愛媛県はIT人材10,000人育成へ──県副知事や経産省、JAWS-UG愛媛メンバーらが取り組み語る
愛媛はみかんだけじゃない!DX推進の熱量が経営層から学生にまで及ぶ
老舗旅館は「全員参加型経営」でDX推進 地方企業が目指すべき終着点
続いて登壇した経済産業省の高岸由衣氏は、愛媛県庁への出向経験をもつ立場から、総額6億円規模のAI実装支援事業「GENIAC PRIZE 2026」について説明。同事業は警察庁、厚生労働省、国土交通省、農林水産省と連携し、特殊詐欺対策や介護負荷軽減、インフラ老朽化対応など、エッセンシャルワーカーの不足を解消するAIの実装を支援する。
そのほか、次世代人材育成として最大4億円相当の支援も実施する。具体的には、ロボティクスなどのフィジカルAI領域を担う学生・若手に対してGPUリソースを提供。特筆すべきは、応募資格が「ユーザー企業」主導であることだ。開発者任せにするのではなく、自らの課題を解決したいと願う企業が主体となって、国産基盤モデルを活用したシステムを構築することが必須要件となっている。
次に、freeeの関幸一氏は、実際の事例をもとに、地方の中小企業がDX推進を成功させるカギについて説明。同氏が挙げたのは、広島県・宮島の老舗旅館である錦水館のV字回復事例だ。
かつてキャッシュアウトの危機にあった同館は、経営数値を全社員に公開する「データの民主化」を断行した。接客というおもてなしの心を守るために、煩雑なデータ集計や事務作業を徹底的にデジタル化したという。「驚くべきは、上からの指示なしに、現場の社員が自らノーコードツールやAIを活用して『錦水スタジオ』という業務改善アプリを作りあげたことだ」と関氏。数字が見えるようになったことで、社員一人ひとりが「自分たちの旅館をどう良くするか」を自ら考え、行動しはじめた。
「地方企業が目指すべきDXの終着点は、社長一人の牽引ではなく、全員が経営者の視点をもつ『全員参加型経営』の実現。AIは、その加速装置となります」(関氏)
イベントの最後を飾ったのは、AWSユーザーコミュニティ「JAWS-UG愛媛」だった。2014年の発足以来、エンジニアのみならず、経営者や営業も参加するこの草の根活動は、愛媛のDX推進の心臓部となっている。累計63回以上の開催を数え、のべ600名以上が参加してる。「四国クラウド遍路」など、県境を越えた連携で地方の熱量を高めてきた。
同組織には、組織の壁を越えて学びあい、失敗を共有し、共に成長しようとする地方の連帯感がある。一社で悩む必要はない。JAWS-UGのような場には、同じ苦しみを乗り越えた先人がおり、手を差し伸べる仲間がいる。AIによるビジネス変革を成し遂げるために必要なのは、最新のコードではなく隣の誰かと一緒に一歩を踏み出す勇気だろう。愛媛県の熱気は、日本の地方創生の姿を大きく変えようとしている。
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