの重要性は高まる一方です。

佐子雅之氏(以下、佐子氏):これまでのデータ活用は、売上や在庫など、データベースに蓄積された「構造化データ」を中心に進められてきました。一方、売上変動の背景やトラブルの経緯、顧客とのやり取りといった業務の文脈(コンテキスト)は、メールやチャット、提案書、議事録などの「非構造化データ」に含まれています。

 アシストが2021年にナレッジ活用の部門を立ち上げた当初、構造化データの活用と、文書・動画などを対象としたナレッジ活用は、別のテーマとして扱われることが一般的でした。しかし、生成AIやLLMの普及により、社内文書やコミュニケーションの記録こそが“AIに業務の文脈を与えるための情報源”として重要性が増しています。

非構造化データの活用を担うナレッジ活用基盤技術部 部長の佐子雅之氏
非構造化データの活用を担うナレッジ活用基盤技術部 部長 佐子雅之氏

 そして、ナレッジは複数のSaaSや部門に分散しているため、必要な情報にアクセスしにくいという課題が多くの企業で顕在化してきました。AIツールの導入に終わらず、いかに日々生まれるナレッジを集約・連携し、人やAIが必要に応じて検索・参照できる状態を整えられるか。まさに今、データ基盤には「ナレッジ活用基盤」がAI活用を支える要素として欠かせなくなっています。

AI活用に向けて、押さえておくべき基盤設計の考え方とは?

染谷氏:まず押さえておくべきことは、すべてをAIに任せようとしないことだと考えています。特に、基幹システムのレポートに代表される、多くの社員が日常的に参照する定型的な情報には、何よりも正確性と鮮度が求められます。また、利用者層は幅広く、リテラシーも多様であるため、わざわざAIに問いかけるまでもなく、ツールを意識せずに情報へアクセスできる環境を整えることが欠かせません。

 基幹システムに負荷をかけずリアルタイムにデータをDWHへ連携し、正確で鮮度の高い情報をリテラシー不問で届けられる。こうした“王道”といえるデータ活用基盤は、生成AI時代においても、むしろ生成AI時代だからこそ重要性を増しています。

 一方、フロンティアAIは目覚ましい速度で進化をつづけていますが、それにともない利用コストも高騰しています。だからこそ、定型的なデータ活用はBIで、高度な分析や予測はAIで、という適材適所での使い分けがいっそう重要になります。アシストでは、こうした信頼性・鮮度・統制が求められる定型データ活用の現実解として「aebis on OCI」というソリューションの提供を開始しています。

矢野氏:データ連携基盤では単一ツールへの集約を前提とせず、用途に応じて連携手法を使い分ける必要があります。たとえば、導入済みのEAI(Enterprise Application Integration)製品に、すべての処理を集約しようとするケースは珍しくありません。しかし、「業務システム間のデータ連携」と「AI・データ活用向けのデータ連携」では求められる要件が異なります。前者では正確性や安定性、障害時の復旧しやすさが重要であり、後者ではデータ量や活用するデータの種類が増加することに対応しながら、必要なデータを適切なタイミングで連携できることが求められます。

システム間をつなぐデータ連携基盤技術部 部長の矢野一栄氏
企業現場のシステム連携を多く見てきたデータ連携基盤技術部 部長 矢野一栄氏

 とある企業では、基幹系と周辺システムの連携にDataSpiderを導入していて、Snowflakeへの連携も同じツールで実現しようとしていました。ただ、要件を整理してみると、安定したバッチ連携が必要な領域と、基幹システムの更新を速やかにクラウドDWHへ反映する領域とでは、必要な技術特性が異なっていたのです。

 そこで、業務システム間の連携には既存のDataSpiderを活用し、Snowflakeにはログベースで変更データを継続的に複製する、Qlik Talend Cloudを組み合わせる構成としました。既存資産を生かしつつも用途に応じて連携方式を使い分け、安定した業務連携とデータ活用に必要な鮮度の両立を図ったのです。

 重要なことは、単一のツールで統一することではなく、業務要件や運用体制、将来のデータ量を踏まえたアーキテクチャを設計することです。

佐子氏:その上で、生成AIを業務に定着させるためには、社内に分散するデータを利用しやすい状態に整えなければなりません。Microsoft 365 Copilotをはじめ、生成AIを業務に取り入れる企業が増える一方、「期待した回答を得られない」「必要な情報にたどり着きにくい」といった声も聞かれます。その背景には、Microsoft TeamsやSharePoint、Box、Salesforce、ServiceNow、Google Workspaceなど、社内ナレッジが複数のSaaSに分散している状況があります。生成AIを活用するためには、データを横断的に検索・参照でき、適切にアクセス制御された環境が必要です。

 特定業務のためにRAGやAIエージェントを個別開発する方法もありますが、対象業務やデータソースが増えるほど、AIモデルやコネクタの更新、権限管理、精度維持といった運用負荷は大きくなります。個別開発が適する領域を見極めながら、全社で共通利用するためのナレッジ活用基盤を整えることが重要です。

 そこで、アシストではAI検索プラットフォーム「Glean」を展開しています。Gleanでは、SaaSや業務システムと連携しながら、既存のアクセス権限を踏まえた情報を横断的に検索・活用できます。こうしたナレッジ活用基盤を整えることで、社員は組織内に蓄積された情報を業務に生かしやすくなるのです。

既存資産を活かしながら、AI活用を加速させる「3つの観点」

佐子氏:データ活用基盤、データ連携基盤、そしてナレッジ活用基盤を連携させていくためには、構造化データと非構造化データをうまく組み合わせることが求められます。ERPやCRMに蓄積される売上、在庫、顧客情報などの構造化データの重要性はわかりやすいでしょう。しかし、メールやチャット、提案書、議事録、日報などの非構造化データには、数値だけでは分からない判断の経緯、業務上のコンテキストが含まれています。これまでのデータ活用を振り返ると、構造化データはSnowflakeのようなクラウドDWHに集約され、分析・可視化に活用されてきました。一方、AIが台頭してきた現在は、非構造化データを組み合わせることで、AIエージェントによる業務支援などにつなげることの重要性が増しています。

 たとえば、経営層がAIに「首都圏の大規模プロジェクトにおいて、今期の粗利率が低下した原因と対策を教えてほしい」と尋ねたとします。粗利率の低下という定量的な事実はSnowflakeのデータから把握できますが、その背景や対策を検討するためにはGleanなどを通じてチャットや日報、顧客との折衝記録なども参照する必要があります。

 数値に表れる事実だけでなく、そこに至るまでの背景・経緯を含めて活用できるようになれば、AIが業務に即した回答・提案を行いやすくなります。つまり、構造化データと非構造化データをつなぐ基盤こそが、今後のAI活用を支える重要な要素になるのです。

染谷氏:そうしたアプローチが重要になることは間違いないでしょう。ただ、AIに業務データを適切に扱わせるためには、データ構造とビジネス用語・指標の定義を結びつける「セマンティックレイヤー」が欠かせません。表データにある情報だけでは、どの項目を売上として扱い、どの条件で集計するのかといった業務上の意味を判断することは難しいでしょう。とはいえ、すべてのデータについて、指標の定義やテーブル間の関係をゼロから整備するには大きな負担がかかります。

 そこで、今注目しているのがBI資産の再利用です。WebFOCUSやQlikなど、長年にわたり整備されてきたレポートやダッシュボードには、業務に即した指標の定義や計算ロジックが蓄積されています。これらの資産をそのままAIに連携できれば、セマンティックレイヤーを整備したり、AIが個別のテーブルやカラムを直接参照したりせずとも、業務上の意味に沿ってデータを利用しやすくなります。これまでのデータ活用でつくってきた資産を生かしながら、AI活用へ段階的につなげていくことが現実的なアプローチでしょう。

矢野氏:その上で、忘れてはいけないものが安定したデータ連携の仕組みです。どれだけAIやデータ分析の仕組みを整えても、必要なデータを“適切な鮮度”で利用できず、連携も安定していなければ、期待する成果にはつながりません。ナレッジ活用やセマンティックレイヤーも、基幹システムや複数のSaaSから必要なデータを継続的に取得・利用できることが前提です。

 だからこそ、データ連携基盤には業務システム間で求められる正確性・安定性に加えて、AIやデータ活用で求められる鮮度・即時性が大切です。そのため、データを活用したい部署が求めるデータの内容や粒度、更新頻度を踏まえ、連携方式や運用方法を設計する必要があります。

 データ活用、ナレッジ活用、データ連携を個別に捉えるのではなく、それぞれの要件を踏まえて全体を設計することが、AI活用を継続的に進めるための基盤構築には欠かせません。

染谷氏:かつては、アシストでも製品ごとに組織が分かれ、全体最適な基盤を構築するためには、部門をまたぐ社内調整に時間を要することもありました。現在は、データ活用基盤、データ連携基盤、ナレッジ活用基盤という提供価値を軸とした体制へ移行しています。これにより、AI活用の構想から実装、運用・定着まで、領域をまたいで一貫して支援できるようになりました。

矢野氏:組織の垣根を越えて動くという文化は、今やアシスト全社に広がっています。データ連携の相談を受けたとしても、データ活用基盤やナレッジ活用基盤に課題があれば、染谷や佐子の部隊と連携しながら提案しています。

佐子氏:生成AIの登場で、企業のITリーダーが検討すべき選択肢は広がりました。だからこそ、個別製品の導入だけでなく、自社の業務やデータ、既存システムを踏まえて全体像を考えることが重要です。アシストは多様な製品と顧客支援の経験を生かし、実行可能なアーキテクチャをともに考え、実装・運用まで支援していきます。

 信頼できる構造化データを整備し、必要なデータを連携し、非構造化データに含まれる業務のコンテキストも活用していく。そのための基盤を全体最適として設計・運用することがAIを単発の導入で終わらせず、業務や意思決定に生かすための土台となるでしょう。

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提供:株式会社アシスト

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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