SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

EnterpriseZine Day Special

2024年10月16日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

クラウド連携技術の現在

”実践仮想化”、Harmonious Cloud活用に向けて

日立、VMware 共同セミナーレポート


 企業においてITシステム導入は進んだものの、組織ごとに個別最適化されてしまい、その運用は極めて複雑化している。結果的に情報システム部門は、日々ITシステムの運用管理に追われる状況だ。この状況を打開するためのの取り組みを、日立製作所はヴイエムウェアとの共催セミナーで紹介した。

クラウドでも可用性、セキュリティ、パフォーマンスには妥協しない

株式会社 日立製作所 情報・通信システム社 プラットフォームソリューション事業部 部長
神林雅史氏
株式会社 日立製作所 情報・通信システム社 プラットフォームソリューション事業部 部長 神林雅史氏

 2010年12月8日、日立製作所はヴイエムウェアとの共催で「”実践仮想化”、Harmonious Cloud活用に向けて」と題してセミナーを開催し、企業がクラウドコンピューティングを活用するためのポイントについて紹介を行った。 

 株式会社 日立製作所 情報・通信システム社 プラットフォームソリューション事業部 部長の神林雅史氏は、「ITシステムをより集約し共通化することで、新たな価値が生まれる」と言う。神林氏は、企業のクラウドコンピューティングへの期待は2つあると説明する。1つがクラウド上のアプリケーションの利用であり、もう1つがクラウド化されたプラットフォームの利用である。アプリケーションの利用環境としてはSaaSがあり、プラットフォームの利用環境としてはPaaSやプライベートクラウドがある。どれを自社に適用すれば効果が出るのか、企業はいまその選択に悩んでいるという。

 このような企業のクラウドコンピューティング活用における悩みに応えるため、日立グループ会社一体となって取り組んでいるのが、「Harmonious Cloud」であり、さらに「クラウドであっても可用性、セキュリティ、パフォーマンスに妥協しない。」と神林氏は語る。

 日立がクラウドコンピューティングの強化を始めてすでに1年以上が経過し、多くの事例も出ているとのこと。それら事例から得られたノウハウ、経験から、クラウド化を進めるには3つのアプローチがあることが分かった。

 1つ目は、企業の業務のうち定型でコアでないものや新規サービスをパブリッククラウド化するアプローチだ。2つ目が、自社ITインフラを最適化しプライベートクラウドの構築を目指すもの。そして3つ目は、企業にとってのコア部分などで、クラウド化せずに既存システムをそのまま残すという選択肢だ。

 最終的には、これらアプローチのどれかを選択するのではなく、適材適所で3つを組み合わせたハイブリッド型のクラウド環境を目指すことになる、と神林氏は指摘する。

 具体的にどのシステムをパブリッククラウド化し、どの部分をプライベートクラウド化すればいいのか。見極めるには、既存ITシステムを仕分けすることが重要だ。一般的には定型的でコアではない分野はパブリッククラウドに、非定型でデータを社外に出したくなければプライベートクラウドに持って行くことになる。

日立自身が活用するクラウド環境を顧客にも提供

 実際にクラウド化を進めるには、3つのステップがある。

 最初のステップが、ITシステムを仕分けし外部サービスを適用できるものをパブリッククラウド化する。その次のステップが、プライベートクラウドによるITリソースの最適化だ。この際には、VMwareなどのサーバー仮想化技術を活用する。そして3つ目が、既存システムとクラウド環境との統合運用を行うステップだ。

 日立では、実際にこのステップに沿って社内のクラウド化を進めている。「日立がクラウドコンピューティングに真っ先に取り組み、そこで得たノウハウをクラウドサービスとして顧客に提供する」と神林氏。現在、Webベースのクラウドシステムでメール、スケジュール管理、電子会議室、ファイル共有の仕組みを、日立グループ約20万人のユーザーで利用している。日立グループ内でこの仕組みが十分に活用できることを実証し、その上で「情報共有基盤提供サービス」として顧客にも提供しているとのこと。クラウド化でコストや運用管理の手間を削減するだけでなく、情報がクラウド上に一元的に管理され情報漏洩リスクの低減にも寄与する仕組みだと神林氏は指摘する。

  また、パブリッククラウドのサービスは、小さく始めて、段階的に拡大することも容易だ。「新しいビジネスを始める際に、パブリッククラウドなら素早く始められる。新規ビジネスの立ち上げではITに大きな投資がしにくいが、パブリッククラウドなら小さな投資ですぐに利用できる」とのこと。ビジネスが軌道に乗り拡大しても、クラウドサービスならすぐにリソースを追加し柔軟性に対応できるのも大きなメリットであることを実例を交えて紹介した。

プライベートクラウドはIT集約化だけでなくガバナンス強化にも有効

 「多くの企業において、VMwareなどの仮想化技術の利用は始まっているが、プライベートクラウド化にまでは至っていない」と神林氏。仮想化の利用でサーバーの集約から、一歩進めたプライベートクラウド化に至るには、ITシステムを標準モデル化し再利用できるようにし、より集約化を進める必要がある。

 サーバ利用環境も日立社内でプライベートウラウドを構築してすでに利用を開始している。そこで得られるさまざまなノウハウを、顧客のプライベートクラウドにも適用させるのだ。日立のプライベートクラウドは、さまざまな業務アプリケーションを稼動させるサーバ環境を部門ごとに持つのではなく、情報システム部門がシェアードサービスとして仮想サーバ環境を日立グループ内に提供する形をとっている。

 プライベートクラウドの運用上重要となるのが、システムへの入り口となる認証部分だ。シングルサインオンの仕組みと人事データベースと連携させることで、組織変更などと連動して自動で権限の変更が可能となる。こういったことまで実現すると、プライベートクラウド化した環境の運用管理の手間は、大きく削減される。

 また、日立ではユーザーの環境はシンクライアント化している。これもプライベートクラウドが効果を発揮する分野とのこと。ユーザー環境はサーバー側に集約され、集中的に管理が可能だ。これにより、「グループ会社を含めITガバナンスが効くようになった」と、管理負荷の軽減だけでなく、情報漏洩対策やガバナンス確保もプライベートクラウドで実現できると神林氏は説明する。

 日立では、クラウドの運用ノウハウをテンプレート化しており、これを活用することで迅速なプライベートクラウド環境の活用が可能になる。プライベートクラウドの構築に必要な運用管理ソフトウェアのJP1、仮想化機構のVirtage、VMware、ブレードサーバー、ネットワークスイッチ、ストレージなどに導入サービス、運用保守支援サービスを組み合わせパッケージ化して「Harmonious Cloud Packaged Platform」として販売している。「これを利用すれば、最短3週間でプライベートクラウド環境を構築できる」と神林氏は強調した。

次のページ
今後はクラウドどうしが有機的に相互接続する環境が進展

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
クラウド連携技術の現在連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/2836 2011/01/18 21:01

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング