厳しい環境の中で求められる合理的なリソース確保
ここまで「Route Cloud」のサービス内容を中心に説明してきたが、そもそもどのような背景からこのサービスが生まれたのだろうか。
「開発環境の自由度という面で言えば、自社インフラに勝るものはありません。しかし、大抵の場合、社内リソースに余裕が残されているケースは少ないですし、新たにインフラを整備しようと思えば、相応にコストも時間も掛かってしまいます。基幹系システムならまだしも、3ヶ月間限定のWebサービスの場合にとることができる選択肢とは言いがたいでしょう。
最近では、仮想化やプライベートクラウドのように社内インフラを有効利用する手段も登場していますが、費用や時間の面で必ずしも誰もがそれらを利用できる環境に置かれているわけではありません」と大村氏は外部リソースに対するユーザーのニーズが拡大していることを指摘する。
従来であれば、短期間で開発・リリースしてユーザーの支持を問うWebサービス、期間限定でのキャンペーンサイトなど一時的な負荷に対応する手段としてレンタルサーバーが重宝されてきたが、クラウドサービスと比較するとスピード感や利便性で見劣りする。かといって、パブリック・クラウドが必ずしも万能というわけでもない。
データの格納場所がわからないため、何か問題が起こっても日本の法律で係争できるとも限らない。個人情報を扱うようなサービスの場合は、どうしてもセキュリティに対して不安を抱いてしまうという声もよく聞かれる。また、CPUやRAM、HDDともに他のユーザーと共有するマルチテナントが前提のパブリック・クラウドは性能面での懸念がないとは言い切れない。
「一般的なパブリック・クラウドが必ずしもセキュリティ面で劣っているとは思いません。ただし、企業さんによっては全社的なセキュリティ基準が足枷となって、一般的なクラウドサービスを使いたくても使えないという悩みを抱えていることも事実です。クラウドが優れている部分があるのと同様にホスティングだからこそ対応できるニーズもあります。マルチテナントを採用して得られるメリットは大きいものですが、リソースを専有できるからこそ一定のパフォーマンスは保証されることも事実です。重要なのはお客様のニーズに合致するサービスが市場に存在するということ。その点で、今回のサービスはクラウド時代のニーズに対応すべく必要な進化を遂げた新しいホスティングサービスであると考えても良いかもしれません」(大村氏)。
「Route Cloud」はネットワーク上に強固なファイアウォールを設定できるオプションサービスも用意しており、一般的なクラウドサービスと比べてセキュリティ対策を講じる手間が少ない。セキュリティの強度に比べて、利用開始までに要する時間が短いため、社内インフラに障害が起こった際の予備リソースとしても利用できるという。
これからのシステム開発に欠かせない発想とパートナー
サービス単体としてみるとホスティングという印象の強い「Route Cloud」だが、将来的な運用まで視野に入れている点がスカイアーチネットワークスならではの強みといえるだろう。クラウドをシステム基盤として選択する理由のひとつには、スモールスタートへの期待がある。Webサービスなどのインターネット上で利用されるサービスは、最初は小さく生みだし、市場のニーズに敏感に反応しながら改良しつつ育てていきたい。
しかし、一定程度にまでシステムが成長すると、それ相応の運用体制を整える必要が出てくるケースも多い。当然、システムの運用基盤をよりセキュアで融通の利くものに置き換えようとする動きも出てくるだろう。システムの移行段階などでさまざまな障害が発生しサービスの成長を疎外してしまった例は枚挙に暇がない。システム移行は言うは易く、行うは難し。成功したとしても多額のコストがかかるケースが多い。
「緊急避難的、あるいは短期的と割り切っていた場合でも、継続的な運用が必要になることもあるでしょう。そのような場合に備えて、リソースを拡張するための仕組みも整えています。また、より厳格な運用体制が必要になったときには弊社の各種フルマネージドサービスを検討いただくのもひとつの手でしょう。サービスの成長に一喜一憂せず、成長に合わせてさまざまな運用方法をご提案できる点が弊社の強みと考えています」(大村氏)。
顧客のサービスの成長とともに自らも成長する――。パブリック・クラウドに代表される柔軟なITインフラの選択肢のひとつとして、今回発表された「Route Cloud」を捉えることができるだろう。